「好きを仕事に!」はどこまで正しいのか問題
仕事に情熱がありすぎてもヤバい
よく「好きを仕事に!」とか「情熱を追え!」とか言うアドバイスを聞くわけです。
これは過去のデータでも裏付けられていて、人間の幸福には「意味の感覚」が必要なのは間違いないところ。難しいことを考えずとも、仕事に意義を感じられなければ人生が虚しくなるのも当然でしょう。
その対策として、当ブログでは「ジョブクラフティング」の技法をオススメしております。好きを仕事にするよりは、まずは今の仕事へのアプローチを変えるのが現実的であろう、と。
そんなわけで、「好きを仕事に!」には一定の正当性があるんですけども、近ごろ出た論文(1)では、「仕事に情熱がありすぎてもヤバいぞ!」って結論になってて参考になります。
情熱を持った人の仕事ぶりを調べたら…
これはオックスフォード大学の研究で、北米の動物保護施設で働く50名の男女にインタビューを行ったもの。北米の動物保護施設ってのは一般に低賃金なわりに労働時間が長く、よほどの情熱がないとやってられない仕事と言われてるんですな。
長時間のヒアリングを重ねた結果、研究チームは、参加者の「働き方」を3つのパターンにわけております。
- アイデンティティ志向:「自分はこの仕事に特別な才能を持っているのだ!好きなのだ!」と信じて、仕事に取り組むタイプ。「好きを仕事に!」系に近いイメージ。
- 貢献志向:「この仕事で社会に貢献するのだ!」と思いながら仕事に取り組むタイプ。「情熱を追え!」系に近いイメージ。
- 実践志向:「仕事は仕事」として割り切り、自分の能力などを現実的に見るタイプ。
現実タイプのほうが、なんだかんだで仕事は続く
で、このなかで、もっとも仕事のスキルが上がったうえに安定して職場に居続けたのは、3つめの「実践志向」だったらしい。ヘタに情熱を持って取り組むよりも、実は現実的なタイプのほうが最終的には上達が速くて途中で止めたりもしないんだ、と。
いっぽうで他の2つは、情熱が強いぶんだけ現実のストレスに弱いのが難点。仕事につきもののストレスに過剰に反応しすぎて、燃え尽き症候群におちいったり、感情がすり切れたりといった状態にハマりがちだったそうな。意識の高い起業家ほど、現実の壁にぶち当たってポッキリ折れやすいみたいなもんですか。
そんなわけで、結局のところ「『好き』も『情熱』もほどほどに」ってことになりましょう。もちろん好きを仕事にしてもいいんだけど、つねに「デタッチドマインドフルネス」の視点が必要だってことなんでしょうな。