今週の小ネタ:「頭のいい人は冷たい」はどこまで本当か?自慢したいなら「高いモノ」より「高い体験」を見せびらかせ!運動は性欲の暴走を止めるのか?

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
「頭のいい人は冷たい」はどこまで本当か?
世の中には「頭がいい人は冷たい!」ってイメージがあったりするわけです。頭がいい人ってのは、冷酷でドライな合理主義者に見えやすいですからね。
そこで新しいレビュー論文(R)は、この「頭がいい人は共感力が高いのか?」問題について、過去に行われた「知能と共感の関係」についてのデータを良い感じにまとめてくれていて勉強になりました。
この問題を考えるにあたり、まず研究チームは、「心理学では共感を大きく2つに分けるよ!」ってポイントを強調しておられます。簡単に言うと、
- 情動的共感(エモーショナル共感):「相手が痛がると自分もゾワッとする!」とか「泣いてる人を見ると、自分ももらい泣きしちゃう!」みたいに、自分と相手の感情に共鳴が起きるタイプの共感。
- 認知的共感(コグニティブ共感):「この人はいま何を考えているか?」とか「なぜこの感情が生じているか?」みたいに、相手の感情を頭で正確に理解するタイプの共感。いわゆる「心の理論(Theory of Mind)」ってやつ。
という感じでして、この分類をもとに、研究チームは「頭がいい人の共感力」を掘り下げてるんですね。
その結論をざっくりと整理すると、こんな感じになります。
- 知能が高い人は、「もらい泣き」や「身体的な感情の共鳴」といった能力が高いわけではない。このタイプの共感力はだいたい普通レベルと言っていい。
- 一方で、知能が高い人は認知的共感がかなり高く、表情の微妙な変化、声のトーン、言外の意図を読み取る能力が平均よりかなり高い傾向がある。
ということで、要するに知能が高い人ってのは、他人の感情を「感じる」のは普通なんだけど、「理解する」のはめっちゃ得意ってことですな。なんとなくわかりますな。
でもって、この研究で特に面白かったのが感情の制御に関する指摘でして、知能が高い人ってのは、
- 抑制力
- 注意制御
- 感情の切り替え
といった脳の実行機能が強い傾向がありまして、その結果、強い感情が湧いてもすぐにブレーキがかかり、おかげで分析モードに入ることができるんだそうな。研究チームは、これを「共感の知的処理(知性化)」と呼んでおられます。ここらへんは、医療とか危機対応みたいに、感情に巻き込まれずに人を助けなきゃいけない場面では、めっちゃ有利な特性ですな。
とはいえ、このような能力の高さは、外から見ると「共感していない!」「他人事だ!」「冷たい!」みたいな印象につながりまして、そこで周囲の印象との齟齬が生じてしまうわけです。せつないもんですなぁ。
というわけで、もし今あなたが、知性の高さのせいで周囲から「冷たい人間だ!」と思われているのであれば、とりあえず「それはつらいですよね」とか「状況はちゃんと理解してます」と一言添えて誤解を減らす対策をしてみると良いかもですな。あと、いきなり分析に入ると「共感ゼロ」に見えるので、共感 → 許可 → 解決って順番を意識するのも有効になりそうであります。
自慢したいなら「高いモノ」より「高い体験」を見せびらかせ!
金持ちアピールが嫌われるのは世の常。「高級車を納車しました!」「ハイブランドのバッグ買いました!」みたいなSNSの投稿は、とかく疎まれるもんでございます。
が、近ごろ出た研究(R)では、上記のような場面で「嫌われやすい自慢と反感を買わない自慢があるよー」って結論になってて面白かったです。
ここで研究チームは、合計4つの実験を行ってますが、最初の2つだけ紹介しとくと以下のようなデザインになっております。
実験① 同じ商品でも「語り方」で評価が変わる
最初の実験では、参加者に高級なオーディオ商品を見せて、
- 参加者の半分には「この製品は素材が良くて部品が高品質ですよー」とモノ視点で説明
- もう半分には「この製品は没入感がすごくて感動的な音体験ですよー」と体験視点で説明
って感じで全体を分けたその後、「この商品のオーナーはどんな人か?」を評価してもらったんだそうな。すると、体験視点で説明されたグループのほうが、「このオーナーは温かくて親しみやすい!」と評価されたんだそうな。つまり、同じ高級品を持っていても、「所有」より「体験」を強調すると、人として好かれやすくなるってことですな。
実験②:Instagramでも同じ現象が起きる
こちらの実験では、研究チームがInstagramで集めた「高級旅行の投稿」と「高級ブランド品の投稿」を参加者に見せて、「この投稿者はどんな仕事をしてそうか?」を答えてもらったとのこと。すると、その結果は投稿の内容によって大きく異なりまして、
- モノ自慢の人 → 地位は高いけど冷たいイメージがある職業に就いてそうだと思われた(例:弁護士や経営者など)
体験自慢の人→ 地位が高い職業だけでなく、温かいイメージがある職業にも就いてそうだと思われた(例:社会福祉士・保育士など)
って傾向が見られたらしい。つまり、体験の自慢をする人ってのは、「有能そう」に見えるし、同時に「いい人そう」にも見えるってことですな。
ということで、これらの結果を見ると、基本的には「嫌われたくなければ体験を自慢するのが吉!」って感じになりそうなんですよね。このような現象が起きる理由はいろいろありますが、研究チームはこんな推測をしておられます。
- 私たちは、モノの自慢をしている人を見ると、反射的に「他人にすごいと思われたいんだろうなぁ」と思うが、体験の自慢をしている人を見ると、なんとなく「本当に好きでやってるんだろうなぁ」と思うのではないか?
要するに、体験の自慢ってのは、あくまで「本人が純粋に楽しんだ結果の副産物」だと受け取られやすいってことですね。実際のところ、この研究の実験3と4でも、「好きだからやってます!」ってのがわかる自慢ほど好感度が上がるって傾向が出てまして、この仮説は正しそうな気がするわけです。
ってことで、もし今のあなたが「自慢したい!」って欲求が強いのであれば、体験を中心に語るのが良いかもしれません。新しく買ったモノを見せびらかしたい場合でも、「いくらした」とか「どれだけ希少か」ではなくて、「自分がどう楽しんでいるか」や「私は何を感じたか」を前面に出すと、いたずらに嫌われずに済むのではないかと。
運動は性欲の暴走を止めるのか?
「運動でポルノ依存を防げるかもよー」みたいな研究(R)がおもしろかったのでメモ
これは中国の成人600名を対象にした研究で、すべての参加者に対して、
- 普段のイライラレベル
- ポルノをどれぐらい見ているか
- 運動はどれぐらいしているか
を尋ねて、すべてのデータをまとめて分析したんだそうな。これによって「運動とポルノ視聴の関係」をチェックしたわけですね。
そこで、どのようなことが確認されたのかと言いますと、
- 運動の習慣がない人は孤独感が強い傾向があり、そのせいで暇つぶし目的でポルノにのめり込み、これが依存につながってしまう流れがよく見られた。
- 一方、定期的に運動している人は「孤独とポルノ」のリンクが弱く、エロ動画にのめり込むケースは少なかった。
ということで、運動がポルノ依存を防ぐかもしれない可能性が示されたんだそうな。
なんでこういう現象が確認されたのかと言いますと、その理由はシンプルで、運動をよくやっている人は、ジム通いをしたり、スポーツコミュニティに参加したりするので、そのおかげで人との接点が増えて退屈しにくいのが大きいらしい。運動のおかげで「孤独を埋めるためのポルノ」が不要になりやすいってことっすね。
また、この研究では、ポルノを「暇つぶしで見る」のと「性的好奇心で見る」のを区別してまして、当然ながらメンタルへのダメージが大きいのは前者であります。嫌な感情を消すためにポルノを使うと、問題行動(「やめたくてもやめられない!」みたいな)につながりやすいわけですな。
と、こうなると「ポルノ依存にならないために運動だ!」みたいな発想になりそうですけども、実はこの研究では、運動している人ほど「ストレス解消目的のポルノ」が問題化しやすいって結果も出ているのが、興味深いところです。なんでも、普段からよく運動をするほど、ストレス解消としてのポルノにハマりやすいみたいなんですよ。
なんだか不思議な結果ですけども、この現象について研究チームは「報酬系の“感度”問題」を指摘しておられます。どういうことかと言いますと、
- 運動をすると、私たちの脳内にはエンドルフィンやドーパミンが放出され、脳が「快楽と回復」に非常に敏感になる。
- ポルノも同じように強力にドーパミンを分泌させるため、運動で鍛えられた報酬系が、ポルノの快感にも過剰反応してしまう
という現象が起きる可能性があるってことです。快感回路がよく動く人ほど「ストレス解消としての刺激」にハマるスピードも速い、という話ですな。うーん、難しいぜ。
まあこの問題については、ポルノを使う際には「純粋な楽しみとして使っているか?」または「嫌な感情を消すために使っているか?」のどちらなのかを自問した上で、
- 純粋な楽しみで見るならOK!
- 嫌な感情から逃げるために見るのはNG!
って感じで線引きするのが大事なんでしょうな。これはポルノに限らず、酒、甘いもの、SNSなどにも言えることですが。

