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「情熱を持てる仕事を探せ!」で失敗する人の原因トップ4


こないだ「『人生では情熱を追い求めよ!』ってアドバイスは、なぜ間違いなんですか?」という話を書きました。簡単にまとめると、

 

  • 「情熱」がある人ほど、仕事や人生の幸福度が高い傾向はある
  • ただし、「情熱」を機能させるには諸条件があり、これをクリアしなければならず、下手をすれば逆効果になることも多い

 

って感じです。情熱は両刃の剣なので、使用上の注意が必要だよーって話ですな。

 

で、よく考えてみたら、上のエントリで紹介したヤヒモビッチ博士は、「情熱の作動条件」を他にもいくつかピックアップしてくださっているので、こちらも合わせて見ておいたほうが良いでしょう。情熱をうまく働かせるための注意点には、さらに以下のようなものがあります(R)。

 

 

情熱の注意点1:情熱の機能は時と場合で変わる

  • 情熱で仕事のパフォーマンスを上げるためには、なにより周囲の人からの賛同を得られなければならない。ヤヒモビッチ博士の研究(R)によれば、仕事でどんなに情熱的なプレゼンをしたとしても、聴き手が最初からこちらの主張に同意していなければ、逆に反感を買うだけに終わることが多い。

 

  • また、情熱的な働きぶりが受け入れられるかどうかは、職種によっても異なる。たとえば、コンサルの世界では、会計の世界よりも情熱的な態度がウケやすい。

 

  • 同じように、情熱を発揮する場面によっても、情熱の機能は変化する。通常、斬新なアイデアを売り込む際には情熱が有効だが、そこから具体的な契約を結ぶ段階では情熱が逆効果になるケースは少なくない。

 

 

情熱の注意点2:情熱を出すと利用されがち

  • 成均館大学校などの研究(R)によれば、情熱を発揮している人ほど、他人から「こいつは仕事が楽しそうだから無理な仕事を押し付けても大丈夫だな!」と思われやすい。

 

  • そのせいで、強い情熱を持っている人ほど残業が増えやすく、結果として燃え尽き状態にハマってしまうケースが少なくない。そのため、情熱がある人ほど、自分の作業の限界値を意識しておく必要がある。

 

 

情熱の注意点3:情熱を出すと無駄に自信が増えがち

  • コロンビア大学ビジネススクールなどの研究(R)によれば、情熱的な人は、自信過剰にハマりやすい。この罠にハマった人は、仕事に欠かせない情報を無視し、他人からの忠告にも耳を貸さない傾向がある。そのせいで、情熱が裏目に出て、仕事のパフォーマンスが低下してしまう。

 

  • そのため、仕事に情熱を持っている人は、「私っていま暴走してない?」「私っていま自分を過大評価してない?」という視点を持ち、つねにセルフモニタリングしておく必要がある。でないと、ただの情熱バカになって終わりかねない。

 

 

情熱の注意点4:そもそも仕事で情熱を追わなくてもよくない?

  • そもそも「仕事で情熱を追求しよう!」という考え方は、歴史的にめっちゃ近代のアメリカで生まれた発想でしかない。ヨーロッパ圏では、いまでも「趣味に情熱を使うほうがよくない?」って考え方のほうがメジャーで、仕事のあとにスポーツやガーデニングなどへ情熱を傾けている人が多い。

 

  • 事実、近年では「どこに情熱を向けるかは人間の幸福にとって重要でない」とのデータが多い。それどころか、仕事以外の方向へ情熱を向けたほうが、仕事とプライベートがどちらも充実するという報告も少なくない(R)。

 

  • また、仕事にばかり情熱を向けることは、長期的な幸福感にダメージを与える可能性もある。自己の評価を受けるリソースが仕事だけになってしまうため、仕事でなんらかのトラブルに遭遇した際に、ダメージから回復ができなくなってしまうからである。

 

  • さらに、仕事にばかり情熱を向けると、趣味や課外活動によるリラックス効果や創造性アップの効果を得られなくなってしまう。このようなリフレッシュ期間を持たないと、たいていの人は逆に仕事への情熱が下がるし、実際に仕事を辞めてしまう人も少なくない。

 

  • そのため、仕事だけに情熱を向けるのは良い手ではないので、いまの仕事にどうしても情熱がわかない場合は、仕事以外でも情熱を持てる場所を作ったほうがよい。プライベートで情熱の対象を探すには、もちろん趣味に打ち込んでもいいし、それが無理なときはボランティア活動に取り組むのも効果的である。

 

ってことで、情熱をうまく機能させるための注意点をまとめてみました。まー、そう言われてみれば、日本でも「情熱を持てる仕事が大事!」とか言われだしたのはここ十数年の話ですし、実際には情熱がバックファイアを起こすケースも多いですし、「そんなに情熱にこだわらんでも……」とは思いますかね。以上をふまえて、情熱は正しくお使いください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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