今週の小ネタ:めっちゃ軽い運動でも脳はデカくなる、みんなの幸福は他人にバレバレ、ブランド品大好きっ子は不安な人が多い
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
めっちゃ軽い運動でも脳はデカくなる説
またも運動メリットのお話でーす。運動にいろんなメリットがあるのは常識ですが、新しいデータ(R)は「定期的な運動で脳がデカくなるよ!」って結論になってました。
この研究のポイントを先に言っておくと、
- 1日4,000歩未満のウォーキングでも脳に良い
ってところです。従来の研究だと、わりと過酷な運動をしないと脳は大きくならないんじゃないかと言われてたんですが、実際には全然低めの負荷でもいけるんじゃないか?って仮説が出てきたわけです。
この研究は10,125人の参加者が対象で、かなり幅広い年齢、性別、人種からサンプルを集めております。どんな研究だったかと言いますと、
- 1.5T全身スキャナーを使って詳細な脳の画像を作り、さらにディープラーニングネットワークで脳領域の容積を測定する。
- みんなにアンケートを取って、身体活動のデータを2週間ぶん集める。
- 2つのデータを比べて、運動量と脳の大きさを調査する。
って感じになります。ここで調べたのは「中等度の身体活動」と「脳のサイズ」の関係で、これがどれぐらいの運動量なのかと言いますと、心拍数と呼吸数はアップするんだけど会話はできるぐらいのレベル。たとえば、「早歩き」とか「ゆったりとしたペースでのサイクリング」などが典型的な例ですね。
それでは、結果を見てみましょうー。
- 定期的に運動をしている人は、灰白質と白質の体積が有意に大きい。灰白質は脳内の情報処理に重要であり、白質は異なる脳領域間の結合を促進する。
- 1日4,000歩未満のウォーキングのような中程度の身体活動レベルでも、脳の健康にプラスの影響を与える可能性がある。
- 具体的には、週に25分、あるいは1日10分、週に2.5日という低レベルな身体活動であっても、生涯を通じて脳の体積アップと相関している。
ということで、従来の研究よりも、もしかしたらかなり低強度の運動でも脳に良い影響が出るのかもしれないんだ、と。週150分や1日1万歩も動くのは大変ですから、これまで考えられていたよりもはるかに簡単に脳を鍛えられる可能性があるってのはすばらしいことですね。
まー、この研究は横断的なデザインなので、ある時点でのスナップショットに過ぎない点は留意したいところ。さらに、身体活動データも自己申告に依存しているので、数字に食い違いが出ている可能性もありまして、データとしてはかなりゆるいものだとお考えください。
とはいえ、かなり軽めの運動でも脳の健康に良いかも?ってのは希望が持てる結論で良いですねー。
みんなの幸福は他人にバレバレ説
「あなたが本当に幸福かどうかは周囲にバレバレだぞ!」って研究(R)が出ておりました。簡単に言うと、私たちは、初対面の人と出会ってほんの数分で、個人の人生満足度やポジティブな感情を驚くほど正確に評価できるんだよーみたいな話です。
過去にも「人間は他人のメンタルを驚くぐらい正確に判断する!」みたいな話は合ったんですが、他人のウェルビーイングをどれだけ正確に評価できるかについては、これまでほとんど調査されてこなかったんで、なかなか貴重な内容になってるんじゃ無いでしょうか。
研究のデザインをざっくりまとめると、
- 200人の大学生に自己紹介をしてもらい、その様子を動画で撮影する。同時に、みんなの人生の満足度などもチェックする。
- その動画をまた別の人たちに見てもらい、「この人がどれぐらい幸福だと思いますか?」と尋ねる。
みたいになってます。でもって、「知らない人の自己紹介」を見せられた人たちは、こんな評価を下しました。
- 自己紹介した人たちの人生満足度やポジティブな感情は、見知らぬ人による評価と有意に相関していた(つまり、ほんのちょっとのコミュニケーションでも、私たちは他人の幸福度を正確に測ることができる)
- みんな他人を判断する際に、声の大きさと身体的な魅力を材料にしていた(つまり、生き生きとしゃべる人や、生き生きした表情を浮かべながらしゃべる人ほど幸福だと判断されやすく、実際に幸福であることが多い)
ってことで、結構な人が、他人の幸福感を正しくスナップジャッジできる可能性があるんだってことですな。この結果が日本人にも当てはまるのであれば、SNSで幸福感をアピりつつも内面にしんどさを抱えるようなインフルエンサーも、実はバレバレなのかもしれませんな。
ブランド品大好きっ子は不安な人が多い説
自慢のためにものを買う人は、不安な愛着スタイルに悩まされがち!みたいなデータ(R)が出ておりました。愛着スタイルってのは、人間のコミュニケーションを3つのスタイルに分類したもので、くわしくは「あなたの人間関係を劇的に改善するかもしれない2つの質問」をご参照ください。
この文献のテーマになった不安な愛着スタイルってのは、一人で行動することに不安を感じ、相手に依存しやすいタイプのこと。要するに、この研究チームは、自分にあまり自信がないタイプなので、何かを買う時に、簡単にステータスを手に入れられるブランド品などに手を出しやすいんじゃ無いかと考えたわけですな。
これを探るため、研究者たちは約2,000人の参加者を対象に、2つの大規模な研究を実施。みんなの愛着スタイル、物質主義のレベルなどを調べたところ、
- 不安型の愛着スタイルが強い人は、安全型や回避型と比べて、物質主義のレベルが有意に高く、ステータスを示す商品を購入する傾向が強かった。
- この行動は、彼らの物質主義的価値観によって媒介された(簡単に言えば、このタイプは、人間関係における不安に対処するためにブランド品などを買っている)
って結果が出たんだそうな。もちろん、こちらもすべて自己報告データに依存しているの、バイアスが生じている可能性はありますんでご注意ください。とはいえ、不安型とステータス消費の関係は昔から言われてきたことなんで、個人的には説得力を感じるわけですが。