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断食 vs 連続カロリー制限──結局どっちが痩せるのか問題に決着をつけようじゃないか!というメタ分析の話

 

ダイエット法にはいろんな流派がありますが、その中でしばしば耳にするのが「プチ断食のほうが痩せる!」「いや、普通のカロリー制限のほうが続く!」みたいな論争であります。「食べる日と食べない日をつくる」のと「ずっと低カロリー状態を続ける」のでは、どちらが体重を落とすのに良いのか?みたいな問題ですな。個人的には「プチ断食の方が楽でいいかなー」ぐらいのゆるい立ち位置なんですが、かなり長年にわたって続いている論争なので気になっている人もおりましょう。

 

といったところで、近ごろ出たメタ分析(R)は、この問題にガッツリと取り組んでいて勉強になりました。これは過去に行われたダイエット研究から10件のランダム化比較試験をピックアップしたもので、計623名分のデータをまとめて「断続的ファスティング」と「連続的カロリー制限」の効果の差をチェックしてくれたんですよ。

 

言葉の定義を説明しておくと、まず「断続的ファスティング」ってのは、「食べる時間と食べない時間を決めるダイエット法」のことです。この研究で扱われた主なパターンは、

 

タイプ内容(例)特徴
時間制限食1日のうち8時間だけ食べる(例:12~20時のみ食事OK)毎日プチ断食をするタイプで続けやすい
隔日断食1日おきに断食日を設定。断食日は摂取カロリーを約25%に制限効果は高いがハードモード
5:2ダイエット週2日は断食日(500〜600kcal)、残り5日は通常食柔軟性が高く、人気が高い

 

みたいな感じでして、このブログでもおなじみのラインナップになってますね。

 

一方で「連続的カロリー制限」は伝統的なダイエット法で、「毎日まんべんなく摂取カロリーを減らす」 というやり方を指してます。研究では、

 

  • 1日の摂取カロリーを 20〜40% 減らすのが一般的
  • 食事内容は極端に縛らない(バランス重視) 

 

って感じのデザインが多く、食事リズムは変えずに量で調整していくスタイルになっております。このうち、果たしてより多く痩せて健康に良いのはどちらか?ってのを調べたわけっすね。

 

分析の結果、研究チームがどんな答えを出したのかと言いますと、

 

  • 短期(〜6ヶ月):断食のほうが「1kgだけ」体重が落ちやすい
  • 長期(6ヶ月〜12ヶ月):体重の差はゼロで、違いはなし

 

って感じだったそうな。あくまで短期では 「約1kgだけ断食が優位」との結果ではありますが、これぐらいの数字だと、あくまで統計学的には差があるけど臨床的にはほぼ意味がないかもなーって印象ですね。半年も頑張って1kgの差だと、ほぼ誤差と言っていいレベルですからねぇ。

 

とはいえ、いちおう断食に特有のメリットもありまして、インスリン値とHOMA-IR(インスリン抵抗性の指標) については、連続カロリー制限よりも改善度がやや大きかったんだそうな。ただし、こちらも短期のみの結果でして、長期になると優位性は消えていくようでして、「絶対に断食の勝ちだ!」と言えるだけの材料はなさそうであります。

 

このような結果が出た理由を、研究者たちは以下のように推測しておられます。

 

1. 採食時間が短いと、単純にカロリーが減る:「時間が短い → 食べにくい → 摂取量が減る」ってのは、どの断食研究でもよく見られるパターン。そのぶん、ちょっとだけ体重が減りやすいのかも(臨床的には無意味だとはいえ)

2. グリコーゲン枯渇→脂肪燃焼に一時的に偏る:断食時間が長いと、体脂肪をエネルギーとして使う時間も一時的に長くなるので、短期間の差が出やすいのかもしれない。

 

ということで、短期的にはおそらく断食のほうが有利になるんだけど、しかしながら断食で痩せていくと、

 

  • 少しずつ身体が省エネ化し、使用エネルギーの量が減る
  • 食欲がジワジワと戻っていく
  • 生活パターンが慣れる

 

といった適応が起こり、長い目で見たら連続カロリー制限と「完全に同じライン」に戻っていくってことなんでしょう。実際のところ、研究チームも、

 

断食は長期では続けにくい傾向があり、生活習慣の改善という点では特別優れているとは言えない。

 

とコメントしておりました。結局、ダイエットにおいて大事なのはカロリー管理なので、そのレベルが同じなら何をやっても同じになっちゃうんでしょうな。

 

 じゃあ結局どっちを選べばいいの?ってところが気になるでしょうが、研究をみる限りは、以下のような教訓を得られそうな気がしております。

 

断食に向いている人

  • 朝食に興味がないか、朝食を抜くほうがパフォーマンスが上がる人
  • 1日の食事管理をシンプルにしたい人
  • 空腹にメリハリがあったほうが良い人
  • 食べる回数が多いほど過食につながるタイプの人

 

連続的カロリー制限に向いている人

  • 空腹の上がり下がりがストレスになる人
  • 食事の“時間”は崩したくない人
  • 少量をこまめに食べた方が調子がいい人
  • 運動量が多く、断食がパフォーマンスに悪影響する人

 

なかなかシンプルな区分けになりましたけども、今回のメタ分析からわかるのはこんな感じっすね。まぁ、結局のところ断食はただのカロリー管理ツールのひとつにすぎないので、本当に痩せたければ「自分が続く方法を選ぶべし」という黄金ルールの正しさは変わらないってことでしょうな。方法論よりも“継続率”こそが、ダイエットを成功させる最強の要因なんで。

 

ちなみに私の場合は、

 

  • 朝は自然と食べない(プチ断食)
  • 夜は普通に食べる
  • 週配分で総摂取カロリーを調整する

 

という“ゆる断食”方式が一番しっくりきてまして、かれこれ10年以上はこのやり方を続けております。皆さまもぜひ、ご自分の生活・性格・仕事リズムに合うものを選んでいただければと。
唯一にして最強の勝ちパターン。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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