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メンタルの改善に役立ちそうなデータいろいろ#1:マインドフルネス、ホモシステイン、森林浴……etc


  

過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたので無視するのももったいないケース」をまとめて取り上げてみるシリーズです。今回は「メンタルの改善に役立ちそうなデータ」を、すごーくざっくりとまとめて4つほどお送りしまーす。 

 

 

8週間のマインドフルネスで睡眠の質が上がる!というメタ分析の話

マインドフルネスは研究の質がイマイチでねぇ……」とつねづね言ってるんですけど、近ごろはちょこちょこ良いデータも出てきた感じがしております。

 

 

例えば、近ごろ発表されたメタ分析(R)なんかは、過去の研究から7つのRCTをピックアップして、「マインドフルネス系のトレーニングは睡眠・不安に効くか?」を精査してくれてました。

 

 

これは不眠症の成人497人を対象にしてまして、そのうち258人に8週間の「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」を受けてもらってます。MBSRはマインドフルネス瞑想にヨガやボディスキャンなどを組み合わせたもので、さらにくわしいところを知りたい方は「マインドフルネス・ストレス低減法ワークブック」や「からだの痛みを和らげるマインドフルネス」などの書籍をどーぞ。

 

 

でもって、分析の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • MBSRを受けたグループは睡眠の質が上がり、不安と抑うつのスコアが改善した

 

だったそうです。ちょい結果にバラつきが出てるのがきになるとこながら、全体には「睡眠や不安に悩んでる人は試す価値あり!」と言えるんじゃないかと。

 

 

もっとも、このデータはメタ分析としてはかなり小規模なので、まだマインドフルネス研究は予断を許さない状況なのはご留意ください(今後の展開で覆る可能性は割とある)。その点をふまえつつ、安価で安全性が高いリラックス法として使うぶんには十分ありですのでー。

 

 

 

ビタミンB群はホモシステイン対策&メンタルの改善に役立つか?

以前にホモシステインって物質を取り上げたことがありました。これはタンパク質の残りカスみたいなもんで、どうも脳の不調につながる可能性があるっぽいんですよね。いくつかのデータでは、ホモシステインの上昇と統合失調に関係があるとも言われてまして、メンタルを健やかに保つためにも対策が必要なのかなーとか思っております。

 

 

そこで新たな研究(R)は、「ビタミンB群はメンタルの改善に役立つか?」ってのを調べてくれてました。ホモシステインの調整には葉酸とビタミンB群が欠かせないので、もしかしたらメンタルの不調にも効くのでは?ってのがテーマっすね。

 

 

実験は初発性精神病に悩む120人を2グループに分けまして、

 

  1. ビタミンB群のサプリを飲む(B6 50mg、葉酸5mg、B12 0.4mg)
  2. プラセボサプリを飲む

 

って感じで12週間の様子をチェックしたところ、

 

  • ビタミンB群は体内のホモシステインレベルを下げた
  • しかし、メンタル面では注意力と警戒心のスコアのみが改善し、症状や認知機能などに変化はなかった

 

みたいな感じになってます。従来のデータだとホモシステインの低下でメンタルの改善が起きるケースが多いんですが、今回の実験は目立った改善が出てないっすね。ここらへんの食い違いは謎ですけど、この研究では「参加者の症状が軽かったせいなのかなー」って感じです。

 

 

いずれにせよ、ビタミンB群がホモシステイン対策に欠かせない点は確実なようなんで、脳だけでなくアンチエイジングのためにも体内レベルが下がらないようにしておきたいところっすな。

 

 

 

森林浴は高血圧に効きそうだ!というレビューの話

森林浴のすばらしさは「最高の体調」でも強調したとおりですけど、その後もよいデータがいくつか出ております。新しく行われたレビュー(R)では、森林浴と高血圧に関する先行研究から14のデータをチェックしてくれてて、これまた勉強になりました。

 

 

レビューのポイントだけを抜き出しておくと、

 

  • 森林浴は、血圧、心拍数、生理的・心理的ストレスを減少させ、心血管系の健康と代謝の血液マーカーを改善する
  • 森林にいるだけでもいいけど、特に森林ウォーキングと森林セラピープログラムの効果が高い
  • 森林浴が都市部の公園や庭園でも同じ効果を発揮できるかは、まだわからない

 

みたいになります。全体的には現実的に病気の予防に役立つレベルの効果が得られていて、よろしいのではないでしょうか。もうちょい涼しくなったらキャンプ行こう……。

 

 

 

ベジタリアン&ヴィーガンのメンタル大丈夫?問題

昔から「野菜だけの食事ってメンタルに悪いのでは?」って話があるんですよ。野菜だけだとどうしてもビタミンB12、クレアチン、フィッシュオイルの摂取量が減るんで、そのぶんだけ脳機能が下がるのではないか?と推測されてたんですね。

 

 

といった状況で、新しいメタ分析(R)は、13の研究から17,809人のデータをまとめて「ベジタリアンのメンタルはどうなの?」ってのを調べてくれてます。そのうち10件が観察研究で、3件は介入試験っすね。

 

 

で、結果はこんな感じになりました。

 

  • 全体的に見ればベジタリアン/ヴィーガンと、肉と魚を食べる人の間にうつ病リスクの差は見られなかった
  • ただし、全体のデータの質はとても低い
  • より質の高い研究のみを対象とした小規模な分析では、ベジタリアン/ヴィーガンの方がうつ病の発症率は高かかった(幸福度やストレスレベルには差がない)。ただし、不安のスコアは低かった

 

というわけで、どうにも判断が困る感じになってます。研究チームも「この分析から決定的な結論を出すのは難しいなー」と言ってまして、やはりベジタリアン調査の難しさが出てますなぁ。

 

 

というのも、ベジタリアンな人は健康意識が高いケースが多いんで、もともと栄養の不備を自分で補える人が少なくないんですよね。一方で肉好きは喫煙者が多い傾向も知られてまして、観察研究だとそのへんを補足しづらいんですよ。

 

 

まぁ一応今回のデータを見る限りでは、そこまでベジタリアンのメンタル問題は心配しなくていいのかも?ぐらいに考えておくといいかもしれませんねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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