「気がつくと大事なことが後回しになってるなぁ……」の原因と対処法
「アイゼンハワーマトリックス」っていうタスク管理法がありますわな。ひとつのタスクを「緊急度」と「重要度」にわけるもので、
- 緊急度と重要度が高いものをまずやる(借金の返済とか)
- 次に重要度が高いけど緊急度は低いものをやる(運動とか家族サービスとか)
- 最後に緊急度が高いけど重要度が低いものをやる(事務作業とか)
みたいな感じです。「7つの習慣」で広まった手法で、とくに文句のつけようがない考え方かと思います。そりゃ重要度が高いものから手をつけた方がいいっすもんね。
ただ、新しい実験(1)では、「アイゼンハワーマトリックスだけ作っても、実際は難しいよねぇ」って話になってておもしろいんですな。
これはジョンズホプキンス大学の実験で、5つの実験をとおして「人間は『緊急』と『重要』のどちらに反応しやすいのか?」を調べたもの。だいたいどんな実験かと言いますと、参加者に2パターンのタスクを見せて、どちらを選ぶをかをチェックしております。
- 重要じゃないけど緊急:5分の締め切りでタスクをこなしたら20ドルもらえる
- 重要だけど緊急じゃない:50分の締め切りでタスクをこなしたら25ドルもらえる
って感じでして、当然、普通に25ドルをもらったほうがよさそうな気がしますが、現実の結果はさにあらず。実際には「5分で20ドルもらう」を選ぶ人のほうが多かったんだそうな。おもしろい現象ですねー。
研究者いわく、
たいていの人間は、「重要なタスク」よりも「締め切りが短い」だけのタスクを選ぶバイアスがある。
制限されたタイムフレームはヒトの注意力を喚起し、タスクがもたらす結果からは注意をそらす。その結果として多くの人は、自分の健康や家族といった人生の重要なことを犠牲にして、たんに「時間が短い」だけのことにリソースを費やしてしまう。
ってことで、ヒトのなかには、わかっちゃいるけど目の前のことに手を出したくなる心理メカニズムがあるんだ、と。
この現象を、研究者は「単純緊急性効果」と読んでおります。シンプルに「緊急だ!」ってだけで、飛びつきたくなってしまう心理傾向のことですな。
つまり、たんに「アイゼンハワーマトリックス」で重要度と緊急度を分類しただけじゃ、このバイアスには打ち勝てないのではない可能性が大(やらないよりはマシでしょうが)。個人的にも、この「重要だとわかっちゃいるけどやらない」現象は覚えがありまして、原稿を書くべき時に部屋掃除を始めて止まらなくなるような事態はいまでもよくあります。頭ではわかってるんですけどねぇ。
もっとも、この問題に打ち勝つ可能性もここには述べられてまして、
- 自分の「価値観」をハッキリさせればバイアスの影響はかなり減る
ってな結果も出てたりします。つまり、この実験の例でいうならば、「25ドルをもらった場合、自分にとってどのように役立つだろう?」ってところが明確に思い描ければ、緊急性のワナにはまらなくても済むようになるってことですな。
ちなみに、この研究では他にも、
- いつも「忙しいなぁ……」と思ってる人ほど「単純緊急性効果」にハマりがち
- いったん「単純緊急性効果」にハマると、どんどん重要なことを選べなくなっていく
って傾向も確認されてますんでご注意ください。ここらへんは「最高の体調」のテーマにも近い話でして、「重要性と緊急性のバランスを取るには?」ってとこは本書の第6章であつかってたりします。興味がある方はどーぞ。