今週半ばの小ネタ:眠れないときにやってはいけない3つのこと、人付き合いの強制は不幸のもと、ノスタルジックな写真で体の痛みが減る説
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
眠れないときにやってはいけない3つのこと
眠れない時にこれをやってはいけない!みたいなデータ(R)がアスペン大学などから出ておりました。
この研究は、2017年から2019年にかけて不眠症または睡眠時無呼吸症候群の治療で睡眠クリニックを訪れた137人の患者を対象にしたもの。みんなに睡眠ポリグラフ検査を受けてもらって睡眠中の問題を調べつつ、日中にどんなことをしたら眠りの質が下がるのかを調べたんだそうな。
で、分析の結果「これをやると睡眠に逆効果じゃない?」って結論になったのが、以下の3つの対処法です。
- カフェイン
- 仮眠
- 睡眠導入剤
ってことで、眠れなかった翌日にカフェインを過剰に摂取したり、昼寝をガッツリと取ったり、睡眠導入剤を使ってどうにかしようとすると、不眠症の改善にはつながらないどころか時間とともに症状が悪化する可能性があるかも?ってことらしい。
もうちょい詳しく書いておくと、
- 不眠症患者の約3分の2(66%)は、日中に眠気を感じた場合にカフェインを使用したと報告したが、カフェインの使い過ぎは夜間の睡眠の問題を増やし、悪循環を生みやすかった。
- 全体の約25%の人が毎日昼寝をしていると回答したが、そのせいで夜間の寝つきを悪くする原因になっていた。日中定期的に昼寝をする人は日中の眠気が少ないと報告されるも、昼寝をしない人に比べて入眠潜時(目が覚めてから眠るまでの時間)が長くなっていた。
- ルネスタやソナタなどの処方睡眠薬を服用している人は、そうでない人に比べてレム睡眠に入る速度が約30分ほど遅い。ちなみに、1日に2杯以上のコーヒーを飲む人も、レム睡眠に入るのに時間がかかっていた。
- ただし、処方される睡眠薬には短期的な利点があり、睡眠薬はレム睡眠の開始を遅らせるが、代わりに睡眠開始潜時を短くし、睡眠時間を長くする(つまり、より早く眠りにつき、より長く眠れるようになる)。この研究では、OTCの睡眠導入剤や処方薬を服用しなかった患者さんは、睡眠時間が短く、夜間覚醒(夜中に目が覚めること)がより頻繁に起こっていた。
みたいになります。まぁ睡眠薬については専門家の指示をちゃんと守ればそこまでビビる必要はないものの、やはり長期的には減らしていきたいところですねぇ。昼寝とカフェインについても、うまく付き合わないと夜間の睡眠に影響が出ちゃうってのもよく言われることですしね。
では、このような対策の代わりに、不眠対策には何をすべきかと言いますと、
「睡眠を優先する」ことが、慢性的な不眠と睡眠の質の低下のサイクルを断ち切る最も効果的な方法だ。睡眠衛生について学び、同じ時間にベッドに入る、ベッドに入ったらテレビや電気を消すなど、日常生活を少し変えるだけで、睡眠導入剤を使わなくてもよく眠れるようになる。昼寝をせずに、すべての日で同じ睡眠スケジュールを守るのだ。
と研究チームは結論づけておられました。いずれも認知行動療法的な対策の基本ですけど、やっぱこれですよねー。
人付き合いを強制されると、なぜ不幸になるのか?
極度の人見知りである私は、知らない人のなかに放り込まれると約30分ほどで心身が疲れ切るんですが、新しいデータ(R)では「だいたいの人は他人といる時間を強制されるとメチャ不幸になるもんだよー」って結論になってておもしろかったです。
これがどんな研究だったかと言いますと、
- 一般の参加者を集めて、「一人でいることを選ぶ」「他人といることを選ぶ」「他人といる時間を強制される(選択できない)」「一人でいる時間を強制される(選択できない)」という4種類の設定のいずれかに割り振る
- そのまま10日間を過ごしてもらい、主観的な幸福感(ESWB)などにどんな影響があるかを調べる
みたいになってます。孤独が体に良くないってのはよく聞く話ですけど、自分で選択できるかどうかによって、幸福への影響度が大きく変わってくるかも?と研究チームは考えたわけですね。
すると、やはり「強制されるかどうか」ってのは参加者の幸福度に大きな影響がありまして、
- もっとも幸福感にポジティブな影響を与えたのは、自分で選んで他者と一緒にいた場合だった
- しかし、その反対に、もっとも幸福感にネガティブな影響を与えたのは、強制されて他人と一緒にいたときだった
- 一人で過ごす場合でも、自分で選択した場合は幸福度が高まる傾向があった
って感じだったそうな。他人と過ごすにせよ、一人で過ごすにせよ、重要なのは自分で決定できるかどうかだってことですね。私のような人見知りに限らず、自己決定権がない人は、他人との付き合いで不幸になるわけですな。
研究チームいわく、
私たちの瞬間的な経験という点では、自分の意志で他者と一緒にいることを感じることが、私たちの幸福、意味、コントロールに対する最大の後押しとなる。
参加者は、異なる一人の状態をまったく同じように体験している。孤独は予測可能な経験であり、一人の時間を有効に活用すれば、幸福と幸福感を高める「個人的成長の源泉」になり得る。
とのこと。孤独もうまく使えば成長に繋がるよーってことで、これはないこう人間ほど肝に銘じておきたいところっすね。
ノスタルジックな写真で体の痛みが減る説
ノスタルジックな写真には鎮痛作用があるぞ!ってデータ(R)がおもしろかったのでメモ。ざっくりどんな実験だったかと言いますと、
- 参加者に各自の子供時代に流行ったポップカルチャーの画像を見てもらう
- それと同時に、参加者の前腕に温熱パッドを貼り、どんどん熱くしていく
- 画像を見ているあいだの脳をfMRIでモニタリングする
みたいになってます。例えば、1980年代に育った人には、その時代に流行したテレビ番組やコマーシャル、アニメなどの写真を見せつつ、腕を熱して痛みを与えたわけですね。ちなみに、対照条件の参加者には、ノスタルジーを感じさせないごく最近のポップカルチャーの画像を見せたんだそうな。
で、何がわかったかと言いますと、
- ノスタルジーを感じさせる写真を見たグループは、単に温かい気持ちになっただけでなく、脳の痛みを和らげるメカニズムが活性化していた
- 実際、ノスタルジックな画像を見たグループは、そうでないグループよりも、痛み(前腕の熱感)の主観的評価が下がった
だったそうです。なんでもノスタルジックな写真を見ると、人間は視床が活性化し、これが鎮痛作用につながるんだそうな。
研究チームいわく、
ノスタルジックな写真を見ることは、市販の鎮痛剤や処方箋による鎮痛剤を服用せずに、軽い痛みを緩和する薬物フリーな方法であるかもしれない。ノスタルジーによる鎮痛効果は、比較的弱い侵害刺激に対してのみ有意なので注意は必要だが。
とのこと。もちろん、古い写真を見たても激痛が軽減されることはおそらくないでしょうが、低強度の不快感や軽度の痛みならやわらぐっぽいですね。私のように、ストレスがたまると腰のあたりに軽い違和感が出るぐらいの人には役立つかもしれんですな。