今週半ばの小ネタ:オブジェクトラベル学習法、フェイクニュースとニセの記憶、メンタルとIQ
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
効率よく記憶したいならオブジェクトラベル学習法だ!
まずはカリフォルニア大学の研究(R)で、「効率よく記憶したいならオブジェクトラベル学習法だ!」って内容になってます。
オブジェクトラベル学習ってのは、ひとことで言っちゃえば、
- まずモノを見た後で解説を聞く!
って順番でものごとを覚えるやり方です。たとえば、英語の「Red」って単語を覚えたいときには、
- 「Red」って単語を学んでから「赤い色」を見る
ってやり方じゃなくて、
- 「赤い色」を見てから「Red」って単語を学ぶ
のがオブジェクトラベル法になります。最初にオブジェクト(赤い色)を認識してからラベル(Red)を学ぶから、この名前がついたわけですね。
この実験では、研究チームが「yosh」や「wug」といった架空の単語を作りまして、その意味を被験者に記憶させる形で行われております。すると、普通に単語の意味を覚えたグループよりも、オブジェクトラベルで覚えたグループのほうが、単語を正確に使うことができるようになったんだそうな。
なんでオブジェクトラベルのほうがいいのかはよくわからんのですが、「モノ→名前の順に覚えたほうが脳内で情報が結びつきやすくなるのでは?」と推測されてます。これから英単語や地名を覚えるときなんかは、まずその物体やイメージから先に接したほうがいいかもですねー。
フェイクニュースは人間にニセの記憶を植え付ける
続いてはUCCなどによる研究(R)で、「フェイクニュースは人間にニセの記憶を植え付けるのだ!」っていう怖い結論になっております。人間がフェイクニュースに超弱いのは周知の事実ですが、実は誤った記憶を脳に埋め込む働きもあるんじゃないか、と。
これは 3,140人を対象にした研究で、堕胎罪を認めるかどうかの国民投票が行われる1週間前に実施されたそうな。具体的にどんな実験だったかというと、
- 参加者たちに、堕胎罪に関する”本物のニュース”を4本読んでもらい、同時に”ニセのニュース”も2本読んでもらう
- その後、参加者たちに「いま読んでもらったニュースに聞き覚えがありましたか?」と尋ねる
みたいな感じになってます。すると、おおよそ半数の人はフェイクニュースのことを「よく知ってる!」と答えちゃったんだそうな。
さらにこの実験では、
- 自分の意見に都合がいいフェイクニュースほど、ニセの記憶を生み出しやすい(つまり、堕胎罪に賛成の人ほど「堕胎罪は正しいのだ!」ってフェイクニュースに反応する)
- なかにはフェイクニュースには書いてなかったことまで「思い出した!」と答えた人も結構いた
- 後から「これはフェイクニュースですよ」と伝えても、ほとんどの人は「いや!絶対に聞いた記憶があるんだ!」と言い張り続けた
といった傾向も確認されたとのこと。人間の記憶があてにならないって話はよく聞きますけど、フェイクニュースでもねじ曲げられちゃうもんなんですねぇ……。
メンタルを病まないためにもIQは必須!
最後はローザンヌ大学の研究(R)で、「メンタルを病まないためにもIQは必須!」って内容になってます。
こちらは1,091人の高齢者を対象にした調査で、全員が70歳から79歳になるまでの変化を追いかけたもの。定期的に全員のIQをチェックしつつ、うつ病の発症率と比較したんだそうな。
それで、どのような現象が確認されたかと言いますと、
- IQテストの成績が下がるごとに、うつの発症率が増加する傾向があった!
- ただし、うつ病が悪化したからといって、IQが下がるわけではなかった
だそうです。つまり、IQの低下によってうつ病が引き起こされる可能性が高いんだよ!ってことですね。
IQとメンタルに相関がある理由はハッキリしないものの、おそらくは抽象的な思考がしづらくなるからかもしれません。抽象思考ができないと他人との会話に困るケースが出てきますんで、それだけコミュニケーションの不全が起こり、最終的にメンタルが低下していくのかなー、という。
いずれにせよ、過去にはワーキングメモリの性能がメンタルヘルスに大事って話も出てましたし、頭の回転が精神の働きに欠かせないのは確実なんで、注意しときたいとこですねー。