コミュ障を治したいなら薬よりも認知療法だ!みたいな話
社交不安を効率よく正すには?
「コミュ障には薬よりも認知療法だ!」って論文(1)がおもしろかったでメモ。
これはノルウェー大学の実験で102人の男女を対象にしたもの。社交不安障害に悩んでいる人だけを集めたみたい。
社交不安障害ってのは、その名のとおりコミュニケーションを必要以上に恐れちゃって、
- 初めての人との会話
- 結婚式の受付で文字を書く
- 人が多いパーティに出席
みたいな状況で緊張と不安に襲われまくる症状であります。私も軽度の社交不安があるんで、この感覚はよくわかります(かなりマシになりましたが)。
メタ認知療法と抗うつ薬の効果をくらべた
実験では、参加者を4つのグループにわけたんですね。
- メタ認知療法だけを行う
- メタ認知療法+抗うつ薬を飲む(パキシル)
- パキシルだけを飲む
- ニセ薬を飲む
「メタ認知療法」ってのは認知療法の派生バージョンで、患者さんの思考や反応、信念などをメタ認知で徹底的に分析していく方法であります。ACTやスキーマ療法とならんで成績が良いテクニックでして、そのうち詳しい話を書くかも。
1年が経つと認知療法の効果がデカくなる
実験期間は24週間で、治療が終わった直後と1年後に結果を調べたところ、
- 治療が終わった時点では、「認知療法だけ」または「認知療法+抗うつ薬」のグループが、抗うつ薬だけのグループよりも成績が良かった
- ところが治療から1年後の再検査では、「認知療法だけ」の治癒率がもっとも高かった(68%)。ちなみに「認知療法+抗うつ薬」は44%で、抗うつ薬だけだと24%、ニセ薬は4%
みたいな感じだったそうな。年が過ぎるほど、認知療法だけを徹底したグループのほうが成果が出るんだ、と。おもしろいですねぇ。
魚の釣り方を教えよ
なんでこういう結果が出たかと言いますと、
患者のなかには、薬物治療だけに頼ってしまい、認知的な治療に重きをおかないケースが少なくない。薬さえ飲めば健康になれると思っているのだ。
(中略)
薬による治療は、患者にとって大事な体験をカモフラージュしてしまう。ちゃんとしたテクニックを学ぶことで、誰でも不安を自分でコントロールできるようになるのだ。
とのこと。薬を出されると、それに頼り切りになっちゃって、自分のマイナス面に対処する方法を学ばなくなっていくんだ、と。 なんだか「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」って格言を思い出しますね(笑)
念のためですが、この研究者も薬を否定してるわけじゃありません。深刻な社交不安障害は死につながるケースもあるんで、そんなときに抗うつ薬を使うのは十分にアリ。あくまで薬に依存させるなって話です。
そんなわけで、「他人と話すのが怖い!」とか「パーティに行けない!」みたいな方は、まず「自動思考キャッチトレーニング」から始めてみるのをオススメします。すべての認知療法の基礎になるトレーニングですんで、ダマされたと思って1カ月ぐらい試すのが吉。