自分が過去にしたズルい行動を紙に書くと、目の前の誘惑に強くなる
ダイエットでも仕事でも、無意識の暴走をおさえて目の前の誘惑に勝つのが大事。とはいっても実践は難しいもんですが、具体的に「誘惑に勝つ方法」について調べた論文(1)が出てたのでメモ。
これはラトガース大学の実験でして、研究者いわく、
私たちは、悪い人間が悪いことを行い、良い人間が良いことをすると思いがちだ。そして、不道徳な行動の原因は、当人の性格のせいにされる。
しかし、すべての人間はときに不正を働いてしまうものだ。その原因は、当人の性格よりも、そのときの状況や本人が「誘惑」についてどう考えるかに左右される。
とのこと。サム・ソマーズの「考えてるつもり」にもあったとおり、ヒトは周囲の環境によって簡単に誘惑に負けちゃう生き物なんだ、と。
そこで研究者たちは、196人の学生たちに架空の不動産取り引きについて考えてもらったんですね。具体的には、参加者たちは歴史的な建造物を買いたい客の役で、売り手に「建物を改築する予定はない」とウソをつけば、より安く物件を手に入れられるといった状況が設定されたらしい。
その際、学生たちを半分にわけまして、
- 価格の交渉前に「過去に自分がズルをして上手くいった場面」を紙に書く(内容はなんでもいい)
- なにもしないで価格交渉をおこなう
といった2パターンを実践してもらったんだそうな。
その結果は明確で、事前に「過去のズル」を書いたグループは45%しかウソをつかなかったのに対し、そうでないグループは67%がウソをついたらしい。これは、「自分のズル」を意識したことで道徳的な気持ちが芽ばえたわけではなく、あくまで「理想のセルフイメージ」を保つ気持ちが働くのが原因らしい。
研究者いわく、
私たちは、目の前の誘惑がセルフイメージを壊さない限り、あえて不正な行動を避けようとは思わない。多くの人は、無意識のうちに誘惑をカッコでくくっており、自分の行動を正当化しようとする。たとえば、「ちゃんと自宅で使うから、仕事場の備品を持ち帰ってもOK。泥棒じゃないよね」といった具合だ。
他人に見つかったり、それで恥をかくかどうかは問題ではない。誘惑に負けることでセルフイメージが壊れるかどうかが問題なのだ。
とのこと。他人に見つかろうが批難されようが、セルフイメージが維持される限りは、ヒトは目の前の誘惑に負け続けてしまうわけですね。ところが、過去に自分がズルをした場面を思い出すことで、物事を長期的な視点で見られるようになり、結果として誘惑に強くなるみたい。
ちなみに、「過去のズル」以外にも、たんに事前に「誘惑に負けそうな場面」を紙に書くだけでも効果は出るそうな。旅行前に「旅先では衝動買いしがち」といった感じでしょうか。いずれにせよ、自分の衝動に打ち勝つには、長期的な視点が大事みたいですねー。