平日に運動しなくても週末だけハードに運動すれば健康になれちゃう?
運動は週末にまとめてしまえばOK?
運動の頻度に関するご質問をいただきました。
こんなニュースを見つけました。
運動の大切さはたびたび、鈴木さんが言ってますが、週末だけでも効果あるっていう研究が出たのはうれしいですね。
でも具体的な運動量が書いてなく、全て自己申告というあたりがちょっと微妙な気がします。 鈴木さん的には、週末だけの運動をする場合、どれぐらいの運動量が必要と思いますか?
とのこと。 WHOなんかは「できれば毎日30分ずつ、合計で週150分以上の運動をしようね!」と言ってるわけですが、最新の研究では、週末にまとめて運動をする「週末戦士」(論文内の表現)でも同じぐらい健康になれるって結果が出たんだ、と。
週末戦士と運動しない成人グループとの比較では、1週間に1日か2日だけ運動をしている人の死亡リスクが全くしない人よりも約30%低いことが分かった。心血管系では40%、がんでは18%のリスク低減がみられた。
運動量が推奨水準に達していない「不十分」グループと、週に3日以上運動する「規則的」グループでも、同様の効果が認められた。
とのこと。これが正しいなら、平日は運動ができない人でも週末にガッツリ取り返せばいいわけで、確かにありがたい話ですねー。
週末の運動と規則的な運動の健康効果は同じ?
このネタ元はJAMAに載った論文(1)で、イギリスで行われた63,591人分の健康調査を使ったもの。全員の日常的な運動レベルを聞いたうえで、いろんな病気の発症率とくらべたんですね。
その際、すべてのサンプルは以下の4つの分類されております。
- 全くしない:なんの運動もしていない
- 不十分:週に150分以下の運動
- 週末戦士:週に150分以上の運動を週2回以下のペースで行う
- 規則的:週に150分以上の運動を週3回以上のペースで行う
そのうえでどんな結果が出たかと言いますと、
- 「週末戦士」と「全くしない」をくらべた場合
- 全死亡率は30%低くなる
- 心疾患リスクは40%低くなる
- 癌の死亡率は18%低くなる
- 「不十分」と「全くしない」をくらべた場合
- 全死亡率は31%低くなる
- 心疾患リスクは37%低くなる
- 癌の死亡率は14%低くなる
- 「規則的」と「全くしない」をくらべた場合
- 全死亡率は35%低くなる
- 心疾患リスクは41%低くなる
- 癌の死亡率は21%低くなる
みたいな感じ。というわけでパッと見は全グループで似たような結果が出ております。
よく見ると統計的に有意じゃないとこも
が、いっぽうでこれは難点が多い研究でして、
- 「週末戦士」の癌死亡率をみると、実は統計的に有意ではない(CI, 0.63 - 1.06)。なので、癌死亡率が18%下がった話は真に受けないほうがいい。
- 参加者の偏りも大きくて、「全くしない」が62.8%なのに対して、「週末戦士」は全体の3.7%しかいない。
- というか、「不十分」と「規則的」グループに大した差が出てない時点でおかしくないか?
- 「週末戦士」の94%がスポーツマンだったらしいので、スポーツへの意識が高い人は健康レベルが高く出たんじゃないの?
ってあたりは判断が難しいところです。そんなわけで、この研究だけでは「週末にまとめて運動すればOK!」とはとても言えない感じ。とりあえず言いきれるのは、
- どんな運動でも運動しないよりは絶対にいい!
ってことぐらいじゃないでしょうか。すごーく当たり前の話になっちゃいましたが(笑)
そんなわけで、やっぱり現時点では「毎日30ぐらいの軽い運動をしよう!(ウォーキングぐらいでOK)」っていうWHOの指針を守るほうがよさげ。それに慣れてきたら、狩猟採集民レベルのハードな活動量を目指すのがいいんじゃないでしょうか。どうぞよしなに。