「MCTオイル」について知っておきたい5つのこと
「MCTオイルって使ったほうがいいですか?」と聞かれることが増えてきました。
MCTオイルは「中鎖脂肪酸」の略で、他の油よりもエネルギーに使われやすい特徴を持っております。そのせいで、俗に「痩せるオイル!」とか言われたり、「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」(http://amzn.to/2sxbAVG)でも「コーヒーに入れて飲むといいよ!」とかオススメされてたり。ここ数年で、かなり持ち上げられている印象であります。
というわけで、ここでは「MCTオイルのメリットってどこまでハッキリしてるの?」ってあたりを。現時点でわかってることをまとめておきます。
1.MCTオイルはダイエットに役立つが…
まずはMCTオイルのダイエット効果について。これに関しては2015年に13件のデータをまとめたメタ分析が出たんで、ほぼ決着がついております。
その結論だけをざっくりまとめると、
- 料理用の油をMCTに切り替えればダイエット効果が出る
- いつもの食事にMCTを追加しても無意味
って感じ。普段の料理にオリーブオイルとかサラダ油を使っている人は、かわりにMCTを使ってみると、長期的(1年ぐらい)には体重が減る可能性は大。
いっぽうで、「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」みたいにコーヒーに入れて飲むのはダイエットには無意味。たんによぶんなカロリーが増えるだけであります。
2.MCTオイルでお腹の調子がよくなる…かも
MCTオイルには、「腸内環境を整える!」なんて噂もあったりします。MCTには抗菌作用があるんで(2)、腸内の悪いバクテリアを退治してくれるんじゃないかと期待されてるんですな。
ただし、この説に関してはまだ状況証拠のみ。 2016年に出たレビュー論文(3)によれば、
- 母乳にふくまれるMCTが、新生児の腸内環境を整えている可能性がある
- 動物実験では、MCTでマウスの腸内環境がよくなり、免疫システムが改善した
みたいな感じ。なかなか期待は持てそうですが、まだ「腸のためにMCTを飲もう!」とは言えないレベル。
3.MCTオイルでエクササイズの効率がアップするかも
MCTオイルはエネルギーの燃焼率がいいので、「エクササイズにも効くんじゃない?」と考えられております。
具体的な例としては
- MCTを飲んだマウスは、長鎖脂肪酸よりも水泳テストの成績がよかった(1995年,4)
- 1日4gのMCTを飲んだ参加者は、長鎖脂肪酸を飲んだ参加者よりも、2週間で心肺機能が大幅にあがった(2009年,5)
といったところ。 データ数が少ないのが難点ながら、ちょっとおもしろい感じになっております。
まぁ個人的には、エクササイズのために追加でMCTオイルを飲む必要はないと思いますけど、普段の料理油で長鎖脂肪酸を使うことが多い人は(大豆油とかコーン油とか)、切り替えてみたほうがいいかも。
4.MCTオイルで頭がよくなるかは謎
「シリコンバレー式」のデイブ・アスプリーさんなどは、MCTオイルで頭がよくなる!などと主張しておられます。脳がうまく働くには脂肪酸が必須なんですが、なかでもMCTは効果が高い!って考え方らしい。
もっとも、この説については、いまのところ認知症の方に対するデータばっかなのが難しいところ。
などの実験が有名ながら、いずれもその効果は小さなものですし、とても「MCTで普通の人の頭が良くなる!」とは言えない段階であります。 現時点で、特に認知症の兆候がないなら、普通に青魚でも食べたほうがいいんじゃないかと思いますけどね。
5.MCTオイルでコレステロールは改善しそう
最後に「MCTオイルでコレステロールが改善!」って説について。こちらに関してはやや期待が持てそうなデータが出てまして、
- 肥満ぎみの参加者にMCTオイルを飲んでもらったら、HDLとLDLコレステロールの比率が改善した(2016年,8)
- 太りぎみの女性にMCTオイルを飲んでもらったら、12週間でLDLコレステロールが減った(2009年,9)
みたいな感じ。ただし、これらの実験は、あくまで体脂肪が多めの参加者を対象にしてまして、
- 普通体型の参加者にMCTオイルを飲んでもらったが、コレステロールにはなんの変化もなかった(2004年,10)
- 平均体重の男女にMCTオイルを飲んでもらったら、逆に中性脂肪が増えちゃった(1997年,11)
といった結果も出ております。BMIが25を超えている場合はMCTで効果があるかもですが、どうも普通の体型の人がコレステロール改善目的で使うのは意味がないみたい。
まとめ
そんなわけで、MCTオイルの効果に関する現時点でのまとめでした。全体的に言えるのは、
- 普段の料理油として使うぶんにはかなりオススメ!
- でも、わざわざ追加で飲む意味はない!
ってとこじゃないでしょうか。「頭が良くなる!」とかヘンな期待さえしなければ、かなり優秀なオイルのひとつではないかと思うしだいです。