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「最高の体調」のボーナストラック編#1:「ポリフェノールと腸」

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ってことで「最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~」が発売されまして、幸いにもご好評をいただいております。またもAmazonの在庫が瞬殺されてしまいましたが、書店にはまだ残ってますんで、すぐに手に入れたい方は本屋さんでお願いします!

 

さて、ここで本書の裏話をお伝えすると、実はこの本って最初は400ページぐらいあったんですよ。編集さんに「好きに書いてください」と言われたので、本当に好きに書いてたらすごい量になっちゃいまして(笑)

 

 

で、途中で「このまま書いてたら600ページぐらいになってしまう……」と思い直しまして、ガンガンに刈り込んでいったんですな。さすがに600ページだと原価率が合いませんからねぇ。

 

 

まぁ、大幅にカットしたおかげで大分ソリッドな仕上がりになりまして、逆に大事な骨格の部分が浮かびあがったのは良かったと思います。とくに今回は、細かなメソッドよりも「文明病」っていう考え方の説明を重視してますんで、そんへんがクリアになったのは良かったかなー、と。

 

 

ってことで、ここではカットした「最高の体調」のボーナストラック編をいくつか公開していこうかと思います。文章の供養みたいなもんですな。

 

 

まず最初に掲載するのは「ポリフェノールと腸内細菌編」です。これは本書の「第3章 腸」に入れるつもりだった文章なんですが、さすがに「食物繊維」や「発酵食品」よりは優先度が低いので落としました。ではどーぞ。

 

 

ポリフェノールと腸内細菌

腸内細菌が喜ぶのは食物繊維だけではありません。もうひとつ、彼らにとってごちそうなのが、ポリフェノールです。

 

これは植物の色素や味などを構成する成分のひとつで、自然界にはおよそ5000種類が存在すると考えられています。代表的なポリフェノールは、お茶で有名な「カテキン」、大豆の「イソフラボン」、ブルーベリーの「アントシアニン」など。野菜やフルーツはもちろん、コーヒーやココア、ワインなどにも多くふくまれます。

 

 

一般的には、ポリフェノールといえば抗酸化作用が有名でしょう。炎症やDNAの損傷などを起こす活性酸素を取り除く効果が高く、心疾患や高血圧、喘息などに一定の効果があると考えられています。

 

 

そして、さらに近年になって注目され始めたのが、ポリフェノールと腸内環境の関係です。実は腸内細菌は、食物繊維だけでなくポリフェノールを分解する働きも持ち、酪酸のように有益な脂肪酸を生み出すことがわかってきました。

 

 

そもそも、食事から摂ったポリフェノールは10%ぐらいしか小腸から吸収されません。残ったポリフェノールはそのまま大腸に向かい、そこで腸内細菌によって分解されて、腸内フローラのバランスを良い方向に導いていきます。つまり、本来のポリフェノールは、抗酸化よりも腸内環境を整える効果のほうがメインなのです。  

 

 

ポリフェノールと腸内環境の変化を調べたデータも多く、たとえば緑茶にふくまれるカテキン(EGCG)はビフィズス菌などの善玉菌を増やし、そのいっぽうでヒストリチクス菌のような悪玉を削減。さらに、ブルーベリーに豊富なアントシアニンやココアのフラボノールには、乳酸菌の増加とブドウ球菌の減少作用も確認されています。

 

 

要するに、多くのポリフェノールは、良い菌を増やすと同時に悪い菌の繁殖も防いでくれるわけです。

 

 

また、狩猟採集民たちが、先進国の住民より多くのポリフェノールを摂っていることは、言うまでもないでしょう。たとえば、タンザニアで暮らすハッザ族がおやつとして食べるコンゴロビ(野生のベリー)やバオバブ(サバンナ地帯に生える果物)などの植物は、先進国で栽培されるベリー類にくらべて、約20倍ものポリフェノールをふくんでいます。私たちが同じレベルを摂るのは不可能でしょうが、できるだけ日々の食事で近づけていくしかありません。

 

 

ポリフェノールの摂取量を増やすには?

それでは、食品のポリフェノールが少なくなった現代の環境で、可能な範囲で摂取量を増やすにはどうすればいいのでょうか?

 

 

ありがたいことに、食品ごとのポリフェノール食品については、2010年のネイチャーに掲載された論文が徹底的な調査を行っています。

 

 

このデータは、過去に出た数千以上の調査からポリフェノールが豊富な食品を100種に絞り込んだもの。上位にランクした食品をリストにまとめておきましたので、ポリフェノールの摂取量を増やす際の参考にしてください。

 

 

基本的にもっともポリフェノール量が多いのはスパイスやハーブ類ですが、普段の料理で大量にバジルやターメリックを使うのは難しいはず。全体的なカロリーとのバランスでいえば、ベリー類、またはコーヒーか緑茶などでポリフェノールの総量を上げながら、トマトやビーツといった赤や紫系の野菜を増やしていくのが現実的でしょう。

 

 

さて、ここで難しいのが「1日にどれだけのポリフェノールを摂るべきか?」という問題です。ポリフェノールの研究はまだ日が浅く、1日の摂取量には明確なガイドラインが存在しません。いまのところは、観察研究などのデータから大まかな最適量を推測していくしかないでしょう。  

 

 

現時点でもっとも参考になるのは、2014年にバルセロナ大学が行った7447人の男女を4.8年ほど追いかけた調査です。 この論文の結論をひとことで言えば、「1日1,235mgのポリフェノールを摂ったときに早期死亡率がもっとも低下する」というものでした。

 

 

このデータでは、ポリフェノールの摂取量が多い人と少ない人をくらべた場合、早期死亡率には37%もの差が見られています。観察研究なのでエビデンスの質がやや低いのが残念ですが、それでも驚くべき数値だと言え流でしょう。

 

 

「1日1235mgのポリフェノール」を具体的な食品になおすと、ブルーベリーなら100〜150g、コーヒーはおよそ缶コーヒー2本(ボトル缶なら1本)、ココアは大さじ6杯ぐらい、緑茶なら500mlのペットボトルを2本、赤ワインはおよそ360mlに相当します。これぐらの量なら、普段の暮らしでもどうにか達成可能ではないでしょうか。 

 

 

ポリフェールが多い食品リスト

クローブ:シチューやカレーなどによく使うスパイス。数ある食品のなかでもポリフェノール量はもっとも多い(100gあたり15188mg )。

 

ミント:ポリフェノール量は2位(100gあたり11960mg)。抗炎症の作用も高い優良なハーブ。

 

その他のハーブとスパイス全般:クローブやミント以外も、上位にはハーブとスパイスが多い。なかでも八角、オレガノ、セージ、セロリシード、タイム、バジル、ローズマリー、ジンジャーはポリフェノールが豊富。

 

ココアパウダー:ポリフェノール量4位(100gあたり3448mg)。スパイスよりも摂取量を増やしやすい。

 

ベリー類全般:果物のなかでは、ベリー類のポリフェノールがもっとも多い。特にブラックチョークベリー、ブラックエルダーベリー、ブルーベリーの3つは100gあたり836〜1756mgのアントシアニンをふくむ。全体的に皮の色が濃い品種ほどポリフェノールが多い。

 

ナッツ類全般:種子類も全体的にポリフェノールが多い。なかでも、チェスナッツ、ヘーゼルナッツ、ペカン、アーモンドなどに豊富(100gあたり187〜1215mg)。

 

お茶・コーヒー:飲料系ではコーヒーがもっとも優秀で、続いて紅茶、緑茶の順にポリフェノールが多い。ちなみに、コーヒーは緑茶の3倍ほどポリフェノールをふくんでいる(100mlあたり214mg)。

 

オリーブオイル:油ではオリーブオイルがもっともポリフェノールが多い(100gあたり62mg)。ただしカロリーが多いので、ポリフェノールの総量を増やすには向いていない。

 

その他、紫や赤系のフルーツ全般:プラム、チェリー、ブドウ、リンゴなど、赤から紫系の色素にはポリフェノールが豊富にふくまれている。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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