運動量を増やすとNEATが下がって無意味になっちゃう人が意外と多い問題
「不老長寿メソッド」では、一貫して「NEAT」の重要性を指摘しております。
NEATってのは掃除や通勤などの日常的な身体活動で使われるカロリーのことで、シンプルに言えば「エクササイズで消費されるエネルギー以外」はすべてNEATに分類されます。なんせNEATは日常の消費カロリーをかなり左右しまして、とりあえず運動よりもNEATに注目した方が健康レベルは高くなるもんですから。
で、ここで「不老長寿メソッド」では触れなかったポイントとして、
- 運動するとNEATが下がりがちな人が多いんじゃないか?
って問題であります。運動をしたせいで気が緩み、総合的な消費カロリーは変わらないなんてことがあるのではないか、と。
この疑問を解くために、ダヌンツィオ大学がおもしろい実験(R)をしてくれておりました。これは女性34名を対象にした研究で、みんなに13週間の運動プログラムに参加してもらったそうな。どんなプログラムだったかと言いますと、
- 最初の1ヶ月間は、1回40分のウォーキングを週に4回やる(15点満点のRPEで11点ぐらいの負荷)
- 2ヶ月目は、1回50分のウォーキングを同じ強度で週に4回を継続
- 最後の1ヶ月間は、1回50分のウォーキングをRPE13の負荷で週に4回を続ける
みたいになってます。RPEで11〜13点だから、ウォーキングとはいえそこそこ辛いレベルのエクササイズですね。
でもって、13週間のプログラムの開始時と終了時に、平日2日と週末1日の身体活動量を測定。さらには総コレステロール、中性脂肪、エストラジオールなどを計測したところ、結果はこんな感じになりました。
- トレーニングのおかげで、参加者の体重、心拍数、収縮期血圧、体力などのいろんな数値が改善した
- ただし、これだけ運動したにもかかわらず、1日の総エネルギー消費量または身体活動エネルギー消費量に有意な変化は見られなかった
ということで、週に200分の運動を追加したにも関わらず、最終的な消費カロリーはさほど変わらなかったんだそうな。もちろん心拍や体重は変化してるので運動のメリットは出てるものの、これだけエクササイズしても減量にはつながらなそうですね。
で、なんで運動を増やしたのに総消費カロリーが同じなのかを詳しく調べてみたら、
- 一部の女性は、定期的な運動を行うことによりNEATが激減していた
- NEATの違いによるカロリー消費量の差は、運動をしている日で「722 vs 441kcal」で、運動をしない日で「537 vs 238kcal」だった
- NEATが激減したグループには、コレステロールの改善が見られなかった
って違いが確認されたんだそうな。「エクササイズをしてるんだから普段は動かなくてもいいよねー」と思っちゃう人が一定数いて、そのせいでせっかくの運動メリットが得にくくなっちゃうケースがあるわけっすね。
もっとも、運動のせいでNEAT が低下した人と低下しなかった人がいる理由はよくわかっておらず、なかには無意識のうちにNEATが低下している人もいれば、意図的に活動量を下げた人もいたらしい。おそらく「他の日に運動したから休みの日はリラックスしよう」とか無意識に思っちゃうのかなーって気はしますが。
ちなみに研究チームいわく、
減量の面から言えば、運動は毎日のエネルギー消費量を増やすためのツールにすぎない。例え運動をしても、休みの日の活動量が落ちれば、それは運動のメリットを下げてしまうこととなる。こと体重管理については、運動中だけではなく、24時間でどれだけのカロリーを消費しているかに焦点を当てるべきだ。
とのこと。非常に当然のアドバイスではあるんですが、「今日は運動したな!」と思うと、ついその後の日常的な活動量を下げちゃうのが人間ですからねぇ。
まー、この研究については、トレーニングプログラムの開始時と終了時にしか計測をしてないし、食事の摂取量についてもあくまで自己申告なので、そこらへんに不正確さが残るところではあります。もっと違う運動ならまた別の結果が出るかもしれませんしね。
ただ、日々エクササイズに邁進していても、NEATを下げちゃったらもったいないのは事実なんで、意識しといた方がいいでしょうなぁ。