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「空腹の時こそ運動したほうが痩せる!」は本当か?

Fastingcardio

 空腹と運動に関するご質問をいただきました。

最近、空腹のときに運動をしたほうが痩せやすいという記事を見かけました。胃の中が空のときのほうが、脂肪が燃えやすいらしいのです。suzukiさんはどう思われますでしょうか?

とのこと。確かに、この説は昔からありまして、その理屈としては、

空腹時に運動をすると、体はさらに血糖を消費することになります。このような状態になると人間の体というのは予備に貯蔵しておいた体脂肪をエネルギーとして消費しようとするのです。
参照:http://matome.naver.jp/odai/2137796003158296301

 という感じ。なかなかもっともらしい話ですが、実際のところはどんなもんでしょうか?



空腹時の運動は脂肪が2倍燃える
そこでまず参考になるのが、テキサス大学の実験(1)。エクササイズの前に60gの糖質をとったところ、脂肪の燃える量が少なくなっちゃったんだそうな。一方で、完全に空腹の状態でエクササイズをした場合は、ほぼ2倍も脂肪が減ったらしい。


2013年の実験(2)でも似たような結果が出てまして、男性の参加者にランニングをしてもらったら、空腹で走ったほうが20%ほど脂肪が燃えたとか。


さらに最近では日本でも研究が進んでまして、筑波大学の実験(3)では、エクササイズ後に脂肪が燃えた量だけでなく、1日のトータル消費カロリーを計測したんですね。


すると、エクササイズから24時間が過ぎたあとの消費カロリーは、空腹でも満腹でもまったく同じだったんですが、

  • 空腹でエクササイズをした場合、消費カロリーの3分の1は脂肪が燃えたのが原因だった
  • 食後にエクササイズをした場合、消費カロリーのうち20%しか脂肪が使われていなかった

といった違いが出たんですね。具体的な脂肪の減少量でいうと、

  • 空腹グループ:720kcal
  • 食後グループ:608kcal

ぐらい。というわけで、空腹状態でエクササイズをしたほうが脂肪が燃えやすいのは、まず間違いなさそうであります。


長期的には脂肪の減り方は変わらない
ただ、おもしろいもんで、長期的な実験ではこの効果が消えちゃうみたいなんですよ。2013年の研究(4)では、16人の肥満女性を2つのグループにわけまして、

  • 空腹状態でHIITを60分やってもらう
  • 食事をした状態でHIITを60分やってもらう

といったエクササイズを6週間にわたって実践してもらったんですね。すると、最終的にはどちらのグループも約2.8kgほど脂肪が減りまして、目立った差は出なかったんだそうな。


2014年の実験(5)でも、結果はほぼ同じ。20人の女性たちに空腹のまま週3回のジョギングを50分ずつしてもらったところ、食後に運動をしたグループにくらべて少しだけ脂肪が減ったものの、統計的には有意な差が出なかったとか。


研究者いわく、

空腹で運動をしても、食後に運動をしても、カロリーを制限した状態では、体組成の変化には同じような影響しかなかった。

とのこと。こういった現象が起きる理由としては、エクササイズ時の体型によって脂肪の燃焼効果が違うのが大きいらしい。

おそらく、空腹状態の運動は、もとから痩せた人にこそ真の効果を発揮するのだろう。たとえば、コンテスト前のボディビルダーや、がんこな脂肪をさらに落としたいような人だ。


まとめ
そんなわけで、空腹時のエクササイズに関しては、

  • 体脂肪が多めの人(男性で20%以上、女性で30%以上ぐらい)は、別に気にしなくてもいい
  • 体脂肪が低めの人(男性で13%以下、女性で20%以上ぐらい)が、さらに体を引き締めたい場合は試すのもアリ

といった感じかと思います。腹筋を割ってみたい人なら、試してみてもいいテクニックかもしれませんねー。


credit: Nick-K (Nikos Koutoulas) via FindCC
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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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