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パレオダイエットはどこまで健康に良いのか?【2022年10月版】#1「ダイエットと心臓&血管編」


 

ご存じのとおり、このブログの名前は「パレオダイエット」に由来してるわけです。パレオダイエットの詳しい考え方は「パレオダイエットまとめ」をご覧いただければと思いますが、手早く実践したい方は、以下のエントリが最も参考になるでしょう。

 

 

ただ、このブログを長くお読みの方ならおわかりのとおり、ここ数年は、パレオダイエットについてほぼ触れてなかったんですよね。これは、私がパレオダイエットに飽きたわけではなく、たんに「パレオダイエットまとめ」に重要なことを書いちゃったんで、それ以上のことをお伝えする必要を感じなかったからです。

 

 

しかし、このブログで取り上げなかったあいだも、パレオダイエットの有効性に関する研究は発表されてまして、ここらへんでまとめ直すのも良いかと思った次第です。パレオダイエットの減量効果とか、パレオダイエットのアンチエイジング効果とかは、ここ数年でどこまでわかってきたのかってポイントですね。

 

 

ということで今回は、最近のパレオダイエット研究から「体重減少」「心臓と血管の健康」の有効性について見ていきましょう。

 

 

 

 

パレオダイエットは体重の減少にどこまで有効なのか?

まずは、パレオダイエットは体重を落とすのにどこまで効くか?ってポイントからです。

 

 

この点については、2019年に出た複数のメタ分析(R,R)が参考になりまして、これによるとパレオダイエットは、対照食よりも体重を1.4~3.9kg の範囲で減らし、BMIを1.1~1.7kg/㎡減らし、ウエスト周囲を2.5~3.1cm減少させるとのこと。

 

 

ただ、これらのデータはあくまでも短期間のものでして、長期になるとまた話は変わってきたりします。現時点で、最も期間が長いパレオダイエットの研究(R)では、70人の女性を2年にわたって追跡したうえで、以下のような結論を出しております。

 

  • パレオダイエットは、他の健康的なダイエット(北欧式ダイエット)と比べて、6ヶ月の時点でより大きく体重が減っていた
  • ただし、このようなメリットは1年以上には及ばず、さらに長期だと、減量の効果はほぼ同じぐらいになると思われる

 

ということで、パレオダイエットは、スタートダッシュには良さそうだけど、1年が過ぎれば他の減量法と変わらないよーって感じです。まぁこれは地中海式ダイエットだろうが低糖質ダイエットだろうが同じことでして、ほとんどのダイエット法って1年がすぎれば効果は変わらないんですよね。その点はパレオダイエットも同じだと思われるので、体重を落としたい方は、お好きな方法を選んでいただければ幸いです。

 

 

ちなみに、この試験は、脂肪量の変化を測るためにDXA(脂肪測定のゴールドスタンダード)を用いてまして、パレオダイエットを実践した参加者と、他の健康的な食事を行った参加者の間では脂肪の減少に差がないことも示されております(R)。まぁパレオダイエットは別に魔法のダイエット法じゃないので、普通にダイエットを続ける限り他の方法と大差がないわけですね。ちなみに、パレオダイエットで初期の体重が減りやすい理由は謎ですが、個人的にはグリコーゲンが減少したことによるんだろうなーぐらいの感じ。

 

 

というと、「パレオダイエットの意義とは?」ってところが気になる方もいるでしょうが、個人的には「あんまカロリー制限を気にせず痩せられる」ってところだろうと思ってます。近年の研究では、「意識してカロリーを制限しなくていいですよ」と参加者に伝えても、パレオダイエットを行った人は、総摂取カロリーが減っていく傾向が、いくつか確認されているんですよ(R,R,R)。

 

 

パレオダイエットで減るカロリー量は実験によってバラバラですけど、たいていは通常の食事よりも1日108〜451キロカロリーぐらい食べる量が自然と減るとのこと。カロリー制限を意識せずにこれぐらい食事量が減るなら、非常にありがたいことじゃないでしょうか。

 

 

また、この効果については、パレオダイエットよってタンパク質と食物繊維が増えるのが原因だと考えられます。タンパク質と食物繊維は、どちらも満腹感を高める栄養素なので、満腹ホルモンであるGLP-1やペプチドYYが増えやすいんですよ(R)。とはいえ、もちろん他の食事法でも、この2点を押さえれば同じ効果は得られますので、別にパレオダイエットにこだわる必要はないってところは申し添えておきます。

 

 

 

 

パレオダイエットは心臓と血管の健康にどこまで良いのか?

全体的に見ると、パレオダイエットは、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪といった心臓代謝系の健康マーカーにプラスの影響を与えるようです。

 


具体的には、2019年(R)と2015年(R)にメタ分析が行われていて、他の健康的な食事と比較した場合、パレオダイエットは一貫して中性脂肪とLDLコレステロールが減り、HDLコレステロールが改善するという事実が指摘されております( ただし、HDLコレステロールに対する正の効果はあまり明確ではないですが)。

 

 

このような効果は、おそらくパレオダイエットではオメガ3脂肪酸をたくさん摂取するので、不飽和脂肪と飽和脂肪の比率が、良い感じに落ち着くのだろうと思われます。一方、いかにパレオ食を心がけようと、炭水化物や不飽和脂肪の代わりに飽和脂肪を食べた場合、LDLコレステロールは上昇する可能性があるのでご注意を(要するに、肉ばかり食べるような食事はよくないっていう当たり前の話ですな)。

 

 

他方で、パレオダイエットと血圧の改善については結論が一貫しておらず、統計的に有意な改善を報告したデータもあれば、そうでないデータもあるという感じです。このような血圧に対する効果のばらつきが起きる理由は謎ですけど、たぶん研究ごとにパレオダイエットの構成が違うからだろうなーと思っております。研究の中には、大量の飽和脂肪を摂取させているケースもあるので、ここらへんが数字に影響してるのだろうなぁと。

 

 

 

まとめ

ということで、今回はパレオダイエットの体重減少と心臓や血管まわりの健康について見てみました。まだデータが一致しないとこがありつつも、全体的には良い成績が出ているんじゃないでしょうか。このシリーズはまだ続きまして、次回はパレオダイエットと糖尿病や副作用の可能性について見ていこうと思います。ではまたー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。