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なぜ会社は「無能」な人間ばかりになってしまうのか?の組織心理学

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世の中に無能が多くなる理由

ピーターの法則」ってのがあるんですよ。

 

 

1960年代に教育学者のローレンス・ピーターが主張した考え方で、ざっくり言えば「人間は能力の限界ギリギリまで出世する」って考え方です。たとえば、腕利きのセールスマンがいた場合は、その能力が使えなくなるぐらい大きなサイズの組織を束ねるところまで昇進して、そこからは先に進めなくなるわけですな。

 

 

ピーターさんは、この現象をもとに「だから世の中には無能が多くなるのだ!」と言っておられます。みんな最終的には自分の能力が通用しないポストまでのぼり詰めるから、結果として誰も本来のパワーを発揮できなくなっちゃうんだ、と。

 

 

なんだか切ない話ですが、興味を持った方はピーターさんの書籍をどうぞ。近ごろ新装版が出てお求めやすくなっております。

 

ピーターの法則のは実在した!

もっとも、この「ピーターの法則」は、あくまで経験則にもとづくもの。あくまで「理論上はこうなるんじゃないかなぁ」って話でして、ちゃんと実験で確認されたわけじゃなかったんですな。そもそもピーターさんも「ネタ」として本を書いてまして、そこまで真剣な話じゃなかったりもします。

 

 

ところが、近ごろいい感じの実験(1)が行われまして、「ピーターの法則は実在した!」って結論になっててビビりました。

 

 

これはMITやイエールの共同研究で、241の会社から53,035のサラリーマンに協力を依頼。2005年から2011年まで全員を追跡調査して、彼らがどのように昇進していったかをチェックしたんだそうな。前例がない研究で、非常によろしいですね。

 

 

そこでどのような傾向が確認されたかと言いますと、

 

  1. 業績がいいセールスマンほど昇進する(これは当たり前ですな)
  2. 昇進したセールスマンは、そこからパフォーマンスが低下していく(もちろんマネージャーとして力を発揮する人もいるけど、かなりの少数派)

 

だったそうな。つまり、ピーターの予測にぴったりな現象が確認されたわけですな。

 

 

最高のセールスマンは最悪のマネージャーになる

研究者いわく、

 

当初は、最高のセールスマンはシンプルに良いマネージャーになるものだと推測していた。セールスに必要なスキルは、マネージメントにも転用が効くからだ。

 

ところが実際は違った。現実的には最高のセールスマンが最悪のマネージャーになるケースが往々にして確認されたからだ。

 

とのこと。さらに、

 

「ピーターの法則」が指摘するとおり、昇進の決定は現在のパフォーマンスにもとづいて決定される。そこには、その人物が将来に発揮するであろうポテンシャルの要素はふくまれていない。

 

生産性が高い社員の大半は、必ずしもマネージャーとして優秀なわけではない。それでも会社は最前線で業績を上げる社員を管理職につけたがる。

 

そもそも昇進の基準が間違ってるから、みんな適正な能力を発揮できないポジションにつきがちなのだ、と。ありがちな問題っすねぇ。

 

 

これはなんとも難しい話でして、研究チームも明確な処方箋は出しておりません。「まぁマネージメントが得意な人をがんばって選別するしかないよねぇ」とか「腕のいいセールスマンにはちゃんと賃金をあげて、『昇進しないと給料が上がらない!』と思わせないのが大事だよねー」とか、それぐらいの提案があるぐらい。

 

 

確かにデカい組織ほど悩まされそうな話なんで、とりあえず個人としては自分の適性を見定めといて、無闇な昇進には乗らないぐらいの対策をするしかないのかねぇ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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