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スマホやタブレットを使う時間が伸びると子供のメンタルは病んじゃうのか?のメタ分析

 
 

「スマホばっか見てるとメンタルによくないのでは?」という議論はずっとありまして、「SNSの利用は不幸につながる」という話があったかと思えば、「SNSで社会的なつながりが増える」みたいな報告もあるわけです。

 

 

特に言われるのが子供への問題で、過度にスマホを使うと言語やその他の発達スキルの遅れにつながるかもって報告がある一方で、実際には友人との絆が深まってよいことを示唆する文献もあったります。

 

 

 といったところで、カルガリー大学などの研究チームが、「スマホは子供のメンタルに悪いのか?」を徹底的に掘り下げたデータ(R)が出ていて参考になりました。

 

 

これは、87の先行研究(12歳以下の子供が159,425人)をまとめたメタ分析でして、

 

  • スクリーンタイム(スマホやタブレットを見てる時間)が増えると、子どもの攻撃性や不注意などは増加するのか?

 

  • 不安や抑鬱などの症状はどうなるのか?

 

という2種類のポイントを調べてくれております。まー、全体的にはデータの質は低めなんですが、それなりに参考になる結論は出てるんじゃないかと。

 

 

で、まずは大きな結果から申し上げますと、

 

  • スクリーンタイムが長い子供ほど、攻撃性や不注意などの外在化された問題行動が多くなるリスクが11%高い

 

  • スクリーンタイムが長い子供ほど、不安や抑鬱などの内面化の問題のリスクも7%高い

 

  • 女の子よりも男の子のほうがスクリーンタイムの悪影響を受けやすく、男の子のほうがスクリーンの使用量が多く、また行動上の問題を抱えやすい傾向があった

 

とのことで、なんだかおそろしい傾向が確認されているわけです。こりゃあ怖くなっちゃいますな。

 

 

が、よく見てみると、ここにはまた別の重要なポイントがありまして、

 

  • 全体として、心理的な問題の変動のうち、さまざまな形態のスクリーンタイムと相関しているのは約1%ぐらいしかない

 

  • 研究ごとにデータはバラバラで(I² = 87.80)、これはそれぞれの研究の方法の違いによるものだと考えられる

 

ってあたりはおもしろいところです。スマホやタブレットの使用は、確かに悪影響が有意に確認はされるものの、見つかった相関は本当に小さなものなので、この数値が事実ならほぼ安心って感じじゃないでしょうか。

 

 

まぁこの研究については、より高品質なデータを見ないとなんにも言えないし、この結論だけを見て「子供のメンタルヘルスと幸福の99%以上は、スクリーンタイムの長さとは無関係だ」とは言えないのでご注意ください。また、当然ながら、この種の研究では「スクリーンタイムが感情や行動の問題を起こすのか?それとも、メンタルに問題があるからスクリーンタイムが増えるのか?」ってとこも判断できませんしね。 

 

 

とはいえ、今回の結果は、過去にオックスフォードから出た「スマホの利用時間は人生の満足度とは関係ない」って報告ともマッチしてまして、いまんとこは「スクリーンタイムはあまりメンタルヘルスに影響しない」って考え方が優勢になってきた印象でしょうか。そう考えると、スマホ脳」のような本ってのはやっぱ煽りすぎな印象が否めないとこっすね。

 

 

ちなみに、個人的な見解としましては、

 

  • おそらく「スクリーンタイム」そのものは問題ではないと思われる
  • あとは、スマホを使いすぎて運動や睡眠量が減って、そのせいでメンタルが低下する可能性もあるでしょうなぁ

 

ぐらいのスタンスでおります。スマホの使用量を減らすのもいいんだけど、それより使い方を吟味するほうが実りは大きいんじゃないかと思うわけです。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。