不安になりやすい人は、自分から望んで不安になりにいってるのだ!という実験の話
「不安症な人はリラックスが苦手なんじゃない!わざと心配しにいってるのだ!」ってなおもしろい主張(R)が出てたんでメモしときます。
これはペンシルベニア州立大学の研究で、「リラクゼーション誘発性不安」の問題について調べたものです。リラクゼーション誘発性不安ってのは、その名のとおり、呼吸法や瞑想などで心身をときほぐそうとすればするほど心配が募っちゃう現象のことです。
昔から不安症に悩む人の一部に「リラクゼーション誘発性不安」が存在することが知られていて、なんでそんな現象が起きるのかはよくわかってなかったんですよ。不思議なもんですねぇ。
ってことで新しい研究では96人の学生を集めていて、その内訳は、
- 不安症に悩む人が32人
- 大うつ病に悩む人が34人
- メンタルは普通な人が30人
みたいになってます。この参加者たちにどんな実験をしたのかと言いますと、
- みんなにリラクゼーションのテクニックを教える
- 「怖い動画」か「悲しい動画」のどちらかを見せる
- 動画のせいで感情が高ぶったら、さっき学んだリラクゼーションテクニックを使う
- 最後に全員にアンケートを取って、不安のレベルをチェックする
といった感じです。でもってすべてのデータを分析したら、以下のような結果が出たんですよ。
- 不安症に悩む人ほど、感情の変化に敏感な傾向があった
- 感情の変化に敏感な人は、リラクゼーションのエクササイズでより不安になってしまう傾向があった
ちょっとわかりにくいカモですが、要するに「不安になりやすい人たちは、不安になるのを恐るがあまり、自分から望んで不安になっているのだ!」ってことです。これでもまだわかりにくいですね(笑)
ってことで、この実験でわかった心の流れをまとめると、
- 不安になりやすい人は、平穏な心の状態からネガティな気持ちになることをとても恐れる
- そうだ!それなら、最初から不安になっておけば、嫌な気持ちへのシフトは起こらないじゃないか!
- よし!ずっと不安でいよう!
みたいになってます。つまり不安になりやすい人ってのは、不安な気持ちを防衛システムとして使う側面もあるんだ、と。
このメカニズムを、研究チームは「コントラスト回避モデル」と呼んでおります。
「コントラスト回避モデル」とは、不安症に悩む人たちが、ネガティブな出来事に対して感情がマイナスの方向に切り替わる事態を過度に恐れることを意味している。そのため、不安症の人は、感情の変化をふせぐためにとして心配を使う。
というわけで、不安な人は自分から望んでやってる部分もあるわけっすね。
一般的には、心配したことの大部分は現実には起きないことが多い。それゆえに、私たちの脳は「私が心配したから嫌なことが起きなかっのだ。それなら今後も心配し続けよう」と考えてしまうのだ。
しかし、「リラクゼーション誘発性不安」に弱い人たちには、他人よりもリラクゼーションの技術を必要としているケースが多い。
「心配事の8割5分は起こらない」とは以前にも書いたことですが、そのせいで逆に心配が深まっちゃうってのは皮肉なもんですなぁ。
が、言われてみれば、私も「不安で逆にやすらぐ」みたいな感覚は理解できるとこもありまして、こりゃあ気をつけにゃあかんなとか思ったりしました。心当たりのある方は、取り急ぎリラクゼーションテクニックの練習を積んだ方が良さそうであります。