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今週の小ネタ:現代の若い男性には『男性の助け』が必要だ説、オレンジジュースで肌はきれいになるのか? グルタチオンでニキビは治るのか?問題

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

現代の若い男性には『男性の助け』が必要だ説

「いまの男の子は『男性の助け』が圧倒的に足りていない!」みたいな研究(R)が出てて面白かったです。これはRAND社が出した「男の子と若い男性のメンター不足」に関する報告書でして、ここではまず前提として「今の若い男性の状況ってどうなの?」ってポイントを、以下のようにまとめております。

 

  • 今の若い男性は、学業成績が女子に比べて低め(リテラシーも低い)
  • 高校の中退率は男子の方が高い
  • 精神的にも不安定で、15〜24歳の男性の自殺率は2010年から2023年にかけて26%上昇
  • 現在、男性の自殺率は女性の約4倍

 

ってことでして、あくまでアメリカの調査ではありますが、男性のほうが高校の中退率や自殺率が高いのは日本も同じっすね。

 

しかも、こうした傾向は、大人になってからも続くんだそうで、

 

  • 学校をドロップアウトした後の進路がない
  • 実家暮らしが長引く
  • 恋愛や結婚からも遠ざかってしまう

 

って感じで、社会とのつながりがどんどん希薄になっていく傾向があるんだそうな。切ないですねぇ。

 

じゃあ、なんで若い男性はこういう事態になるのか?ってことですが、この疑問に対して今回の研究が示しているのが「男性メンターの不在」であります。調査対象は12〜21歳の男子1,083人で、以下のような3つのテーマについて誰に相談できるかを聞いたんですな。

 

  1. 学校のこと
  2. 人間関係のこと(友人、恋愛など)
  3. 将来のこと

 

その結果、なにがわかったかと言いますと、

 

  • 学校のこと:38%の男子に男性の助けがない
  • 人間関係:43%が男性の相談相手なし
  • 将来についても、25%が男性に相談できない

 

といった感じだったそうで、どうもかなりの割合で「いまの若い男性は男性の相談相手がいない」みたいなんですよね。もちろん女性のメンターに相談するのもありなんだけど、「同性だからこそ言えること」「同じ立場を経験したからこそ伝わること」って、やっぱりありますからねぇ。同性メンターがいないってのは、それなりにメンタルに影響しそうであります。

 

実際のところ、同性のロールモデルには、特有のメリットがあると言われてるんですよ。たとえば、

 

  • 男の子が自分の感情をどう処理すればいいか
  • 男性としてどう振る舞えばいいか(暴力的ではないやり方で)
  • 恋愛や友情で傷ついたとき、どう立ち直るか

 

みたいなことは、「実体験に基づいたアドバイス」が効きやすいんですよね。それゆえに同性のメンターはめっちゃ必要なんだ、と。

 

ということで、この研究では「ボランティアの男性を増やす努力が必要だよねー」「父親の役割の再評価が必要だよねー」「地域の男性大人(教師、コーチ、上司など)との接点を増やさないとねー」みたいな提案をしておりました。まあ、なかなか難しいでしょうなぁ……。

 

なので、現代の若い男性におかれましては、バイト先の先輩、習い事の先生、SNSでつながった年上の友人みたいな「非公式なメンタリング」を積極的に求めていただくのが良いかもしれません。もちろん、今の時代は性別にこだわりすぎるのもどうかって意見もありましょうが、それでも同性のロールモデルが持つ力は無視できないものがありそうなんで。

 

 

 

オレンジジュースで肌はきれいになるのか?

「ビタミンCをとれば肌がきれいになる!」って話がよくありますな。特によく言われるのが「オレンジジュース」で、美肌や美白をうたうサプリの原料としてもよく使われていたりします。

 

ということで、新たに出た研究(R)では、「オレンジジュースで美肌になれるか?」ってポイントを掘り下げてくれておりました。この研究は、40〜65歳の女性19人を対象に行われたクロスオーバー試験で、参加者に以下の2種類の飲み物を、10週間ずつ飲み続けてもらってます。

 

  1. 100%オレンジジュース(約355ml/日)
  2. 砂糖の量をオレンジジュースに合わせた、オレンジ風味の対照飲料 ※フラボノイド(ヘスペリジンなど)はほぼ含まず

 

その上で、UVBによる赤みや肌の水分量、シワの深さなどをチェックしております。つまり、「ビタミンCやフラボノイドが豊富なオレンジジュースに、美肌効果はあるのか?」という素朴な疑問に答えようとしたわけですね。

 

で、気になる結果がどうだったかと言いますと、

 

  • オレンジジュースを飲んでも、肌に目立った変化は見られない

 

だったそうです。UVBによる赤みの反応(皮膚の炎症)には変化がなく、肌の水分量・シワ・弾力性なども違いが見られなかったそうな。一部では「有意差っぽい変化」も観察されたんだけど、統計的には偶然の可能性もあったとのこと。測定項目が多いと「偶然ヒットする」ことも増えるので、そこは注意が必要ですな。

 

そんなわけで、これを見るとオレンジジュースはムダかぁ……って気分になりますけども、いちおう理論的な期待はゼロじゃないので、そこらへんも押さえておきましょう。オレンジジュースが「肌にいい」と言われてきた理由をざっくり整理しておくと、こんな感じになります。

 

  • ビタミンC:コラーゲンの合成を助けたり、抗酸化作用がある
  • ヘスペリジンなどのフラボノイド:紫外線ストレスを軽減する可能性アリ
  • カロテノイド類:肌のバリア機能を高めるかも?という報告もある

 

このあたりの成分は、たしかに皮膚科学の論文でも「期待される栄養素」としてよく名前が出てきますんで、まったくの無意味とは言えないんじゃないかと。ただし、今回の結果をふまえると、こういった成分はジュースとして飲んだときに効果が弱い可能性があるってことですね。もちろん、たまに飲む分には問題ないと思いますが、「肌にいいから毎日飲もう!」というのは、今回の研究を見てもおすすめしづらいですなぁ。

 

 

 

グルタチオンでニキビは治るのか?問題

「抗酸化サプリで肌がきれいに!」みたいな話を目にしたことがある人は多いでしょう。中でもよく聞くのが「グルタチオン」で、美白、老化予防、肝機能サポート……と、あらゆる効果が言われてたりします。

 

では、この説は正しいのかってことで、軽度から中等度のニキビに対するグルタチオンの効果を調べたRCT(R)を見てみましょう。

 

この研究は、平均24歳の男女40名(女性26名、男性14名)を対象にしたもので、

 

  • 毎日グルタチオン500mgを飲むグループ
  • プラセボ(偽薬)を飲むグループ

 

って感じで全体を2グループに分けて、4週間にわたってニキビへの効果をチェックしております。具体的には、

 

  • 一酸化窒素(NO):ニトロ酸化ストレスの指標。ざっくり言えば、体内で「炎症が起きてるよー」というサイン。
  • インターロイキン1-α(IL-1α):炎症を引き起こすサイトカインの一種で、ニキビとの関連が深いとされている。

 

ってところを調べたところ、「グルタチオンを飲んでも、NOにもIL-1αにも変化なし!」という非常に残念な結果だったんだそうな。

 

ってことで、この結果だけ見ると、「グルタチオン、意味なし!」と言いたくなるわけですが、まあたった4週間でニキビや炎症指標に目立った変化が出るか?と言われると微妙だし、サンプル数もたった40人なので、これだけで判断するのまだ早いかもっすね。どうにも判断がムズいところです。個人的には、グルタチオンってのは経口摂取しても腸で分解されやすいんで、血中や皮膚まで届きにくいんじゃないかなーって気もしてますが。

 

いまのところ、ちゃんとニキビ対策を考えるなら、抗炎症成分(ビタミンB群、オメガ3脂肪酸など)の摂取と腸内環境の改善(プロバイオティクスなど)を心がけて、グルタチオンは補助的に試すぐらいに考えたほうが良さそうですねぇ。

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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