「共感力」は本当に成功の秘訣なのか?
共感力は成功の秘訣か?
「共感力が大事だ!」なんて話を、よくビジネス書で見かけます。ざっくり言うと、
- 共感力があれば他人へ優しくなる
- 他人に「与える」行為が増える
- 成功する!
みたいな流れ。最近の研究では「ギバー(惜しみなく与える人)のほうが成功するんだよ!」って考え方が普通なんで、共感力が重要だって話にも納得しちゃうわけですな。
が、近ろ出た論文(1)を読みますと、どうやら共感力が高いからといって、必ずしも親切な行為に結びつくわけじゃなさそうなんですね。
共感力VS同情
これはイエール大学の実験で、学生たちをまず以下の2つにわけたんだそうな。
- 共感力のレベルが高い人
- 同情力のレベルが高い人
「共感」も「同情」も似たような概念に思えますが、
- 共感力=相手の感情を自分のもののように思える能力
- 同情力=相手の感情に対してかわいそうに思える能力
みたいな区別をされております。あえて悪く言えば、「同情」はやや上から目線な感情だと申せましょう。
具体的な実験は3パターン行われまして、いずれも「共感と同情のどっちが親切な行動に結びつくか?」を調べたんですね。たとえば1つ目の実験では、参加者にお金をあげて、どれぐらい恵まれない子供へのチャリティに寄付するかを調べたりとか。
共感力が高いほど親切な行動を取らない
で、3つの実験を通してわかったのが、
- 同情心が強い人のほうが、高い金額を寄付しやすい
- 逆に共感力が高い人ほど、寄付の金額は低くなる
というもの。なんと、共感力が高い人ほど実は親切な行動を取らないみたい。かつて「同情するなら金をくれ!」ってフレーズが流行りましたけど、実際は同情してくれる人ほどちゃんと金をくれるわけですな(笑)
なんで共感力が行動に結びつかないのかは良くわかりませんが、現時点での見立てでは、
- 共感力が高いせいで他人の苦しみを我が事のように感じる
- 他人の苦しみがストレスになる
- ストレスのせいで行動を起こす気力がなくなる
って経路が想定されております。まだ確定したわけじゃないですが、ありそうな感じですねぇ。
成功を目指すには慈悲を鍛えたほうがよさげ
研究者いわく、
すべての実験データを総合すると、「他者の感情を理解する能力」と「他者をあわれむ能力」は違うものだと考えられる。他者の感情をあわれむほうが、より親切な行動を生み出す強いモチベーションになりえるのだ。
とのこと。その点で「慈悲」を強調しまくる仏教の教えは的を射てるのかもしれんですな。
そんなわけで、この実験から得られる教訓としては、
- 成功のためには必ずしも共感力は本質的な要素ではない
- 本当に「ギバー(与える人)」を目指すなら「他人の幸福を願う」能力のほうが大事っぽい
ってことでしょうか。そう考えると、「慈悲の瞑想」とかはギバーのメンタルを養うにはうってつけなのかもですなぁ。