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「ツボ」ってなんなの?本当に押すだけで病気が改善するの?問題

 

鍼治療って意味あるの?」みたいな議論は昔からあって、いまのところは、

 

  • 鍼治療の立場はかなり悪い(つまりプラシーボ効果しかなさげ)
  • ただしまだ厳密な実験は少ないので、まだ希望がなくなったわけでもない

 

ぐらいのところに落ちついてるかと思います。まぁ個人的には鍼治療を受けようとは思わないなーぐらいの感じ。

 

 

で、また鍼の効果とは別によく言われてきたのが「ツボってなんなの?実在するの?」みたいなことでしょう。鍼とかお灸の世界で「頭痛に効くツボ」とか「疲れに効くツボ」とか言われる、アレですな。ちょっと検索すると「ツボの存在はWHOも認めてる!」みたいな話も出てきますけど(R)、なんだか怪しい気もするわけです。

 

 

といったところで、新たに「ツボが実在するのかガッツリ調べてみたぞ!」って内容のレビュー(R)が出まして非常に参考になりました。

 

 

これはシドニー工科大学が行なった系統的レビューで、過去に行われた771件のツボ研究をまとめて、その信頼性やら正確性をあらためてチェックした内容になってます。最終的にスクリーニングで残ったのは14件で、そのうち9件が「ツボって本当にあるの?」って問題を調べてて、残り5件は「ツボの計測法って妥当性があるの?」ってところを調べてくれてます。

 

 

では、細かいところは飛ばして、まずはもっとも重要なポイントを引用すると、

 

ツボの位置については、プロの鍼灸師のあいだでもかなりの違いが見られた。資格のない鍼灸師については、そもそもデータがないためなんとも言えない。また、ツボの位置を探り当てる方法(骨の位置を基準にしたりとか)にも、検討したすべてのデータで食い違いが見られた。

 

ってのが大きな結論になってます。プロの鍼灸師でもそれぞれ「ここにツボがある!」って主張がバラバラだし、ツボがどこにあるかを判断する方法にも統一した見解がないんだってことですね。

 

 

もちろん、鍼灸師の意見が違うからといって「ツボなど存在しない!」とは断定できないわけですが、これだけ歴史があるのに統一見解がない時点でかなり状況は厳しいっすね。シンプルに考えれば、「みんな確証もなく鍼を刺してるだけでは?」って気にもなるわけです。

 

 

言われてみれば、そもそもヒトの神経系の構造って個人で結構なバリエーションがありますし、体の左右でも違いがあるぐらいなんで、万人の共通するようなツボがあったとしても、その位置はバラバラになるだろうなーとは思うわけです。まぁ「いや!ツボは神経とは関係ない!気の流れなのだ!」とか言われたらもはや何もできませんが。

 

 

ちなみに、「それじゃあ『WHOがツボの位置を国際統一した』って話はなんなの?」って疑問もわくわけですけど、あれは鍼灸の専門家だけが集まって「とりあえずみんなの意見をまとめよう!」としただけで、別に科学的にツボが認められたわけじゃなかったりします。

 

 

実際のところ、WHOのレポート(R)にもこんなことが書いてあります。

 

鍼治療によりどんな効果が得られるかは、それぞれの主張の正当性をチェックしないことには何も言えない。現時点で、正式に意見の一致をみたリストは存在しない。

 

というわけで、いまんとこWHOも認めたわけなさそうっすね。とりあえず鍼治療については遠巻きに見ておくだけにしとこうかと思う次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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