効果が高い抗うつ剤トップ5、効果が低い抗うつ剤ワースト5
どの抗鬱剤がベストなのか?
「抗うつ剤ってどこまで効くの?」って問題については賛否があって、全体の5割ぐらいにしか意味がないんじゃないの? みたいに言われてるわけです。なんせ鬱病の原因がまだはっきりしてないんで、その効果もあいまいにならざるを得ないんですな。
そんな状況下、「結局どの抗鬱剤がベストなのか確かめたぞ!」って論文(1)がランセットに出まして、非常にいい感じです。
これはロンドン大学の研究で、過去に行われた抗鬱剤の実験から質が高い522件をまとめたもの。116477人のデータをもとに、21種類の抗鬱剤から「もっとも効くのは何なの?」ってところを徹底的に調べたメタ分析になっております。この手の研究は初でして、ようやく信頼性が高いまとめが出てきたのはありがたいっすね。
もっとも効果的な抗鬱剤トップ5
で、まずは大きな結論からいうと、
- すべての抗鬱剤には、少なくともプラシーボ以上の効果があった
って結論です。とりあえずは、どれを飲んでも何も使わないよりはマシなのだ、と。抗鬱剤の効果は個人差が大きいんで「飲んでおけば間違いない!」とは言えないものの、とりあえずはホッとする結論じゃないかと。
それでは、なかでも高い効果が確認された成分が何かと言えば、
- アミトリプチリン(トリプタノール、ラントロンなど)
- アゴメラチン(Valdoxanなど)
- エスシタロプラム(レクサプロなど)
- ミルタザピン(レメロン、リフレックスなど)
- パロキセチン(パキシルなど)←ただし副作用の発生率も高い
みたいな感じ。意外と昔ながらの成分も多いですね。
あんま効果がない抗鬱剤ワースト5
続いて、もっとも効果が低いことがわかったのが、
- フルオキセチン(プロザックなど)
- フルボキサミン(ルボックス、デプロメールなど)
- レボキセチン ←まったく効果がないとするメタ分析もある(2)
- トラゾドン(デジレルなど)
だったそうな。ここら辺は割と納得のラインナップと言いますか。
ってことで、抗鬱剤の効果の違いは以上ですが、この研究はいくつかの注意点がありまして、
- あくまで大鬱病への効果しか調べてないんで、不安とかでも同じなのかは不明
- 新発売の薬ほどプラシーボ効果が出やすいので、新しい抗鬱剤ほど効果が大きく出てる可能性はある
- たいていの実験は8週間ぐらいなんで、長期的にはどうなのかは不明
といったところ。あくまで参考までにって感じでお願いします。
研究者いわく、
抗鬱剤の利用は、ときどきネガティブな行為だとみなされたり、他のセラピーが効かなかったときだけに使うものだと思われたりする。しかし、そのような考え方は、メンタルヘルスの問題にとって不幸なことだ。
とのこと。もちろん認知行動療法などとの併用は必要でしょうが、あんま辛いようだったら、今回のデータをもとに試してみるのが基地。