「心拍数ダイエットなら60日で15kg減量!」はどこまで正しいのか
https://yuchrszk.blogspot.com/2015/05/6015kg.html
「心拍数ダイエットってどうなんですか?」ってご質問がありましたんで、そのへんの話でも。
心拍数ダイエットってなに?
心拍数ダイエットはとてもシンプルな減量法でして、「最大心拍数の60%で有酸素運動をする」だけ。早歩きやスロージョギングぐらいのペースでゆっくり走るのがポイントなわけですね。これは、「最大心拍数の40~65%ぐらいが最も脂肪が燃えやすい!」という研究例をもとにした方法で、Naverまとめを見ると「60日で15kgも減量!」なんて成功例もあるみたい。ジムのランニングマシンなんかについてる「脂肪燃焼ゾーン」の表示も、このデータがもとになっております。
が、結論から言うと、心拍数ダイエットは科学的に否定されております。というのも、心拍数ダイエットには以下のような問題点があるんですね。
問題1 脂肪の燃え方には個人差が大きい
まず有名なのが、2002年に行われたバーミンガム大学の研究(1)。18人の参加者たちに自転車をこいでもらい、全員の血液から脂肪酸の量を計測(=脂肪が燃えている量)した実験であります。その結果は、
- 最大心拍数の74%で脂肪がもっとも燃えていた
- 最大心拍数の92%で脂肪がもっとも燃えなかった
といった感じ。だいたい最大心拍数の69〜79%ぐらいでもっとも脂肪が燃えたそうで、これだけ見ると「あれ?やっぱり心拍数ダイエットって正しいんじゃないの?」と思っちゃいますが、この数値はあくまでも平均値であります。
研究者いわく、
参加者によって、脂肪の燃焼量は大きく異なっていた。この大きな差により、現実的な運動の脂肪燃焼レベルを推定するのは不可能だろう。
とのこと。運動による脂肪の燃え方は個人差がデカすぎて、実際のダイエットに応用するのは難しそうであります。
問題2 エクササイズ後の脂肪燃焼を無視している
続いて問題なのが、心拍数ダイエットでは、運動中に燃える脂肪しか考慮に入ってないところ。実際は運動のあとも脂肪の燃焼は続くんですが、そのあたりが無視されてるんですよね。ここで参考になるのが2000年の研究(2)で、10人の参加者に対して、運動レベルを変えつつ30分のランニングをしてもらったんですね。その結果は、
- 参加者の半分は心拍数が高い運動をしたほうが脂肪が燃えた
- 参加者の半分は心拍数が低い運動をしたほうが脂肪が燃えた
- ただし、すべての参加者は、心拍数が高いほうが運動後の脂肪燃焼量が多かった
といった感じだったそうで、運動中の脂肪の燃え方には個人差が大きすぎるものの、運動後についてはハードなエクササイズのほうが脂肪が燃えやすいみたい。
また、2002年の実験(3)もおもしろくて、
- 心拍数が低い運動をした参加者:運動中には21グラムも脂肪が燃えたが、24時間のトータル燃焼量は92グラムだった
- 心拍数が高い運動をした参加者:運動中には12グラムの脂肪しか燃えなかったが、24時間のトータル燃焼量は96グラムだった
といった結果だった模様。たしかに心拍数が低い運動のほうが脂肪は燃えやすい傾向があるものの、長い目で見ちゃうと、その効果は消えてしまうみたいですね。
まとめ
以上の話をまとめますと、- 心拍数と脂肪の燃え方には個人差がデカすぎて目安にHITならない
- 長い時間で見ればハードな運動でも脂肪の燃え方は同じ
というところ。 結局、運動のレベルは体脂肪の燃え方に影響がないので、
- ハードな運動が嫌いだけど時間がある人は、軽いウォーキングやスロージョギングをする
- ハードな運動がOKで時間がない人は、HIITのような運動を短時間だけ行う
といった決め方になるんじゃないでしょうか。運動が嫌いで時間もないという方は、せめてNEATを増やす方向で(笑)