【質問】イソチオシアネート系のサプリで運動パフォーマンスが激しく上がるって本当ですか?
こんなご質問をいただきました。
パレオさんは、Nomioってサプリを知ってますか? ブロッコリーのサプリで、最近ランナー仲間の間で『めちゃくちゃ効くらしい』と言われてます。脚が軽くなるとか、乳酸がたまりにくくなるとか。ホントなんですか?
ということで、「Nomio」ってサプリは効くのか、と。マニアックなご質問ですねー。
Nomioってのは海外で話題になってきたサプリで、日本だとまだまだマイナーながら個人的にも気になっておりました。こいつはブロッコリースプラウト(新芽)から抽出した成分を濃縮したサプリメントで、イソチオシアネート(ITC)と呼ばれる天然の化合物が含まれております。この成分は、ブロッコリーやキャベツ、ケールなどのアブラナ科野菜に含まれているもので、抗酸化作用・抗炎症作用が高いと言われてるんですな。
このおかげで、Nomioを飲むと、
- 乳酸の蓄積を抑える
- 脚が軽く感じる
- ミトコンドリアを増やす
- 酸化ストレスを抑えて回復を早める
みたいな効果を得られるとされてまして、事実なら非常に気になってしまうわけです。
では、実際にイソチオシアネートには効果があるのか?って話ですが、現在までに発表されている研究は主に3つあります。
① ハードトレーニング×イソチオシアネートでどうなる?
スウェーデンのカロリンスカ研究所とスポーツ科学大学の合同研究(R)では、参加者に週5日でHIIT(高強度インターバルトレーニング)を1週間ほど指示。その際に、全体を「Nomioを1日2回摂取するグループ」と「プラセボグループ」にわけた。その結果、Nomioを飲んだグループは、
- 乳酸の上昇が抑えられた
- 酸化ストレスが低下
- 運動継続時間が約12%延長(ただしVO2max自体は変わらず)
という結果が得られた。12%ってのは、10分でバテていた人が11分ちょっとまで持つくらいの違い。
② 単発摂取テスト:1ショットで効果があるのか?
上と同じ研究グループが行った未発表の研究(R)では、Nomioを1回だけ飲んで3時間後に運動するという実験を実施。すると、こちらでも乳酸濃度がプラセボより低下するという結果が得られた。つまり、短時間でも何らかの生理的変化が起きている可能性が高い。
③ 細胞レベルの実験:ミトコンドリアが増える?
こちらはカナダ・ヨーク大学の研究(R)で、試験管内で刺激した筋繊維にITCを加えてみたら、酸化ストレスが低下したり、ミトコンドリアの生成が促進したりといった結果が得られたそうな。この研究はNomioとは無関係なので、企業のバイアスが入っておらず、信頼度はちょっとだけ高め。
ということで、全体的には酸化ストレスや乳酸の濃度が下がったりといった変化は起きそうだなーって気がするわけです。が、ここで恐らく皆さんちょっと引っかかるのが、「乳酸を減らすことって、ほんとにいいことなの?」という点じゃないでしょうか。まだ研究の数が少ないんで何とも言いづらいものの、イソチオシアネートは根も葉もない成分じゃないんで、「試してみてもいいのかなー」ぐらいの感じですね。
おそらく使ってみる価値がありそうな人としては、
- 週4〜5回以上の中〜高強度トレーニングをしている
- トレーニングの疲労が抜けにくくなってきた
- レース前に少しでもパフォーマンスを上げたい
- ミトコンドリアオタク
みたいになるかもしれません。一方では、トレーニング頻度が少なかったり、運動の強度が低かったりする人が飲んだところで、あんまりメリットは見込めないでしょうね。
というわけで、結論としては、イソチオシアネートってのはなかなか面白い存在じゃないでしょうか。まあ、この成分を摂るのにわざわざ高いサプリを買うのもどうかなーと思いますんで、普段から食事で摂取するように心がけるのが良いのではないでしょうか。具体的には、
- ブロッコリースプラウト
- ブロッコリー(成長後)
- カリフラワー
- キャベツ(特に生キャベツがよい)
- ケール
- ワサビ
- 大根おろし
あたりが優秀っすね。特にブロッコリースプラウトは含有量がトップクラスなんで、サラダやトッピングにお使いください。
ちなみに、食べ方によってイソチオシアネートの量は大きく変わるので、ここも押さえておきましょう。おおまかなポイントをチェックしておくと、
- 「生」で食べるのが基本: イソチオシアネートは、生の状態で植物の細胞が壊れるとき(=刻む・噛む)に生成されるので、加熱しすぎるとミロシナーゼが失活し、生成量が激減しちゃう。 なので、ブロッコリースプラウトや大根おろしなどは生で食べるのが基本で、加熱する場合は蒸すか軽く加熱するぐらいがベター。
- 切ってから10分ほど置く:野菜を切ったあと、10〜15分ほど置いてから加熱すると、イソチオシアネートの生成が進むとされております。なので、ブロッコリーを切って10分放置し、その後に蒸すか炒めるといった方法を使うのもアリ。
- 酵素を補うのもよい: どうしても加熱せざるを得ない場合は、生の大根おろしやマスタードを添えるのもアリ。これにより、酵素(ミロシナーゼ)を後から補えるので、加熱で失われた変換能力を一部カバーできますんで。
みたいになります。スルフォラファンに関する研究では、1日あたり約20〜40mgのスルフォラファン(ITCの一種)が効果的とされてまして、これはだいたい、
- ブロッコリースプラウト:約10〜20g
- ブロッコリー:約100〜150g
ぐらいが目安になりますね。まずはここらへんを基準に食べていくといいんじゃないかと。どうぞよしなにー。


