王道しか書いてないがゆえに本当に使える文章読本「できる研究者の論文生産術」
書店に行ったら、ポール・シルヴィア博士の「できる研究者の論文生産術」って本が出ておりました。
この本の内容さえ守ってればOK
これは、10年ぐらい前からやたら評判が高かった「How to Write a Lot(たくさん書く方法)」の邦訳で、わたしも出版当時に読んでとても役に立った一冊。シルヴィア博士が社会心理学者なんで、研究者向けのような印象が強いですけど、文章を書くすべての人にオススメできる内容になっております。
実際、わたしも本書を読んでからは、それまでの遅筆がウソのように改善。毎日のように文章を量産できるようになり、まさに人生が一変! ……というのは当然ウソで、その後もいろいろと安っぽいライフハックに手を出した結果、最終的には「ああ、やっぱ本当に正しいのはあの本だけだった…」って結論にいたった感じ。
というのも、本書が教えてくれる文章術や時間の管理法は、どれも超王道なんですよね。その点で新味はまったくないんですが、逆に言えば「これだけ守っとけばOK」とも言えるわけで、まぁ読んでみて損はないかと。
以上をふまえたうえで、本書がオススメする文章量産テクをざっくりまとめます。シルヴィア博士によれば、文章に詰まってしまう人の問題点は以下のとおり。
文章が書けない人にありがちな言い訳
- 言い訳1:時間がたりない
- 解決策:スケジュールする。あらかじめ書き物に使う時間を割り当てておく。書くと決めた時間はひたすら書く。手が進まなくても書く。メールは読まない。仕事場の掃除もしない。書類の整理もしない。花に水もやらない。超基本ですが、これを実際にやるとやらないでは本当に違う。わたしも手帳に仕事とブログの時間は完全に割り当てております。
- 言い訳2:知識、情報、資料が足りない
- 解決策:無視する。この世に存在するすべてのデータに目をとおせる人間はいない。何かが足りないことを、文章が書けない言い訳に使ってはいけない。これは、わたしもいまだに「もうちょい調べてから…」とかつい思って、気づけば2時間がたってたなんてケースが多いので注意したいところ。
- 言い訳3:十分な道具がない
- 解決策:無視する。速いPCがなくても、良いイスがなくても、大きなモニタがなくても、古いものを使えばいいだけ。昔の人はロウソクの下でペンと紙を使っていた。文章の生産性を上げるために悩むのは、21世紀においては意味がない。このあたりは、ライフハッカー系の人がおちいりがちな罠のような気が。
- 言い訳4:インスピレーションがわかない
- 解決策:インスピレーションを待つのは意味がない。1990年にロバート・ボイスが行った研究(1)によれば、インスピレーションを待ってから文章を書く人は、もっとも生産性が低い。
やる気のコントロール
続いて、シルヴィア博士によるモチベーションアップの方法をどうぞ。とにかく文章を書くのはめんどうだし、すぐに楽しい気分になるわけでもないんで、やる気のコントロールは超大事。
- 2種類のゴールを決める:「長期的で抽象的な目標」と「短期的で具体的な目標」の両方を設定する。わたしの場合ですと、だいたい「年内に別冊を4冊とコンビニ本を4冊」みたいなノルマを決めまして、短期的には「毎日6ページずつ進める」といった目標を決めております。人によっては「1日に書く文字数」「1段落は必ず書く」といった決め方になるんでしょうね。
- 進捗状況の把握:なにせ人間は未来の予想がニガテなので、自分の感覚にしたがってるとまず失敗する。なので、1日に書いた文字数、何を書いたかなどはめんどうでも記録したほうが、絶対に後のモチベーションは持続する。
シルヴィア博士は統計ソフトを使って日々の文章量を記録してるそうですが、わたしの場合、進行管理はすべてふせんに日付を書いて、正の字で状況を把握しております。うーん、超アナログ。いろいろMacのプロジェクト管理ツールとかも使ってみましたが、結局はアナログのほうがやる気が出るのが不思議。
- 書く作業の優先順位をつける:1日の目標が決まったら、それぞれの作業の優先順位を決める。本書の例で言うと、「参照データのチェック」「原稿の見直し」「新しい原稿に着手する」など。当然ながら、終わりが見えているものから先に手を付けるのが基本。
まとめ
以上、 「できる研究者の論文生産術」の要約でした。いずれも基礎中の基礎といった内容ながら、実際に多数の論文を生産してきた学者がたどりついた結論なので、読んでいて重みが違う感じ。
「たくさん書きたいんじゃない!いい文章が書きたいんだ!」って方もいらっしゃいましょうが、なにせ文章に限っては大量に書いてナンボ。本書にも取り上げられているとおり、たくさん書いたほうが良いネタも浮かびやすいってデータもありますんで、まずは時間を決めて書きまくることをオススメします。
credit: Jose Roco