人工肉、体に良いのか悪いのか問題
人工肉のマーケットがいよいよ本格化してまして、つい最近も「ビヨンドミートが上場した!黒字化した!」なんてニュースが流れておりました。ビヨンドミートってのは豆類のタンパクから作った人工肉なんですけど、牛肉の分子構造をベースにしてて、かなり実際の肉に近い味わいを再現してるらしいんですな。食べてみたい……。
で、こうなると「人工肉は体に悪くないのか?」ってのが気になるわけですが、ビヨンドミートが健康におよぼす影響を調べた実験(R)の結果が報告されておりました。ビヨンドミートは植物由来だとはいえ、NOVAの食品分類システムだと超加工食品に分類されるんで、「もしかしたら健康によくないのでは?」って疑問は当然出てくるわけです。
ってことでチームは、21~75歳の健康な38人の男女を集めて、
- ビヨンドミートを食べる
- 動物由来の食肉を食べる(ソーセージ、赤身肉、鶏胸肉のミックス)
って2パターンの食事を割り当てたそうな。試験期間は8週間で、そのあいだに第1グループは植物性食→動物性食の順番で食べ、第2グループはその逆で食事をしたらしい。
ビヨンドミートと動物肉の栄養プロファイルはほとんど同じだったんですけど、
- ビヨンドミートのほうが食物繊維が多く、飽和脂肪酸の量が少ない
って2つのポイントだけが異なっていたとのこと。ちなみに参加者はみんな普通に肉を食べてきた人たちで、ベジタリアンは含まれていなかったそうな。
それでどんな変化が起きたかと言うと、以下のような感じです。
- 動物肉を食べたときよりも、平均してビヨンドミートのほうが43%ほどTMAOレベルが低かった
- TMAO濃度は、動物→植物の順で食べたグループ(-63%)でのみ低く、植物→動物グループ(-24%)は統計的に有意ではなかった
- 空腹時IGF-1、インスリン、グルコース、血圧については目立った違いがなかった
- 介入の順序とは無関係に、ビヨンドミートを食べている間にはLDLコレステロール(-9%、または-11mg/dL)と体重(-1%)の減少が確認された
「TMAO」って言葉はよく知らない人が多いかもしれませんが、これは動物の肉などを食べると増える物質で、おもに心臓や血管系の病気リスクを爆上げすると言われております。くわしくは「恐怖の物質「TMAO」に立ち向かうにはどうすればいいいのか?問題」などをどーぞ。
まぁTMAOと心疾患リスクについてはまだ研究レベルが初期段階ですし、近ごろは「TMAOで病気になるんじゃなくて、病気のせいでTMAOが増えるのでは?」って見解もあるんで、そこらへんはご注意ください。ただ、基本的には、いくつかのメタ分析(R)で「TMAOが10μM増えるごとに全死亡リスクが7.6%上がる」って傾向が確認されてますんで、やはり気にしておくべきではありましょう。
ひるがえって今回のテストでは、動物肉を食べた参加者は平均で3.5μMほどTMAOレベルが上がってるんで、やっぱ動物性の肉には難点もあるよなーとか思うわけです。LDLコレステロールの変化にしても、この違いが長期的に続くとすれば、ビヨンドミートは心疾患リスクを6%ぐらい減らすんじゃないか?とも考えられますね(あくまで仮定の話ですが)。
ちなみに、この研究にはいくつかの難点がございまして、
- クロスオーバーなのにウォッシュアウト期間が設定されてない
- 参加者のあいだで結果のバラつきがすごい(TMAOがめちゃくちゃ増えた人がいれば、全く増えなかった人もいる)
ってあたりを考えると、まだまだビヨンドミートの効果には謎が残るとこです。
そんなわけでいろいろと問題を残しつつも、現時点では「人工肉は食べても安全そうだし、どころか心臓病リスクを下げる可能性もある!」って結論でして、個人的には「食べてみたい!」って印象を強くしましたね。