【質問】ADHDとアスペルガー症候群はどう違うんですか?
こんなご質問をいただきました。
ADHDとアスペルガーって、どう違うんでしょうか? 社会的に困難があったり、衝動性があったりと、いろいろな特徴が重なるっているため、はっきりした違いがあるのか混同しちゃうのですが。
ということで、果たしてADHDとアスペルガー症候群は似たように見えるけど、どのような違いがあるのか、と。ちなみに、アスペルガー症候群については、現在は「自閉症スペクトラム症」のひとつにまとめられてますけど、ここでは便宜上アスペルガーの名称を使っておきます。
で、確かに両者が抱えるハードさは重なることもありますが、やはり明確な違いはありまして、ざっくり以下のようになります。
- アスペルガーは興味の対象が狭くなり、特定の話題に夢中になることが多い(R)。ADHDは興味の対象が広いし、さらに興味がころころ変わったり、衝動的に変わったりしやすい。
- アスペルガーは変化が苦手でルーチンが必要。ADHDは日常が嫌いでルーチンを嫌うこともある。
- アスペルガーは運動するときに問題が出やすく、跳ねるように歩いたり、傾いて歩いたり、抑揚のない話し方になったり、話すときの音量やピッチのコントロールが難し勝ったりする。アイコンタクトや、表情や身振りなどの非言語的コミュニケーションも苦手。ADHDの人には通常はこの問題は起きない。
- アスペルガーは反復行動が多いが、ADHDはそうではない。
- アスペルガーはユーモア、皮肉を理解するのが苦手。他人の話を急にさえぎることも多い(悪気があるわけではない)。
- ADHDは他人の指示に従うのが苦手で、勉強や仕事を最後までやり遂げることができないことが多め。ルールを理解していても破ったりすることが多い(悪気があるわけではない)。
- ADHDは忘れっぽく、よく物をなくす。不必要な危険を冒したり、不注意なミスをしたりすることも多い。
というわけで、こうして見てみると、アスペルガーの方は社会のルールや空気を理解したり反応したりすることが苦手で。ある話題や対象物に過剰に興味を持つことが多め。一方で、ADHDの方は、注意力や多動性に根本的なトラブルを抱えていて、衝動性のコントロールに難がある感じっすね。ただし、アスペルガーとADHDは同時に持つケースも多いので、その点で判断が難しくなる傾向もありますが。
また、もうちょい両者の違いを知りたいなら、診断の基準に目を向けてみるのも有用でしょう。どちらとも医学的な検査で調べるわけではなく、通常は、病歴、面接、行動を評価して診断を下します。
- アスペルガー:通常は、子どものころに診断される。社会的なコミュニケーションに重大な問題があり、制限的で反復的な行動をとるかどうかをチェックすることが多め。その他、非言語的コミュニケーションがうまく行かなかったり、反復的な行動があったり、同一性へのこだわりと柔軟性のなさも考慮されたりする。
- ADHD:通常は、多動性、衝動性、注意力の問題がチェックされる。不注意型、多動・衝動型、複合型の3つに分けられ、「不注意型」は注意力が維持できず、気が散りやすく、指示に従うのが苦手。「多動・衝動型」は、活動の量が多く、過度のおしゃべりが合ったりする。「複合型」は、不注意型と多動・衝動型の両方の特徴を持つ。
どちらも社会でのコミュニケーションに難を抱えがちではあるものの、こうして見ると割と違うものですね。
また、その他にも、脳の仕組みからも違いをチェックしてみましょう。アスペルガーとADHDはどちらも脳の神経にトラブルが起きているケースが多く、何がこれらの問題を引き起こすのか正確にはわかっていないものの、ある程度までは原因が理解されてたりしますんで。
- ADHD:ADHDについては、ドーパミンとノルエピネフリンの問題を示す研究(R)が多め。ADHDはドーパミンやノルエピネフリンレベルに影響する薬に反応しやすいので、わりと支持されている考え方。
こちらも、なんとなーく脳の神経伝達物質が関わっている感じはあるんだけど、いまだにどちらとも明確な理由がわかったとは言えないのが難しいところです。
ってことで、いろいろ書いてきましたが、こうして見ると割と明確な違いがあることがおわかりいただけるんじゃないかと。どうぞよしなにー。