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MEC食やLCHFみたいな高脂肪食は老化が進む可能性があるんでおすすめしないです

High fat
高脂肪食に関するご質問をいただきました。

MEC食やLCHFといった高脂肪食が流行っているようですが、パレオさんはどうお考えでしょうか?以前の記事で、高脂肪食だからといって太らないわけではないとのお話を読ませていただきましたが、そもそも高脂肪食というのは健康にいいものなのでしょうか?

とのこと。MEC食は肉・卵・チーズを大量に食べつつ炭水化物を減らす方法で、自然と脂肪の摂取量が増えるようになっております。野菜中心の生活から抜け出すことで、いろんな病気が治っちゃうというんですな。


これは渡辺信幸医師の「日本人だからこそ『ご飯』を食べるな 」で有名になった方法でして、個人的には本書について「うーん…科学的な根拠がない…」と思ってますが、それはまた別の話。ここでは「高脂肪食は健康にいいの悪いの?」という問題にしぼって考えてみたいと思います。


とりあえず狩猟採集民たちは高脂肪食でも元気
それではまずパレオダイエットの視点から、狩猟採集民と高脂肪食の関係を見てみましょう。狩猟採集民がとる脂肪の量は部族によってバラバラで、たとえばニュージーランドのトケウラ島に住む原住民を調べた研究(1)では、総カロリーの54〜62%がココナッツの飽和脂肪だったそうな。なかなかの高脂肪食ですねー。


にも関わらず、彼らが心疾患や糖尿病にかかるケースはまれで、肥満とも無縁の暮らしを送っております。60%を脂肪にしても現代病のリスクは上がらないわけですね。


もうひとつおもしろいのが、アフリカのマサイ族について調べた1971年の研究(2)。彼らは肉と乳製品をとることが多く、総カロリーの33%が脂肪だったそうな。まずまずの高脂肪食ですね。


ところ が、やはりマサイ族の皆さんも現代病にかかるケースはほぼゼロ。ココナッツのように植物由来の脂肪でなくとも、十分に健康的な暮らしをしていらっしゃいます。


ほかにもケニヤのカビロンドやトゥルカナの原住民なども、肉の脂肪をよく食べるわりに健康体だったそうで(3)、基本的には高脂肪食でもあんま健康には影響しなさそう。

Masai Village
 高脂肪でも現代病とは無縁なマサイ族の皆さん(via Flicker)



先進国の人間は高脂肪食で体が炎上騒ぎに
こういったデータを見ると「高脂肪食は無罪!」と言いたくなりますが、そう簡単にはいかないのが栄養学の難しさであります。というのも、いっぽうでは高脂肪食で体の炎症が起きるってデータがやたら多いんですよ。


言わずもがな、慢性炎症は老化や不調の大きな原因のひとつ。現代人はつねに体内で小さな火事が起きており、まずは炎症をしずめるのが最優先の課題と考えられております。


高脂肪と炎症の関係を並べると、

  • 4週間の高脂肪食で体内の毒素レベルが上がり、肥満や糖尿病のリスクが激増した(2007年,4)
  • 短期間の高脂肪食でも血中の毒素が増え、炎症レベルがあがった(2013年,5)
  • クリームとオレンジジュースを比べたところ、クリームを食べた参加者の炎症レベルがグンと上がった(2010年,6)
  • 41名の男性に高脂肪食を実践してもらったら、体内の炎症物質が激増した(2007年,7)

 みたいな感じ。いずれも高脂肪食で体内に炎症が起きちゃうって結論です。これは美容やアンチエイジングにもよろしくないですなぁ。


こういった現象が起きるのは、脂肪が腸内細菌のバランスを変えちゃうから。高脂肪食を続けると腸内にグラム陰性菌が増えまして、こいつが体内にエンドトキシンと呼ばれる毒素をバラまくんですな。腸から血液に流れんだ毒素は体内にボヤ騒ぎを起こし続け、少しずつ体を老化させていくわけですね。恐ろしや。


なぜ狩猟採集民は高脂肪食でも健康なのか?
とはいえ、先にも見たように狩猟採集民は高脂肪食でも健康だったはず。その理由はなんでしょうか?


この問題に関してはちゃんとした研究がないものの、おそらくは以下の2つが大きいかと思います。

そんなわけで、高脂肪食を試してみたいなら野菜は必須。MEC食は野菜を軽視する傾向があるので個人的には実践してみたいと思えませんが。




まとめ
以上の話をまとめると、

  • 野菜をたくさん食べる限り高脂肪食でもOK
  • ただし日本に住んでると高脂肪食の害を防ぐのは難しい

 といった感じでしょうか。興味があればMEC食を試してもいいでしょうが、個人的には体内の老化が心配なので手を出さないつもりですねぇ。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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