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パレオダイエットには「腸内細菌」を乱す欠点があるぞ!という観察研究のお話

 

このブログは「パレオダイエット」の話をメインに取り扱ってまして、定期的に良い感じのデータを紹介してたりするわけです。

 

 

が、やはりなにごとにも賛否はあるもんでして、当然パレオダイエットも例外ではございません。近ごろ「パレオダイエットの欠点はこれだ!」みたいなデータ(R)が出まして、これがなかなか重要なポイントをあつかってくれておりました。

 

 

これはオーストラリアで行われた実験で、論文のタイトルをざっくり訳しますと、

 

  • 長期のパレオダイエットがレジスタントスターチの摂取量を下げて腸内細菌の構成を変え、体内のTMAOレベルを上げるかも?

 

ぐらいの意味になります。なにやらよくわからん単語がありますんで簡単にご説明しときますと、

 

 

  • TMAO:カルニチンやコリン などから作られ、近年になって心疾患リスクの新たな要因だと言われることが増えてきた物質。事実、体内のTMAO量が多いと総死亡率が高まるといったデータも少なくない。ささらにくわしくは「恐怖の物質「TMAO」に立ち向かうにはどうすればいいいのか」をどうぞ。

 

みたいになってます。つまり、この論文のタイトルがどういうことを言ってるかと申しますと、

 

  • パレオダイエットをやると、腸内細菌が喜ぶ食物繊維が減るせいで良いバクテリアが減り、おかげで心臓病なんかで死ぬリスクが上がっちゃうんじゃないの?

 

みたいなことです。こりゃあなかなか恐ろしい話ですな……。

 

 

といった前提をふまえたうえで、今回の実験は以下のようなデザインになってます。

 

  1. 「パレオダイエットを1年続けている人」44人を集める
  2. 「普通の食事を続けている人」47人を集める
  3. 2つのグループのTMAOや腸内環境を調べる

 

ってことで、パレオと普通食がどのような差をもたらすのかを調べた観察研究になってるわけですね。もちろん、過去6ヶ月のなかで抗生物質を使った人などは、サンプルから除外されております。

 

 

で、どんな結果が出たのかと言いますと、

 

  • パレオダイエットをやってた人はTMAOレベルが2倍ちょっとも高い!(9.53 µM vs. 3.93 µM)

 

  • ついでに、パレオダイエットグループは、TMAOの増加と関連する腸内細菌も増えていた

 

  • TMAOのレベルは、赤肉(牛肉とか豚肉とか)の摂取量と正の相関を示し、穀類の摂取量と負の相関を示していた

 

 

だったそうです。あちゃーって感じの結果ですねぇ。

 

 

というわけで、なんとも恐ろしげな感じになってますが、このような違いが出た理由をざっと考えてみますと、

 

  • パレオグループはとにかくレジスタントスターチの摂取量が少ない

 

のひとことにつきそうな気がしております。というのも、両グループの食物繊維の摂取データなんかを見てますと、

 

  • トータルの食物繊維の一日摂取量は、両方のグループで特に変わらない(パレオ27.4g vs 普通食29.7g)
  • が、レジスタントスターチの摂取量には大きな違いがある(パレオ2.6〜6.1g vs 普通食4.5〜14.2gg)

 

ったあたりが大きく違うんですよね(もちろんパレオグループはタンパク質の摂取量も多いんだけど)。

 

 

これは、パレオグループが「野菜」を主な食物繊維の摂取源にしてたからでして、ちゃんと「穀類」を食べる普通食グループにくらべると、どうしてもレジスタントスターチの量は低下しちゃうわけです。つまり、この研究からなにがくみとれるのかと言いますと、

 

  • パレオダイエットをやるときはちゃんと炭水化物を食べてね!

 

ってことです。炭水化物が少ない食事が腸内フローラを乱す可能性はかねてから指摘されてましたけど、やっぱ葉菜ばっかじゃ善玉菌を十分に養えるようなレジスタントスターチはとれないんでしょう。

 

 

まぁここらへんは私もよく思ってたことで、特に海外のパレオダイエットってのは、

 

  • 肉をたくさん食べようぜ!
  • 炭水化物を減らそうぜ!

 

って方向性ばっか強調しすぎるきらいがありまして、一番の急所であるはずの「加工食品の削減」がおざなりになってたりするんですよ。

 

 

が、以前にも触れたとおり、狩猟採集民たちは普通に炭水化物を食べまくってるんで、海外のパレオダイエットが低糖質をやたら強調するのには違和感を持ってたところではあります。というわけで、以上の話をまとめると、

 

  • やはり低糖質系のパレオダイエットには問題がある(特に腸内フローラへのダメージが見逃せない)

 

ぐらいの感じになります。当ブログを長くお読みの方なら「あ、いつもどおりの結論ね」ってところでしょうけど、いまも「パレオダイエットが糖質を取らないのはおかしい!」と言われることはよくあるんで、ぜひ押さえておいていただきたいポイントかと存じます。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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