「物忘れ」は脳がおとろえた証拠ではない!
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「物忘れ」も脳の役に立っている
「あなたが忘れっぽいのはバカだからじゃない!」って論文(1)がおもしろかったんでメモ。
これはトロントの2つの大学によるレビュー論文で、過去に行われた「脳と記憶」に関する研究の知見をまとめたんですね。その結論をざっくりまとめると、
- 「記憶の機能」とは、価値ある情報だけをキープして、より最適な決定をくだすことである!
みたいな感じ。生き延びるために必要なネタだけを覚えて、ムダな情報は忘れちゃうのが記憶の本来の姿なんだ、と。だから細かいことを忘れちゃうのは、良い決断には欠かせない機能なんだって話です。
脳は忘れるようにできている
研究者いわく、
近年の研究により、脳のなかには記憶の喪失をうながすためのメカニズムが備わってることがわかってきた。この機能により、大事な情報をよりわけているのだ。
ってことで、ヒトの脳には生まれつき「物忘れ機能」が装備されてるわけですな。
この機能が何をやってるかと言いますと、
- 記憶が保存されているシナプスの結合を弱らせる/叩き斬る
- 幹細胞から新しいニューロンを生み出して、古い記憶の回路を上書きしちゃう
みたいな感じ。ヒトの脳は、かなり徹底して情報を消そうとがんばってるみたい。
「物忘れ」の機能は新しい環境への適応
つまり、なぜ物忘れ機能が必要かというと、
- 環境の変化によって古びた情報を消して、新しい状況に適応する手助けをしている
- 細かい情報を消すことによって、過去の情報を「なんにでも使える一般的な情報」に変える
ってことっすね。たとえば、大昔に作った料理を再現したいと思ったときに、
- 「香り付けにクローブを使ったな…」ぐらい細かいとこまで覚えている
- 「クローブじゃないとダメだ!」みたいな気持ちになる
- 柔軟な決断ができなくなる
って流れになるわけですが、
- 「なんか甘い香りのスパイスを使ったな…」ぐらいの記憶しかない
- 「シナモンとかオールスパイスでいいか」って判断になる
- 柔軟な対応が可能に!
みたいなことです。物忘れが効率的な判断を導く可能性もあるわけですねー。
そんなわけで、必ずしも物忘れが悪いってわけじゃないよーって話でした。まぁ「効率化としての物忘れ」と「脳機能の低下による物忘れ」を区別するのが難しいのが悩ましいところなんですが(笑)