ALS(筋萎縮性側索硬化症)にパレオダイエットは効くのか?問題
ALSに関するご質問をいただきました。
知人にALS(筋萎縮性側索硬化症)にかかり、現在3年目の人がいるのですが、Steven Gundry氏の「The Plant Paradox」を読んでいた時に「ALS Stopped in Its Tracks」という文章があり、彼の推奨するKeto Plant Paradox Programによりレクチンを控えたら、ALSの進行を抑える効果が得られた、というくだりがありました。
そこで、レクチン摂取を止めると本当に進行を抑止する効果が得られるのかを詳しく知りたかったのですが、私は英語があまり得意なわけでもなく、さらに科学的知識もなく、自力で調べるには能力が足りなさすぎます。
しかし知人はまだ30代なのに、このままではあと2年くらいでおそらく自力ではほとんど何もできない状態になってしまう可能性があります。ALSとレクチン摂取との関係性をお調べいただくことは可能でしょうか…?
とのこと。これは大変なお話ですねぇ…。
レクチン除去でALSが軽減する可能性はある
ざっくり背景を説明しておくと、ALSは、体を動かすときに使う運動ニューロンが異常をきたす病気です。症状が進むと呼吸筋も衰えていくので、息を吸うのも大変な作業になってしまうんですね。
いまだ原因がわからない難病でして、一説にはグルタミン過剰や環境が悪いとも言われてますが、いまのところは完全な謎。はっきりした対策もない状況だったりします。
さて、ご質問にあった「レクチン除去でALSは軽減するか?」の問題ですけど、正直、ちゃんとした研究が存在しないのでよくわかりません。が、それなりにあり得る仮説ではないかと思います。以下、そのあたりをくわしくご説明しようかと。
ALS=自己免疫疾患説
まず前提として、ここ数年でALSの原因として考えられ始めたのが「自己免疫疾患の一種じゃないの?」というもの。ご存じのとおり、本来は異物を攻撃するはずの免疫が、自分の体まで痛めつけ始めてしまう難しい症状ですね。関節リウマチやクローン病なんかが有名なところ。
「ALS=自己免疫疾患」説ってのは、ALSの患者さんの脳や脊髄のなかに抗体が激増してるってデータ(1)から来ております(HLA-DRとかIgGとか)。要するに、ALSの患者さんは免疫が暴走している可能性が非常に高いんだ、と。
この問題について詳しいのが、ブエノスアイレス大学が2011年に出したレビュー論文(2)で、
- ALSの患者さんは自己抗体が多い
- 自己免疫疾患を示すマーカーも非常に多い
って傾向がハッキリ出てたりします。断言はできないものの、ALSの患者さんのなかでは、免疫が自分の運動ニューロンを攻撃してる可能性が高いわけですね。
さらに、興味深い事例としては、2010年のノースカロライナ大学のレポート(3) があります。この事例では、セリアック病(グルテンが原因で起こる自己免疫疾患)とALSを併発した若者にグルテンフリーダイエットを試してもらったところ、どちらの症状も改善したというんですな。
ALSとリーキーガットの大きな関係
もうひとつ、自己免疫疾患との関連を示すのが、2007年のスタンフォード研究(4)です。これによると、リーキーガットを起こしている患者さんは、ALSの発症率が2倍になる傾向があったそうなんですよ。リーキーガットは腸のバリアに穴が開いて免疫に異常が出ちゃう様態のこと。近年では自己免疫疾患の大きな原因のひとつとも言われてまして、やはり気になってしまうところです。
で、ここでようやく話はレクチンの問題にもどります。レクチンについて詳しくは「豆にふくまれる毒素「レクチン」には、どこまで気をつけるべきか」をご参照いただければと思いますが、要点としては、
- 腸の状態が正常であればレクチンは問題ない
- リーキーガット気味の人にとっては、レクチンは炎症を起こす原因になる
って感じです。腸の状態が悪い人にとっては、レクチンが自己免疫疾患を悪化させる可能性が否定できないわけですね。
ALSにはリーキーガット対策と炎症対策を
もっとも、もしALSが自己免疫疾患だった場合、レクチンに限らず、炎症を起こしそうな食品はすべて絶ったほうが無難かもしれません。具体的な対策としては、
をまずは1週間ほど試してみて、症状に改善が出るかを確認してみてくださいませ。これはパレオダイエットの極端バージョンのようなもので、腸が悪い人が炎症を起こしそうなものを端から取り除いた内容になっております。私もアレルギーがヒドかったころはお世話になりました。
また、自己免疫疾患の方は体内の炎症レベルが高いので、「慢性炎症」の対策は必須。
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あたりを参考になさってください。さらに、炎症の要因としては環境的なものの大きいので、
といったところにもご注意いただければ幸いです。ALSの発症メカニズムが ハッキリしない段階ではありますが、炎症対策だけはやっておいて損はありません。症状の緩和を心よりお祈りいたします