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癌にかかる一番の原因は「たんなる不運」って本当?

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「環境 VS.不運」癌の原因はどっちだ?
癌の原因って結局は『不運』なんじゃない?」 って話(1)が興味深かったんでメモ。癌研究の第一人者であるバート・ボーゲルステイン先生の論文であります。


これは国際癌研究機構の記録から69カ国のデータを使った調査で、

  1. 遺伝(いわゆる癌家系)
  2. 環境(タバコとか運動不足とか)
  3. 不運

の3つのうち、「もっとも影響が大きいのはどれ?」ってとこをチェックしたんですね。



細胞分裂が多いほど癌になる
「不運」ってのは、細胞分裂のときに起きるコピーミスが原因で、癌になっちゃうパターン。これは食事や運動じゃ防げないんで、シンプルに確率が左右するわけですな。


で、まずはなにがわかったかと言うと、

  • 細胞分裂の数と癌の発症にはかなり大きな相関がある!(中央値が0.8)

ってとこ。細胞が分裂すればするほど、癌にかかるリスクも上がっていくんだ、と。


66%の癌はただの「不運」が影響 
さらに、ここから不運の癌の確率を見積もったところ、

  • 癌の66%は「純粋な不運」で決まる!
  • 遺伝が原因の癌は5%
  • 環境の影響は29%

みたいな結論だったんですな。いくら健康的な暮らしをしてようが、癌のうち3分の2は「たんなる不運」で決まっちゃうんだ、と。恐ろしいですなぁ。


もっとも、癌の種類によって「不運」の影響レベルは違ってまして、

  • 脳、骨、前立腺がんの95は不運のせい!
  • 肺癌の場合は65%が環境のせい!
  • 直腸癌、基底細胞癌、ウイルス性癌も環境の影響がデカい!

といったところ。直腸癌や肺癌は運動や禁煙で予防できるんだけど、膵臓癌や脳の癌については早期診断しかないってことですな。


どれだけ健康に暮らしても癌にはなる
研究者いわく、

DNAのコピーミスは、全20巻の本をタイプライターで書き写すのに似ている。疲れたときにタイピングをすれば、それだけ打ち間違いも多くなる。これは「環境要因」と同じだ。

体調が良いときにタイピングすれば、それだけ打ち間違いはなくなる。しかし、誰も完璧にタイピングができない以上、必ず打ち間違いは起きる。同じように、どれだけ環境が良くても遺伝の変異は必ず起きる。

あなたにできるのは、有害な物質を避けて健康的なライフスタイルを送り、DNAのタイプミスを最小限にまで減らすことだけだ。

 とのこと。どれだけ頑張っても癌は完全に防げないので、あとはタバコや野菜不足などでムダに発症率を上げないようにしていくしかないわけっすな。


いっぽうで反論もある
もっとも、今回の説には異論もありまして、2016年には同じデータセットを使った分析(2)が行われております。こちらは環境と不運のからみあいに焦点を当てた調査になっていて、

  • 不運による癌リスクの増加は10〜30%ぐらいしかない!

 って結論なんですよね。同じデータを使ってても、数理モデルが違うだけでここまで違いが出るんですなぁ。


そんなわけで、どれだけ「不運」が癌に影響するかはハッキリわからないものの、

  • どれだけ健康的な暮らしをしていても癌にはなる
  • 過去の観察研究をみると、癌の4割はライフスタイルで防げそう

 ってあたりはそこそこ共通しております。できることをやるしかないっすねー。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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