人間は「運動をサボる」ために生まれた
ヒトの脳には「運動を嫌がる回路」が備わっている
「人間は『休む』ために生まれた!」ってなおもしろい記事が、ハーバードマガジンに出ておりました(1)。
これは、「人体600万年史」で有名なダニエル・リーバーマン博士のインタビュー記事で、そのテーマは「運動が体にいいのは誰でも知ってるのに、なんで運動を続けるのは難しいの?」みたいな感じ。
そもそも、ヒトの体は運動しやすいようにできてまして、
- 短いつま先
- 固いカカトの骨
- 汗による体温調節
などなど、走るのに適した機能が、進化の過程で備わってきたはずなんですな。それなのに、なんでこんなに運動を嫌がる人が多いのか、と。
リーバマン博士は進化生物学の先生なんで、当然、その答えも進化論がベースになっております。結論から言っちゃうと、ヒトの体は運動に適して進化したけど、同時にヒトの脳には「運動を嫌がる回路」が備わったのが原因みたい。
人間は運動をサボるように進化した
ざっくり記事を引用すると、
人類の祖先は、みんな狩猟採集生活を送っていた。狩猟採集の暮らしでは、ときどき食料がギリギリになるが、そんなときは、できるだけ体力を温存するのが生き残るためのカギとなる。
みたいな感じ。確かに、人類は獲物を狩るために体が進化してきたものの、いっぽうでは、できるだけ運動をサボるようにも進化してきたわけですね。
さらに博士いわく、
趣味でランニングをするような狩猟採集民はいない。彼らは、食物を拾い集め、狩りに出かけるために体を動かす。それ以外の活動は無意味だし、当然ながら非適応だ。
とのこと。まぁそりゃそうですよね。
サボり回路に立ち向かう2つの方法
というわけで、この問題に対して、博士は2つの解決策を提示しておられます。
ひとつ目は、エクササイズを仲間と行い、あくまで楽しむのを目的にすること。ランニングクラブに入るもよし、サッカー友だちを見つけるもよし、人間は社会的な生物なので、とにかく仲間を見つければ長続きしやすいんだ、と。
もうひとつは、運動のメリットを頭に叩き込むこと。リーバーマン博士いわく、
あらゆる研究データにより、運動をすると集中力が高まり、記憶力が上がり、注意力がアップすることがわかっている。運動の時間は、確実に長期的な見返りがあるのだ。
とのこと。理屈で運動のメリットを理解して、モチベーションをあげていく作戦であります。わたしも、おもに頭で納得したうえで運動を続けているので、理屈っぽい人にはこっちのほうがいいでしょうな。
あと個人的に付け足すなら、やっぱ「NEATを増やす」のを意識するのが良いんじゃないかと。「運動をするぞ!」と意気込んじゃうと、原始の脳が「休みたい!」と反抗を始めてしまうので、日常的な動きを多くして、無意識のうちに活動量を増やしていくのがいいように思います。
いずれにせよ、ヒトの脳は「運動をサボりたがるシステム」が内蔵されてると理解するだけでも、エクササイズを習慣化する一助にはなるでしょうね。