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ゴール達成にはSMARTよりもFASTのほうが使えるぞ!というMITの主張

 

SIMPLE RULES」で有名なドナルド・サル先生が、「ゴール達成にはSMARTよりもFASTだ!」というナイスなワーキングペーパー(R)を出しておりました。

 

 

「SMART」はご存じ定番のゴール達成法でして、

 

  • S(具体的)=できるだけ具体的に明確な目標に落とし込む
  • M(計測可能)=目標の達成度が数字で把握できる
  • A(達成可能)=夢のような目標ではなく、現実に達成できそうなレベルを選ぶ
  • R(関連性)=自分の仕事の内容に関係があるかどうか
  • T(締め切りが明確)=いつまでの目標を達成するかを決める
     

というガイドラインの頭文字を取ったものです。もとは1980年代にマネージメントの世界で生まれた考え方ですが、それがドラッカーと結び付けられて広まった感じ。

 

 

その正当性についてはある程度の支持(R)はあるものの、SMARTがどこまで役立つかはまだ謎が多かったりします。。

 

 

そんな状況下、ここで近年になって問題視されてきたのが、

 

  • SMARTって変化が激しい状況では対応できなくない?

 

って問題です。ハース兄弟の名著「スイッチ! 」から引用しますと、

 

SMARTの明確さは、「曖昧さ」と「無関係さ」というゴール設定における重大な問題を解決してくれる。(中略)

 

しかし、SMARTによるゴール設定は、変動が少ない状況でこそうまく働くものであり、変化が激しい状況には向いていない。SMARTなゴール設定の根底には、そのゴールが動かないという前提があるからだ。

 

って感じになります。SMARTはかなり前に生まれた発想なんで、大量生産大量消費の時代には適してたものの、変化が激しい現代においてはなかなか難しいんじゃないの?って考え方であります。

 

 

つまり、資格勉強みたいに状況の変化が小さなゴールであればSMARTはいまだ有効ではあるものの、現代のビジネス界ではよりよい方法があるんじゃないか?ということですね。これは一理あるんじゃないでしょうか。

 

 

そこで研究チームはGoogleやインテル、アンハイザー・ブッシュ・インベブといった企業から、目標達成に関する50万件以上のデータを集めまして、「ゴール達成率が高い組織はどんな設定法を使っているのか?」ってポイントを抽出してくれたんですよ。これは参考になるぜ……。

 

 

さて、その結果としてなにがわかったかと言いますと、

 

  • 成功する人が使っているのはSMARTよりもFASTだ!

 

って話です。SMARTと同じくFASTも複数の基準の頭文字を取ってまして、具体的には以下のようになります。

 

  • Frequent discussions(ひんぱんな議論)
  • Ambitious in scope(野心的)
  • Specific metrics(明確な基準)
  • Transparent(透明性)

 

明確な基準を求める点はSMARTと同じですが、その他はかなり違うラインナップになってますねー。

 

 

では、FASTがどんな定義なのかと言いますと、こんな風になります。

 

 

Frequent discussions(ひんぱんな議論)

進捗状況のレビュー、リソースの割り当て、タスクの優先順位、フィードバックの提供などについて、何度も組織内で議論が行われること。この条件を満たすと、以下のメリットがある。
 

  • 重要な決定に対するガイドラインが得られる
  • チームのメンバーが、もっとも重要なものごとにフォーカスできる
  • 自分のパフォーマンスへのフィードバックを明確なゴールにつなげられる
  • プロジェクトの進捗状況をチェックして、進路を正すことができる

 

 

Ambitious in scope(野心的)

難しいゴールだが、決して達成が不可能ではないレベルに難易度を設定すること。この条件を満たすと、以下のメリットがある。
 

  • チームと個人のパフォーマンスが上がる
  • 手抜きのリスクを下げられる
  • ゴール達成のためにより革新性の高い手法を探すようになる

   

 

Specific metrics(明確な基準)

ゴールまでの道のりが、詳細な基準と小目標によって明確にされていること。この条件を満たすと、以下のメリットがある。
 

  • 経営者が望んでいることを、組織の人間に明確に伝えることができる
  • 何がうまくいかないのかを素早く突き止め、手順を修正することができる
  • 個人やチームのパフォーマンスをブーストできる

 

 

 

 

Transparent(透明性)

ゴールの存在や現在のパフォーマンスを公にして、チームのメンバーの目に見える状態にすること。この条件を満たすと、以下のメリットがある。
 

 

  • 同調圧力によりゴール達成のやる気が高まる
  • チームメンバーの活動が、どのように組織のために役立っているのかを見せられる
  • 組織のためにならない戦略や、組織の価値観に外れた戦略がすぐにわかる

 

 

というわけで、議論や透明性が大事なのは当然といえば当然ながら、言われてみればゴール達成のガイドラインとして強調されるケースはあまり無かったのではないかと。チームで目標を達成したいときは心がけとくといいかもですねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。