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日々の幸福を高める重要ポイント「社会的ポートフォリオの多様性」とは?

 

人間の幸福に大事なのはIQでもお金でもなく、なんだかんだで人間関係!」ってのは、ハーバードの超長期研究でも報告されているところ。その効果量はかなり大きくて、友人や家族との関係を大切にすることは、「快眠」「運動」「良い食事」と同じくらい健康の維持に欠かせないレベル。なので、主観的な幸福感を高めたいのであれば、ぜひまずは人間関係の構築から手をつけていきたいわけです。

 

 

で、新しい研究(R)も人間関係の重要性を示したものでして、大きな結論からまとめると、

 

  • 人間関係で幸せになるには、社会的ポートフォリオの多様性が大事だよ!

 

みたいになります。同じ人とばかり時間を過ごすのも悪くはないんだけど、できればいろんな人と触れ合うほうが主観的な幸福度は上がるよーってことですね。このような「誰と付き合うか?」ってポイントを、研究チームは「社会的ポートフォリオ」と呼んでいるわけです。

 

ここで研究チームがどんな調査をしたのかと言いますと、

 

  1. 「人付き合い」と「主観的な幸福感」について調べた既存のデータを探す。

  2. 最終的に、欧米やアジアなど世界8カ国から約50,000人分のデータをピックアップ。

  3. すべてをひっくるめて、人付き合いのなにが重要なのかをチェックする。

 

って感じで、アメリカや中国、インド、ロシアなどから集めた大量のデータを分析し、どのような特徴が浮かび上がるのかを調べたらしい。

 

 

でもって、分析の結果は、以下のようになりました。

 

  • 特定の人と付き合うよりも、いろいろな人と付き合うほうが、主観的な幸福度はめっちゃ上がる。

 

  • 社会的ポートフォリオの多様性と幸福の関係は、主観的な幸福(生活満足度とか人生の質とか)を高める効果が最も大きい。一方で、健康レベル(身体検査の結果とか病気になる回数とか)や、感情的な幸福(ポジティブな感情が多くて、ネガティブな感情が少ない)に関しては弱い関係しかなかった。

 

  • 社会的ポートフォリオの多様性は、既婚であること(幸福への影響が大きい要因として確立されている)よりも、主観的な幸福を強く予測することができた。

 

  • この関係は、人々がコミュニケーションのなかで行った活動の多様性をコントロールしても持続した。

 

ということで、とにかく多彩な人たちと付き合うのが重要なんだ、と。研究には、社会的ポートフォリオが多様な人と、そうでない人の時間の使い方の割合も出ていて、これがまた参考になります。

 

 

ご覧のとおり、右上が「いろんな人たちと付き合っている人」の例で、同僚、家族、パートナー、子ども、兄弟、親友、友人、知人などと幅広い付き合いをしているのがわかりますね。逆に、左下は社会的ポートフォリオの多様性が低い人の例で、ひとりだけで過ごす時間が64%を占めているのにくわえて、あとは同僚、兄弟、友人がチラホラって感じですね。私の場合は、仕事でいろんな人と付き合うものの、ひとりでいる時間がほとんどなので、右下のポートフォリオに一番近いかな……。

 

 

いずれにせよ、親しい友人や家族だけと過ごすのも悪いわけじゃにものの、見知らぬ人、顔見知りの同僚、ただの知人との時間も作ったほうが、主観的な幸福の面では格段に効果が違ってくるのは間違いなさそう。人間関係を改善する際は、ぜひポートフォリオの多様性にもご注意ください。

 

 

では、なんで多様性が大事なのかってことですが、研究チームいわく、

 

私たちは、新しい人たちといると、いろいろなことを試してみる気になる。私たちは、自分の可能性全体を感じるために、多様なコミュニティを必要としている。さまざまな人々と一緒にいることで、私たちのアイデンティティのさまざまな側面が引き出されるのだ。

  

とのこと。特定の人と付き合うと同じことしかないから、それだけ自分の可能性がせばまってしまうのに対し、多様な人と付き合うことでいろいろな要素が引き出されるわけですね。要は、多様な人と付き合うと自己分析がはかどり、それによって幸福度が上がるのかもですな。

 

 

ちなみに、データを見ていると、以下のような傾向も確認されてたりします。

 

  • 社会的ポートフォリオが多様な人は、いろんな感情を経験しやすく、そのおかげで主観的な幸福が上がっているっぽい。

 

  • 社会的ポートフォリオが多様な人は、社会的なサポートの量も多くなり、これがストレスの軽減、心理的な幸福の改善、身体的健康、長寿に役立っているっぽい。

 

ちょっと前に「メンタルが強くて幸福度が高い人は感情が多様だ!」みたいな話を書きましたけど、このポイントに、社会的ポートフォリオが役立ってる可能性は高そうですね。

 

 

 

さらに研究チームいわく、

 

もしあなたが、自分の時間の大半を同じ人と過ごす傾向があるのなら、たまには混ぜてみることを考えよう。12時間続いて配偶者と過ごすなら、13時間目は別の人との新しい関係に使ってみよう。

 

とのことで、意識して付き合う相手の幅を広げることの重要性が強調されておりました。私の場合は、そもそも1人でいる時間が長いので、そこが問題になるのかもですが……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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