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ボキャブラリーを増やすだけでもあなたのストレスは激減する!「How Emotions Are Made」

Emotion

  

感情はいかに作られるかHow Emotions Are Made)」って本を読んだりしております。著者のリサ・フェルドマン・バレットはノースイースタン大学の心理学者さんで、最近の感情研究を手際よくまとめてくれてるナイスな一冊。

 



 感情知性を育てる方法

全体的には「そもそも感情ってなんだ?」って問題に関する細かい議論が展開してくんですが、ここでは、そのなかから「感情知性の育て方」に関する部分だけまとめとこうかと。感情知性ってのは、

 

  • 自分と他人の感情がよく理解できる
  • 自分の感情をコントロールできる

 

みたいな能力を指してまして、「自己認識」とか「セルフコントロール」とか「モチベーション」とか「共感力」とか、そのへんすべてに関わってくる能力。2007年のメタ分析(1)なんかを見ると、感情知性が高いほど健康的だよ!みたいな結果が出てて、それなりに信頼できそうな感じがいたします。

 

 

まぁ「感情知性」は批判も多い概念で、「そもそも計測法があいまいじゃない?」みたいな問題もあったりはします。といっても、とりあえず「自己認識」や「セルフコントロール」が重要なのは間違いないので、一般レベルでは「感情知性は重要!」と思っといてよいかと。

 

 

さて、本書が主張する「感情知性」の育て方はと言いますと、

 

 

 1.感情の粒度を上げる

感情の粒度ってのは、「自分の感情をどこまで詳しく表現できるか?」ってことです。たとえば、

 

  • 粒度が低い=「気分がいい!」「気分が悪い!」の2択ですべてを判断
  • 粒度が高い=「駱駝に乗って、広い沙漠を行くような、頼りない空虚な思い(林芙美子 )」みたいに細かく自分の感情を説明できる

 

みたいな感じ。博士いわく、

 

「素晴らしい」という感情をさらに細かく分類できれば(幸福、満足、リラックス、喜び、希望、興味深い、誇りに満ちた、愛らしい、祝福などだ)、そして「ヒドい」という感情をさらに細かく分類できれば(怒り、悩む、警戒、嫌悪、不機嫌、後悔、陰鬱、屈辱、不安、憤慨、怖い、妬みなどだ)、あなたの脳は、目の前の状況をより正確に理解し、正確にカテゴライズできる。その結果、あなたはより柔軟で建設的な反応ができるのだ。

 

とのこと。確かに、「最高!」と「最悪!」の二択で世界を見てたら、対応も雑になっちゃうでしょうからねぇ。 

 

感情知性を得る鍵は、感情に対する新たな考え方を手に入れ、自分の感情への感覚を磨き上げることだ。

 

ってことで、別に林芙美子レベルで感情を表現しようとは言いませんが、とにかく感情を細かく認識するのが大事。

 

感情の粒度が高い人は、人生の満足度が高まるだけではない。様々な研究によれば、自分の不快な感情を細かく区別できる人は、そうでない人にくらべて30%も感情のコントロールが得意で、ストレスが大きい状況でも飲酒に逃げたりせず、自分を傷つけた相手に攻撃的な対応を取ることもない。 

 

 このへんについては、以前にも当ブログで「幸せになりたきゃ『感情の解像度』を上げてみようじゃないか」って話を書いてますんで、こちらも合わせてどーぞ。

 

 

2.ボキャブラリーを増やせ!

では、具体的に感情の粒度を上げるにはどうすればいいの?って話になるわけですが、バレット博士の解答は明解であります。

 

おそらく、メンタルヘルスを養うためにボキャブラリーを増やそうと考えたことがある人は少ないだろう。しかし、これは神経科学的に十分な意味がある。「単語」はあなたの脳に新たな概念の種を植え付ける。そこから育った概念は、あなたに予測力を与えてくれる。予測力はあなたの身体が必要とするエネルギー量を調整してくれる。そして、調整された体のエネルギーは、あなたがどう感じるかを決める。

 

より多くのボキャブラリーを磨き上げるほど、あなたの脳がエネルギーを予測する能力は高くなる。実際の研究データをみても、感情の粒度が高い人ほど病気にならない傾向があり、病気になっても回復までの時間が短い。

 

 ちょい難しい表現ですが、つまりは、

 

  1. 感情の粒度が低いと、不快な感情を「ムカつく!」とだけ表現
  2. 自分の感情が「怒り」なのか「悲しみ」なのか「恐れ」なのかわからないため、脳がムダにいろんな対策を取ろうとしてストレスがアップ
  3. ストレスが増えるので健康を崩す

 

みたいな流れです、ボキャブラリーを増やすと感情のコントロールがうまくなり、おかげで長期的には体にもいいわけっすな。

 

 

このあたりは「幸せになりたきゃ『感情の解像度』を上げてみよう」のアドバイスと同じで、いろんな小説を読んで感情の表現法を学んでみると吉。そして、小説から学んだ表現法は、さっそく自分の感情を表すために使ってみるとさらに吉。最近の本でいえば、「感情ことば選び辞典」とか「感情類語辞典」などを読んでみるのもよろしいのではないでしょうか。

 

 

 

3.自分で言葉を作ろう!

いくらボキャブラリーを増やしても、「なんかしっくりこないなー」と思っちゃう場面はあるもの。そんなときは脳が頑張って問題を概念化しようとしてる証拠なので、自ら適した言葉を作っちゃうのも吉であります。

 

 

たとえば外国語には「日本語にはない感情」を表す言葉がいろいろありまして、「初対面なのにいい人だ!」と思ったときの感情をハンガリー語では「シンパティクシュ」と言ったりします。こんな感じで、好きなように言葉を作っていっちゃえばいいわけですな。

 

 

このへんについて参考になるのは「翻訳できない世界のことば」って本で、日本語では一言で表現できない単語がいろいろ出てて楽しいです。普通に暮らしてると日本語で表現できる範囲の世界観になれちゃうんで、この手の本で概念をグラつかせてみると楽しいのではないかと。

 

 

まとめ

そんなわけで、感情知性をあげたきゃボキャブラリーを増やそうぜ!ってお話でした。ここらへんはマインドフルネスの世界でいう「思考のラベリング」にも通じる話で、やはり何事も明確化させるのが大事だなーとかあらためて思った次第です。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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