「バットマンを想像する」と子どもの頭が良くなるぞ!という話
「バットマン効果」で子どもたちの能力が上がる!ってデータ(R)が、大人の能力アップにも使えそうだったのでメモ。
まずは、この研究の結論から申し上げますと、
- 5歳ぐらいの子どもに「バットマン」みたいなヒーローをロールモデルにしてもらうことで、子供たちの実行機能と人生における適応力が向上するという。
みたいになります。たとえば、「算数はわからないからやらない!」って子どもに、「ヒーローが問題を解く必要に迫られたらどう行動する?」みたいに誘導すると、子どもたちが算数をやるモチベーションが上がり、その能力も上がるよーって話です。あくまで子どもだけを対象にした研究ながら、大人にも十分に使えそうではありますね。
これはミネソタ大学などの調査で、3歳児(48人)と5歳児(48人)を集め、みんなに「自己隔離」をしてもらいつつ頭を使うテストをやってもらったらしい。「自己隔離」ってのは、自分と心理的な距離を置くことを意味してまして、「いま自分はこんなことを考えてるんだなー」「自分の感情はこんな感じなんだなー」って感じで、自分のことを他人事のように見る能力のことです。
この研究でテストされた「認知機能」は、注意力、問題解決力、推論力、記憶力、分析力、目標に向かう行動力などで、脳の高いレベルの認知機能のことである。実行機能は、知的成長や日常生活の成長に最も強く貢献する機能のひとつである。それがなければ、人間は環境に適応することができない。実行機能は人生の早い時期に発達し始め、10歳までに急速に成長する。この時期は、バットマン効果を活用する絶好のチャンスなのだ。
子どもたちに「自己隔離」を指導するために、この実験では、2つの方法が採用されてまして、
- 名前グループ:子どもたちに、自分のことを「名前」で呼ぶように支持する。「私は問題を解いている」ではなく、「アキラ君(自分のこと)は問題を解いている」みたいな感じ。
- バットマングループ:子どもたちに、「バットマンが問題を解いていたらどう行動する?」と自問しながら行動してもらう。
といった感じになります。その結果、認知テストの成績が向上タンだけど、バットマングループの数字が最も高かったそうな。バットマンのロールプレイをすることで、子どものマインドセットが「バットマンならこうするはずだ!」みたいに切り替わり、そのおかげで、バットマンみたいに戦略的に数学に取り組むようになるんだそうな。でもって、そのプロセスで、認知テストから心理的に距離を置くようになり、目の前の問題への不安が減った結果として成績が上がるらしい。こいつは手軽な脳力アップ法だぜ……。
また、ここではおもしろい知見がいろいろ出てまして、
- 自己距離が長くなればなるほど、認知スコアが上がっていく。つまり、自分をより他人のように見ることが出来た子どもほど、脳のパフォーマンスを存分に使えていた。
- 3歳児と5歳児では、5歳児だけがスコアが向上した。このスコアの伸びは、3歳ではほとんど見られないが、5歳になると劇的に向上する(たぶん、この年齢ぐらいから他の視点から物事を考える能力が上がるんだと思われる)。
みたいになります。自分との心理的な距離を置ける人ほど、感情と意識が切り離され、体験する感情が希薄になり、最後には目の前の状況を大局的に見られるようになるわけっすね。自分自身を "ズームアウト"して見ることで、感情にまどわされなくなった状態と言いますか。
ちなみに、この研究を見て、「なんでバットマンなの?スパイダーマンじゃダメなの?」って疑問を抱いた人もいるかもですが、これはバットマンが「よく考えてから行動する」キャラだからだそうです。スパイダーマンが出たとこ勝負でチャレンジするキャラなのに対しバットマンは戦略化なので、認知タスクみたいに根気よく取り組む作業のロールモデルには最適だろうって判断らしい。そう考えると、勇気が必要なタスクには、スパイダーマンをロールモデルにしてみると良いんでしょうな。
さらに余談で言うなら、広範に研究されているわけではないものの、このバットマン効果は他の調査(R)でも認められてまして、キュリー夫人のふりをした4~7歳の女児は、科学を学ぶスピードがめっちゃ上がったんだそうな。おそらく、特に子どもにとってロールプレイってのは、強力な学習ツールとして機能するようだし、この効果は大人にも使える可能性が大きめ。
ってことで、この効果を使うときは、以下のポイントを満たすように気をつけつつやってみると良いかもしれません。
- 自分がちゃんと好きで、能力をよく知っているキャラクターを選ぶ。
- その問題の特徴に合ったキャラクターを選ぶ。
これは、自分でもやってみよう……。