「女性と男性はどっちがユーモアのセンスがあるの?」を調べたメタ分析のお話
「女性と男性はどっちがユーモアのセンスがあるの?」というポイントを調べた珍しいメタ分析(R)が出ておりました。
これはアベリストウィス大学などの研究で、過去のユーモア研究から28件を抽出して、5057人分のデータをまとめたもの。アメリカ、イギリス、ドイツ、ハンガリーといった国から参加者を集めていて、だいたいの実験はこんな感じになってます。
- なんの文字も書かれてないイラストを見せる
- そのイラストに、なんかおもしろいキャプションをつける
- 第三者が、キャプションのおもしろさを判定
というわけで、基本的には「写真で一言」みたいな作業を指示して、参加者のおもしろ度を測るようなデザインが多かったみたい。60%のデータは出版前のものを使ってて、出版バイアスのリスクも少なめ。
で、それでどのような傾向が確認されたのかと言いますと、
- 平均的に男性のほうが女性よりもおもしろいと採点されがちだった(効果量0.32)
だそうです。効果量0.32ってのは「小から中程度の効果」ぐらいの意味でして、全体的に見れば男性のほうがまぁまぁおもしろいことを考えられるのでは?ぐらいのイメージですね。ちなみに、ここでは「参加者の年齢」「研究者の性別」「採点者の性別」といった要素は調整されてまして、それでもなお「男性のほうがおもしろい」という傾向が確認されたとのこと。
では、なんでこういった違いが出たのか?ってとこですが、チームの推測はこんな感じです。
- 昔から「女性はおもしろいことなんて言わなくていいんだ!」って社会的な圧力があったから?
- 女性のほうが出産コストが大きいから?
2つ目の理由がわかりにくそうですが、すごーくざっくり言ってしまうと、
- 女性のほうが子孫を残すのが大変(男は子種をバラまけばいいだけだから)
- その分、進化の過程では、女性のほうがパートナーを厳しく選別するようになった
- 男性は厳しく選別される分、なんらかのアピールが必要になった
みたいな感じです。「『笑い』はなぜ存在するのか?」って問題はまだよくわかってないものの、一般的には「他人に自己の知性をアピールする機能があるのでは?」と考えられてまして、おもしろい人がモテやすいのもそれが原因だと言われております。「恋人選びの心」のような進化心理学書ではおなじみの議論っすね。
まぁ、といってもこのデータについては悩ましいところもありまして、
- ラボで確認された「写真で一言」の能力が、果たして現実のおもしろさにも反映されるの?
- いかにおもしろいネタを考えられても、現実のおもしろさには表現力も関わるからなぁ……
といった問題はどうしても残っちゃうかなーという。現実の会話でのおもしろさを研究するのって難しそうですけど、今回のデータがかなり人工的な環境で採取されたものだってのは押さえておきたい感じです。どうぞよしなに。