「ポジティブ心理学の効果は非常に低いうえに短期間しか続かない」が現代科学の結論だったり
https://yuchrszk.blogspot.com/2016/01/blog-post_14.html
いま多くのビジネス書や自己啓発のネタ元になっているのが「ポジティブ心理学」。ヒトの幸福度を高めるための学問で、
- 個人的な目標を決めよう!
- 良いことを記録しよう!
- 自分の強みを活かそう!
- 親切にする練習をしよう!
といったテクニックは、いずれもポジティブ心理学の研究が背景になっております。ライフハック系のサイトでもよく見かけるフレーズですよね。
自己啓発本やビジネス書でおなじみのテクニックの実力は?
ただしポジティブ心理学には批判も多くありまして、- ポジティブ思考は成功のチャンスを減らしてしまう
- みんな実際の効果よりも『ポジティブ』に多くを期待しすぎている
- 根がネガティブな人にポジティブシンキングは逆効果
- なぜポジティブシンキングには効果がないのか?
といったデータもいろいろ出てるんですよ。個人的にもポジティブシンキングは苦手なので、「ポジティブ心理学の実力ってどれぐらいなの?」ってのは気になるところであります。
といった状況で非常に参考になったのが、オランダのトリンボス研究所による2013年の論文(1)。過去に行われた39件の研究をまとめた系統的レビューで、ポジティブ心理学の総合評価としては、いまの時点で最も正確な内容になっております。これは気になりますな。
この論文がチェックしたテクニックは、
- 毎日ポジティブな体験を記録する
- 感謝した体験を記録する
- 前向きな目標を設定する
- やりたい夢や未来の自分について書く
- ポジティブな自己イメージを思い描く
- コーチング系全般
などなど。どれも自己啓発本でおなじみの内容ですねぇ。
ポジティブ心理学のテクニックは効果が低くて持続期間も短い
その結果をざっくり並べると、- ポジティブ心理学のテクニックは、幸福度に与える効果が非常に小さい(Cohen’s d 0.34)
- しかも、テクニックを使ってから3カ月〜1年も経つと、さらに効果は減ってしまう
- さらには、気分の落ち込みなどに与える効果はほとんどない
といった感じ。確かに効果はあるものの、ビジネス書や自己啓発の世界で言われるほどのメリットはなさそうですねぇ。うーん、残念。
研究者いわく、
今回のメタ分析は、主観的な幸福度やメンタルヘルスの向上、抑うつの減少のために、ポジティブ心理学のテクニックが役立つ可能性を示した。ただしこの効果は限定的で、短期間しか続かない。またこのメタ分析では、効果量も非常に小さかった。
とのこと。統計的には「そこそこ効果あり」と言えるんだけど、そのメリットはごく短い間しか続かないわけですね。まぁ自己啓発本のテクニックに長期的な効果があったら、こんなに何冊も売れるわけがないですもんね。
また個人的には、ポジティブ心理学の雑さにも驚きました。なにせ上記の研究によれば、39件の論文のなかで質が高かった研究は1件もなし。しかも、そのなかにはセリグマンやエモンズといった有名な学者による実験も多くふくまれているんですよね。
なかでもセリグマンが2006年に行った研究などは、2012年に別の研究者が再チェックをしたら同じ結果が出なかったんだとか。うーん、知らなかった。こういう話って、ポジティブ心理学の本ではまず見かけないですからねぇ。
まとめ
そんなわけで、個人的には思ったよりガッカリする結果になってしまいました(笑)。ポジティブ心理学は日が浅い学問なんで、今後はもうちょい洗練されていくと思いますが、いまのところはあんま期待しないほうが良さそうです。確実なテクニックをお探しの方は、ポジティブ心理学よりも歴史がある認知行動療法をどうぞ。幸福度を高める効果も認められおり、持続時間も1年以上のスパンで確認されてますので。