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メトホルミン、健康体でも飲むべきか飲まざるべきか?問題

Met

 

メトホルミンに関するご質問をいただきました。

 

鈴木さんと同じ年の男です。友達がメトホルミンを飲み始めまして、「これなら運動しなくても長生きできるんだ」などと言っています。それは言いすぎでしょうけれど、最近はメトホルミンが癌やコレステロールに効くのような記事も見かけてやはり気になっています。どう思われますでしょうか?

 

とのこと。メトホルミンってのは糖尿病を治療する定番のクスリで、もし糖尿と診断されたら必ず対策の第一候補に上げられるぐらい有効性が高い逸品であります。

 

 

メトホルミンはどこまで信頼できる?

が、当ブログでもいくつか取り上げたとおり、「メトホルミンを飲んで運動したら体力が増えまくった」なんて話があったりして、近ごろは「どんな病気にも効く万能薬かも?」ぐらいに言われてるんですよ。

 

 

というと怪しさバツグンですけど、実際はさにあらず。2016年には、FDA(アメリカ食品医薬品局)が「メトホルミンで長生きできるかどうか実験していいよ」って許可を出したレベル。これはFDAの長い歴史のなかでも初めてのことで、それぐらい期待に足るデータがあるってことなんですね。

 

 

そのメカニズムはまだ謎が多いんですが、確実にわかってるのは、メトホルミンに「AMPK」に働きかける作用があるとこ。AMPKは細胞内の燃料センサーみたいな酵素で、全身に活を入れる働きをしております。くわしくは「アンチエイジングのカギを握る重要ポイント「AMPK」入門」をどーぞ。

 

 

ってことで、いろいろ期待の多いメトホルミンですが、「若返り」や「ダイエット」の効果については2015年にまとめてますんで、ここではそれ以外の話でも。

 

 

メトホルミンの凄そうなとこ

1.癌に効くかも? 

メトホルミンで癌が治る!みたいな話は、おもに糖尿病の患者さんを対象にした観察研究(1)から出てきたものです。30万以上の患者さんをおよそ8年にわたって調べたら、メトホルミンを使った場合は癌の死亡率がやたらと低い傾向がみられたんですな。

 

 

この後にも、糖尿病の患者さんと健常者をくらべてみたら、メトホルミンを飲んでた患者さんのほうが、健常者より2倍も肝臓癌の発症率が低かった、なんて報告が出てたりします(2)。通常、糖尿病にかかると癌の発症率は激増しちゃうんで、これはなかなか衝撃的な数字かと。

 

 

この傾向は2012年のメタ分析(3)でも確認されてて、メトホルミンを使った糖尿病の患者さんは、肺癌、膵臓癌、乳癌などの発症率が50〜85%も下がるんだそうな。これまた凄い数値ですねぇ。

 

 

が、いっぽうでは否定意見もあったりして、2015年のレビュー(4)だと、およそ8万人ぶんのデータを再調査したらメトホルミンが癌に効くって証拠は見つからなかったとか。完全に真逆の結果になってるんで、おそらくどちらかの研究にバイアスがあるんでしょうが、いまのところはまったく不明。希望はあるかなー、ぐらいのレベルですかね。

 

 

2.悪いコレステロールに効くかも? 

癌にくらべると研究例は少ないものの、メトホルミンで悪玉コレステロール が改善!みたいな報告もちょこちょこ出ております。

 

 

たとえば2015年にドイツで行われた研究(5)だと、メトホルミンを使った患者さんのAMPKが活性化して、LDLコレステロールの低下が見られたりとか。古い臨床試験(6)でも、健康体の男女24人にメトホルミンを飲んでもらったら、やっぱりLDLが減ってたとか。

 

 

そのへんをひっくるめた3000人分のメタ分析(7)だと、とりあえずLDLコレステロールには効くけど、中性脂肪や血圧なんかには意味がないっぽい。そう考えると、わざわざメトホルミンを飲むほどではないかな…。

 

 

3.EDに効くかも? 

こちらはさらに研究例が少ないんですけど、「メトホルミンEDが改善!」って報告もあったりします。具体的には、肥満体で糖尿病の患者さん43人に1日2000-3000 mgを飲んでもらったら、1年でEDが優位に改善してたりとか(8)。

 

 

ほかにも、シルデナフィルが効かなかった患者さんにメトホルミンを2〜4ヶ月ほど飲んでもらったら(9)、そこそこEDがやわらいだりとか。まぁこの実験だとメトホルミンで消化器系に不快感が出てたりもするので、完全にメトホルミンおすすめ!とも言いづらいのですが。

 

 

メトホルミンの副作用っぽいとこ

1.乳酸アシドーシスが起こるかも

乳酸アシドーシスは、血中の乳酸値が異常に上昇しちゃって、体がショック状態におちいっちゃう状態のこと。ヘタをすれば死にもいたりかねない大問題であります。

 

 

いちおうメトホルミンによる乳酸アシドーシスの発生率は低いんですけど、

 

  • なんらかの感染症にかかっている
  • 腎臓や肝臓の調子がよくない
  • 酒をよく飲む
  • お年寄り

 

 といった条件下にある方はリスクが大きいのでご注意ください (10)。 

 

 

2.ビタミンB12不足が起こるかも

乳酸アシドーシスより起きやすいのが、メトホルミンによるビタミンB12不足であります。その原因はハッキリしないものの、おそらくメトホルミンがビタミンB12の吸収をブロックしてるんじゃないか、と考えられてたりします(11)。

 

 

2006年の報告(12)だと、メトホルミン利用者の30%にビタミンB12不足が確認されたとか。ビタミンB12は良質な睡眠や神経系の働きに欠かせない栄養素で、不足した場合は貧血が起きたり頭がうまく働かなくなったりして、もう大変。メトホルミンを飲むときは、あわせてビタミンB12のサプリは必須かも。

 

 

3.認知機能にダメージがあるかも

個人的に一番怖いのがこれ。2012年に出た研究(13) によれば、7000人のアルツハイマー患者さんを10年にわたって追っかけたところ、メトホルミンの治療を受けてた人ほどアルツハイマーが悪化する確率が高かったそうな。

 

 

ただ、これは上で挙げた「ビタミンB12不足」が原因である可能性が高くて、126人の糖尿病患者さんを対象にした実験(14)だと、ビタミンB12サプリとメトホルミンを併用した場合は、認知機能の低下がみられなかったとのこと。メトホルミンが間接的に脳にダメージをあたえてるかもしんないわけですね。

 

 

まとめ

というわけでいろいろ書いてきましたが、個人的な感想としては「とりあえずFDA認可の試験が終わってから考えても遅くない!」って感じです。おそらく、あと6〜7年ぐらいで結果が出るはずなんで、質問者さんの場合は50代の手前ぐらいで服用を決めればいいんじゃないかと。

 

 

それでも「オレは可能性に賭けたい!」というときは、

 

  • とりあえず酒とは飲まない
  • 体内に激しい炎症が起きてるときも飲まない
  • 定期的に体内のビタミンB12レベルをチェックしておく

 

ぐらいを守っていただければ良いのではないかと。私の場合は、長期実験の結果待ちつつAMPKの活性化にはげむつもりですが、もしその間に癌にかかった場合は標準治療とセットで試してみるかもしれません。

 


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