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【質問】なんで世の中はルッキズムが加速しているんですか?

 


こんなご質問をいただきました。

 

若い人間のルッキズムが増えていると言いますが、これはどうなんでしょうか?やっぱりSNSのせいですか?

 

ということで、若い人は外見へのこだわりや偏見が強くなってるんじゃないか? そして、それはSNSが大きいのではないか? というお尋ねでございます。

 

で、ルッキズムについてはやはり「増えてるかもなー」って意見は結構ありまして、「なぜ美人ばかりが得をするのか 」で有名なナンシー・エトコフ先生などは、2000年の時点で「私たちは、ルッキズムが最も蔓延する世界に直面しようとしている」と指摘してたりします(R)。まー、生後14時間で乳児ですらルックスが良い大人を好むって研究(R)があるぐらいなんで、そもそもヒトの脳内にはルッキズムの種が埋め込まれているわけですが、それにしても複数の専門家が「ルッキズム増えてないか?」と指摘しているのは事実ですね。

 

ルッキズムが増えた原因はまだはっきりしてないものの、ナルシシズムの研究などを見ていると「やっぱSNSの影響はあるのかもなぁ」という気はするわけです。ナルシシズムの特徴はルッキズムだけじゃないものの、「自分の外見へのこだわり」が強い人たちなのは間違いないので、関連データは参考になりましょう。事実、他者の外見をディスるのに熱中するタイプのナルシシストは多いですしね。

 

では、「SNSによってナルシシズムのレベルは高まるのか?」と問われれば、その答えは「ざっくりイエス」だと言えましょう。

 

まず第一のポイントとしては、「尊大型ナルシシズム」の傾向が強い人ほどSNSをよく使うし、投稿の回数も多いし、自撮り写真をアップするしって研究はわりと多いんですな(R)。「尊大型ナルシシズム」ってのは、めっちゃ自意識が強くて、攻撃的で上から目線でふるまうタイプのナルシシストです。当然、ルッキズムにもハマりがちなタイプですね。

 

一方で、実は自信がなくて傷つきやすい「軟弱型ナルシシズム」については、SNSとの相関がほとんど見つかってなかったりもします。ナルシシストだからといって、必ずしもSNSを好むわけでもないってことですな。

 

でもって、第二のポイントとしては、ナルシシストはSNSを好むだけでなく、SNSがナルシシズムをブーストする傾向も確認されてるってところです(R)。インスタやTikTokのように視覚ベースのプラットフォームを利用する人は、時間の経過とともに自己愛が強くなる傾向があるって報告はわりと多いんですよ。

 

ついでに、これに関する知見も紹介しておくと、

 

  • 最近の研究(R)では、ネットいじめやネットストーキングがナルシシズムとSNSの関係を媒介することがわかった。要するに、ナルシシストは他人を威嚇したがる傾向があり、そのためにSNSを使うケースが多い。そのため「尊大型ナルシシズム」を持つ人ほどSNSにひきつけられ、これがナルシシズムをブーストするのかもしれない。

 

  • 女性を対象にした研究(R)では、ゴリゴリにルックスを強調した自撮り写真を投稿する人たちはナルシシズムが高かった。これは、ナルシシストが「他人を威圧したい!」という欲求が強く、この気持ちを満たすために自撮りを使っているのだと考えられる。このような行動は「いいね!」によって強化されやすく、さらに見た目へのこだわりが深まっていく可能性が高い。

    しかし、せっかくルックスを強調した写真をアップしたのに、何にも反応を得られないと、一時的に活動レベルや攻撃性が高まりやすい。これは「自己愛的怒り」呼ばれ、投稿活動の増加、他者への攻撃などの行動を引き起こす。

 

みたいな傾向が確認されてたりもします。あくまで推測の段階でしかないんだけど、これらのデータを見ていると、

 

  1. 他人を威圧したい欲求を満たすために、ナルシシストたちが、ルックスを加工しまくった写真を投稿する。

  2. ところが、自分が思うよりも他人が良い反応をしてくれない。

  3. ナルシシズムの怒りが燃え上がる。

  4. 怒りに飲まれたナルシシストが、他人のルックスを攻撃しはじめる。

  5. ルッキズム覚醒!

 

みたいな流れが想定できるわけです。まぁ、SNSとナルシシズムの関係は複雑なので、他にもいろんな要素が関わっていそうではあります。また、ルッキズムについてもSNS以外の原因は多そうでして、いちがいに「ネットでほめられなかったナルシシストがルッキズムをこじらせる!」とも言えないんで、そこはご注意ください。

 

ただ、ナルシシズムとルッキズムには明確な関係があり、同時にナルシシズムとSNSの相関も強いもんで、可能性としてはあるでしょうねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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