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お菓子によく入っている「乳化剤」はどこまで体に悪いのか?問題

  

 

乳化剤ってあるじゃないですか。スーパーやコンビニで売ってる「〇〇ミルクチョコ」とか「しっとりブラウニー」みたいなお菓子に、ほぼ確実に含まれているアレですな。

 

こいつは、簡単にいうと「水と油を混ぜる役目を持つ添加物」でして、アイス、パン、ドレッシング、チョコレート菓子など、ありとあらゆる加工食品に入っております。これまでの研究データによると、「もしかしたら腸に悪影響があるのでは?」と思われるような結果も出てまして、健康クラスタの一部では、昔から否定的な見方が多いんですよね。

 

とはいえ、乳化剤の害を示した研究ってのは、まだほとんどがマウスや試験管レベルの話でして、「人間でも同じことが起こるのか?」という点については、はっきりした証拠がなかったわけです。そんな状況で、新たに人間を対象にしたランダム化比較試験(RCT)が出ましたんで、軽く共有しておきましょう(R)。

 

この研究は、ベルギーの研究チームが58名の参加者を対象に行ったもので、ざっくりいうと以下のような流れになってます。

 

  1. まず全員に、2週間の「乳化剤フリー食」を実施してもらう(要するに、加工食品をできるだけ避けた食事)。

  2. その後、4週間にわたって毎日3つのチョコブラウニーを食べてもらう。中には以下のどれかの乳化剤が含まれており、どれを食べるかはランダムで決まる。
    1. カルボキシメチルセルロース(CMC)2.75g
    2. ポリソルベート80(P-80)1.35mg
    3. カラギーナン 375mg
    4. 大豆レシチン 3.55g
    5. 米デンプン(対照の自然素材)8.72g
    6. プラセボ(乳化剤なし)

 

こんな感じで、いろんなパターンで乳化剤の影響を調べてまして、食事以外の生活は基本的に自由に設定したんだそうな

 

その結果がどうだったかと言いますと、重要なポイントは以下の3つになるでしょう。

 

 

1.炎症マーカーには変化なし

  • 血中のC反応性タンパク(CRP)や腸内カロプロテクチンといった炎症指標には、どのグループでも有意な変化は見られなかった
  • 腸の透過性(リーキーガット)にも影響はなかった。

 

ということで、マウス実験では炎症が起きていたのに、人間では大丈夫だったって結論であります。おもしろいですねぇ。

 

 

2.短鎖脂肪酸(SCFA)は一部の乳化剤で低下した

  • CMCを摂取したグループでは、アセテートとブチレートが低下
  • P-80を摂取したグループでは、プロピオン酸が低下

 

これが今回の研究で注目すべきポイントでしょう。ご存じの方も多いでしょうが、短鎖脂肪酸(SCFA)ってのは腸内細菌が食物繊維を分解して作る物質のこと。私たちの健康を維持するのにめっちゃ役立つと考えられてまして、

 

  • 腸のバリアを守る
  • 炎症を抑える
  • エネルギー源として機能する

 

といった、腸と全身の健康に欠かせない役割を持ってるんですよ。なので、SCFAが減るってのは、腸内環境が悪化している兆候と考えられるわけですね。また、ここで「SCFAの減少は食物繊維の摂取量とは関係なかった」って結果が出ているのも興味深いところでして、要は「乳化剤が腸内細菌の活動そのものを妨げている可能性がある」ってことになりましょう。

 

となると、「やっぱ乳化剤は危ないんだ!」と思う人もいそうですけども、正直なところ、現時点ではまだ判断が難しい感じであります。なぜならば、

 

  • 炎症や腸のバリア機能には影響がなかったんだから問題がないかもしれない

  • とはいえ、短期間(4週間)の摂取だったのでなんとも言えない
  • というか、SCFAの減少がどの程度の健康リスクにつながるかもよくわからない

 

といった理由があるからです。たしかに、過去の疫学研究とかを見ていると、乳化剤の摂取量が多い人ほど、がん・心疾患・2型糖尿病のリスクが高いって傾向はあるわけですが、これも因果関係がよくわからんですからねぇ(乳化剤が多い食品は栄養が偏っていることが多いので、そのせいで病気のリスクが上がってるのかもしれない)。

 

ということで、いまの時点での私個人の見解としては、

 

  • 健康な人が「たまに加工食品を食べる」レベルなら、そこまで気にしなくていい

  • ただし、炎症性腸疾患、IBS(過敏性腸症候群)、アレルギー体質の人は、念のため避けたほうが無難かも

 

といった感じでしょうか。今後の研究で「SCFAの減少が病気リスクに直結する」と分かれば話は別ですが、現時点では「要注意だけど、すぐにアウトではない」と考えておくのが妥当でしょうな。

 

「それでもやっぱ気になるなぁ……」という方は、以下のポイントを参考にしてみてください。

 

  • 加工食品を週に1〜2回以内に抑える(パン、菓子、アイスなど)

  • 原材料表示に「ポリソルベート」「CMC」「カラギーナン」などがないかチェックする

  • お菓子を食べたくなったら、手作りのおやつやナッツ・ダークチョコにする

  • 腸内細菌のエサになる発酵性食物繊維(イヌリン、レジスタントスターチなど)を積極的に取る

 

そんなわけで、「乳化剤は即アウト!」とはとても言えないものの、「知らず知らずのうちに腸内環境にボディブローを与えているかも?」ぐらいの警戒感でのぞむと良いんじゃないかと思う次第です。とくに腸にトラブルを抱えている方は、多少は気を配っておくと体調がよくなる…………かも?ぐらいの感じっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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