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今週半ばの小ネタ:インスタントコーヒーも体にいいの? 犬で脳トレ? 人と仲良くなるには体臭が大事?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

コーヒーが体にいいのは確実として、インスタントでも同じ効果を得られるの?

コーヒーが体にいいって話は山ほど書いてますが、新しい調査(R)は、「コーヒーの種類によって効果は変わるのか?」を調べてくれていて有用でありました。豆から挽いたコーヒー、インスタントコーヒー、カフェインレスコーヒーなど、世の中には色んなタイプのコーヒーがありますが、果たしてこれらの種類によって健康効果は変わるのか?ってことですな。

 

 

この試験は、心血管の病気疾患がない449,563人の男女が対象で、みんなの年齢の中央値は58歳だったとのこと。参加者には「毎日何杯のコーヒーを飲むか?」や「普段飲んでいるコーヒーの種類は?」などを尋ねたうえで、みんなの健康状態をおよそ12年ほど追いかけたんだそうな。

 

 

その結果をざっくりまとめると、こんな感じになります。

 

  • 豆から挽いたコーヒー、インスタント、カフェインレスという3種類のコーヒーは、どれも心臓の病気や脳卒中のリスクを下げる働きがあった

 

  • 同じく、すべてのタイプのコーヒーは、あらゆる原因による死亡の減少につながっていた。

 

  • 不整脈のリスクを減らしたのは、カフェイン入りの挽いたコーヒーとインスタントコーヒーだけだった。カフェインレスコーヒーでは不整脈リスクは低下しなかった。

 

ということで、どんなコーヒーでもちゃんと効果はありそうだけど、豆から挽いたカフェイン入りのコーヒーが一番良さそうですね。かつては「カフェインレスコーヒーって無意味では?」と言われた時代もありましたが、とりあえずカフェインレスでも問題はなさそうですな。

 

 

さらに細かい結論も出しておきますと、以下のようになります。

 

  • 1日に2~3杯のコーヒーを飲む人は、コーヒーを飲まない人と比べて早期死亡の減少が最も大きくなった。

 

  • 豆から挽いたコーヒーを飲むと死亡リスクが27%低下し、カフェインレスの場合は14%、インスタントコーヒーの場合は11%ずつ低下した。

 

  • 心臓病や脳卒中のリスク低下については、1日に2〜3杯の挽き豆コーヒーを飲むと20%低下し、同量のカフェインレスコーヒーでは6%、インスタントコーヒーでは9%低下した。

 

豆から挽いたコーヒーを飲むのが一番とはいえ、カフェインレスでもそれなりの効果はありそうなんで、カフェインが苦手な方にはうれしい話じゃないでしょうか。

 

 

もちろん、この研究には限界がありまして、あくまでコーヒーの消費量は自己申告だし、コーヒーを飲むと健康になるのか、それとももともと健康な人がコーヒーを摂取するのかもわかんないですしね。個人的には、コーヒーが体に良い確率はかなり高いと思ってますが、まだ完全決着ではないのでご注意ください。

 

 

ちなみに、コーヒーの淹れ方も健康効果に影響を与えますんで、フレンチプレスやトルコ式コーヒーメーカーを使っている方は、こちらも念頭に置いてくださいませ。

 

 

 

犬を飼うのは脳トレになるのでは?説

犬との暮らしは超体にいい!」って話は昔からありますが、新しい研究(R)も「犬は脳に良い!」って結論になってておもしろかったです。犬を飼うことのストレス解消効果は何度か調査されてますが、脳の変化メカニズムはまだ研究されてなかったので、ありがたい話ですね。

 

 

この研究は19人の健康な男女を対象にしたもので、参加者が犬と一緒にいるときといないときの脳の活動を数回にわたって測定したんだそうな。いままでの研究ではPETスキャンが使われてましたが、今回の調査はfNIRSで前頭前野の活動を調べてまして、ここもうれしいポイントですね(こっちのほうが正確な結果を得やすい)。

 

 

実際の調査では、「犬を見る」→「犬の横に座る」→「犬を撫でる」の順番で犬と接触してもらい、その際に脳がどう活動するかをチェック。さらに、犬のぬいぐるみでも似たようなことをしてもらい、実際の犬と遊んだときの脳の活動と比べたらしい。

 

 

では、結果を見てみましょうー。

 

  • 犬との接触レベルが上がるほど、参加者の脳の活動が大幅に上昇し、犬が去った後も酸素化ヘモグロビンが上昇したままだった(つまり、脳の活動が活発なままだった)

 

  • ぬいぐるみにも似たような効果が確認されたが、それはあくまで最初のうちだけで、参加者がセッションを重ねるにつれて脳活動は大きく低下した。

 

どうやら、犬と遊ぶことでヒトの前頭前野はめちゃくちゃ活動しはじめるみたいですね。まだよくわからんですが、「犬と遊ぶのは脳トレになるかも?」って可能性が出てきたと言えましょう。

 

 

ちなみに、この実験では4〜6歳のメス犬を3頭使用し、それぞれジャックラッセル、ゴールデンドゥードル、ゴールデンレトリバーだったそうです。猫でも同じ結果が出るんだろうか……。

 

 

 

人は自分と同じ匂いのする友人を選ぶ

人は自分と同じ匂いのする友人を選ぶ!」みたいなデータ(R)が出ておりました。マウスとかチンパンジーが体臭で仲間を決めているって話は有名ですが、ヒトも同じようなことをしてるかもしれないんだ、と。

 

 

実験の概要を簡単にまとめておくと、

 

  1. 初対面で「気が合う」と答えた同性の友人20組を集め、みんなに綿のTシャツを3日間着続けてもらう

  2. Tシャツ香りの分析機にかけて、参加者の体臭を化学的な違いを測定

  3. ついでに、Tシャツを第三者のチームにも渡して、それぞれ体臭を採点してもらう

 

みたいになります。初対面の相手に「この人はなんだか気が合うなー」と思った経験は誰でも一度はあるでしょうが、これは体臭が原因のひとつではないのか?と研究チームは考えたわけですね。

 

 

その結果はやっぱりチームの予想どおりで、初対面から意気投合した二人組は、ランダムに選んだ他の二人組と比較して、体臭がより似ていたんだそうな。 やっぱり、我々が誰と仲良くなれるかどうかには、嗅覚が一役買っているかもしれないみたいですね。

 

 

さらに、この実験では他の知見も得られてまして、

 

  • 体臭が似ているかどうかによって、全く知らない人同士が仲良くなれるかどうかを71%の確率で予測することにも成功した

 

  • 見知らぬペアを半メートルに離して配置し、お互いの動きを真似してみるゲームを行った実験でも、「この人は印象が良い」と答えた相手と体臭の化学的性質がより似ていた

 

だったそうです。とにかく、人間は無意識のうちに相手の体臭を嗅ぎ分け、これを友人づくりの基準にしている可能性があるわけですね。

 

 

まぁ、この実験データを使って友人を作るのは不可能ですが、試しに仲が良い人の体臭を嗅いでみるとおもしろいかもしれませんな。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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