運動のパフォーマンスを上げるための「正しい体の冷やし方」がわかったよ!というメタ分析の話
「運動をする人は体を冷やすといいよ!」みたいなアドバイスを聞くことは多いはず。運動の前後にアイスバスみたいに冷たい水に浸かったり、古代ローマ式の入浴法みたいに冷たいシャワーを浴びたりとか、そういったテクニックのことですね。
この手法については一定の支持がありまして、「正しい休憩法とは?」って問題について調べた2018年のメタ分析でも「体を冷やすとリカバリーが早まるよ!」みたいな結論が得られてたりします。効果があるのはほぼ間違いないので、エクササイズをよくする方は試してみれば良いかと思うわけです(個人的にはアクティブリカバリーを使ってますが)。
といったところで新たなデータ(R)は、結論から言うと「体を冷やすと運動のパフォーマンスが上がるよ!」って事実を示した内容になってます。なんでも運動の前にガッツリと体を冷やしておくことで、その後のエクササイズがはかどるらしいんですな。
これは先行研究から質が高めな45件を抜き出して精査したメタ分析で、そのうち36件が有酸素運動、残り9件が無酸素運動に対して身体冷却の効果をチェックした内容になっております。全体的には実験の質はそこそこですが、それなりに信頼性が高くて良いのではないかと思うわけです。
というわけで、いきなりメインの結論をまとめるとこんな感じになります。
有酸素運動について
- 運動の前に体を冷やすと、効果量0.60のレベルでパフォーマンスがアップする
- 運動時の気温が平常でもノーマルでも、身体冷却には効果がある
- 体を冷やすときは、冷たいタオルとか氷嚢を使って頭と首を冷やすのが一番効果がある
- だいたい皮膚の表面温度が冷却前から2度下がるぐらいが望ましい
無有酸素運動について
- 運動の前に体を冷やすとパフォーマンスが上がるが、有酸素運動に比べると効果量はかなり低い(0.27)
- 運動時の気温が高い場合にのみ、身体冷却の効果が出る(33.4 ± 3.4度ぐらい)
- 無酸素運動のパフォーマンスを上げるには、全身を冷却する必要がある
- だいたい皮膚の表面温度が冷却前から2.5度下がるぐらいが望ましい
というわけで、有酸素運動をするなら体を冷やしておいて損はなし! 無酸素運動も効果はあるけどかなり状況が限定的?ぐらいの結論に落ち着いてますね。特に有酸素運動については「首と頭を冷やせばOK!」って結論なので、ランニングをするような方はとりあえずやっといたほうがいいのでは。
ちなみに、この研究でいう「無酸素運動」はほぼ猛ダッシュに限定されてまして、身体冷却が筋トレに効くかどうかはよくわからないところです。ただ、筋トレについては同時期に小規模なメタ分析(R)が出ていて、「セット間の休憩中に体を冷やすとパフォーマンスが上がるかも」との結論が4件のデータで確認されてたりします。
ここらへんはまだまだ調査が必要な段階ではありますが、いまんとこの話をまとめてみると、
- ランニングをするときは、運動前にアイスバッグを首や頭に押し当てる
- 筋トレに使うときは、セット間の休憩時にアイスバッグを筋肉に押し当てる(当たり前ですが、腕のトレーニングをしてるときは腕にアイスバッグを押しあてる)
みたいなやり方になりそうであります。筋トレについてはまだ未知数の部分が多いものの、worth a shotな感じはしないでもないっすね。