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今週半ばの小ネタ:免疫は性格に左右される、腸内細菌と新型コロナ、高血糖と脳ダメージ

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

免疫システムが健康な人の性格はこれだ!みたいな観察研究

新型コロナのせいで、「免疫」の重要性が改めてクローズアップされた昨今。今度は「免疫システムが健康な人の性格特性はこれだ!」ってデータが出ておりました(R)。

 

 

どんな研究だったかと言いますと、

 

  1. 957人の健康な男女を集めてビッグファイブをチェック
  2. 全員を14年間追いかけて免疫の働きを調べる

 

みたいになってます。性格の違いによって体内の炎症マーカー(IL6など)のレベルも違ってくるのかどうかをチェックしたわけっすね。

 

 

その結果について研究チームいわく、

 

誠実性が高い人ほど免疫システムが健康で、特にインターロイキン6と呼ばれる生物学的マーカーのレベルが低いことがわかった。政治性の高さが長生きと結びつく理由の一部は、免疫システムが正常に働いている結果かもしれない。

 

とのこと。「誠実性が高い人ほど免疫が健全だ!」ってことで、性格と寿命の相関についてくわしい人には、予想どおりの結果かもしれないっすね。

 

 

念のためおさらいしておくと、誠実性は「ものごとをコツコツやる」とか「整理整頓が好き」といった特性のこと。いわゆるマジメなタイプですね。

 

 

誠実性と寿命の関係は昔からよく言われてて、たとえば一部の研究では、

 

  • 誠実性が高い人は平均して2~4年長生き

  • 逆に誠実性が低い人は、高い人より早く死ぬリスクが40%高い

 

みたいな傾向が確認されてたんですよ。これは「誠実性が高い人ほど運動するし、喫煙や飲酒もしないからでは?」と言われてきたんですが、これに加えて免疫システムの健全さも関わってるんじゃないか?って考え方が出てきたわけですね。

 

 

なんで誠実性と免疫が結びつくのかは謎ですけど、先行研究だと「誠実性が高いとストレスが低い」みたいな知見も出てますんで、そのせいで免疫システムが暴走しづらいんかなーとか個人的には思っております。

 

 

 

腸内細菌のバランスが崩れると新型コロナが長引く?

続いても免疫システムに関わる話で、「新型コロナの症状が長引くケースでは腸内細菌のバランスが崩れてるのでは?」といった仮説が提唱されておりました(R)。

 

 

新型コロナに感染した人のなかには、一部に症状が続く人がいて、何ヶ月も疲労感、関節痛、息切れに苦しむケースもあるんであるよ。このメカニズムに腸内環境が関わってるのでは?みたいな話ですね。

 

 

この研究では、

 

  1. 入院中のCOVID患者100人と、COVIDに未感染の成人78人に協力を頼む

  2. 全員の血液と便のサンプルを採取して違いを確認

 

のように両グループの差を調べてみたんだそうな。すると、COVIDの患者さんには腸内細菌の違いが見られまして、

 

  • 未感染の人よりもRuminococcus torques(ALSとの関係がよく指摘される菌)やBacteroides dorei(呼吸器疾患との関係がよく指摘される)が多い
  • 逆にFaecalibacterium prausnitzii、Eubacterium rectale、Bifidobacterium adolescentisの量が少ない(どれも免疫システムに有益だと言われている菌)
  • 特に重症な患者ほどBifidobacterium adolescentisやFaecalibacterium prausnitziiが少なかった(どれも抗炎症作用と結びつけられている菌)

 

って感じだったらしい。確かに、こうして見ると腸内細菌のアンバランスが原因で炎症が悪化し、時に過剰反応してサイトカインストームにつながるのかも?って感じはしますね。

 

 

もちろん小規模なテストなんでどこまで重要なファクターなのかはわからんのですが、腸内環境と免疫の関係はよく知られてますんで、いかにもありそうな話だよなーとは思いますねぇ。

 

 

 

高血糖はどこまで脳に悪いのか?を調べた菅さゆ研究の話

高血糖が体に良くないのは当然で、脳にも大きなダメージを与えるわけです。では、具体的にどれぐらいよろしくないのかってことで、50万人の人の脳を約4年にわたって追跡したデータ(R)が出ておりました。定期的にみんなの血糖値を報告してもらいすつつ、脳スキャンで脳の構造なんかも調べたらしい。

 

 

では、その結論をざっと見てみましょうー。

 

  • 血糖値が高い人は血管性認知症のリスクが54%高い

    • ついでに認知機能低下のリスクも42%高い


  • 脳スキャンでは、高血糖な人ほど海馬(記憶力に欠かせないエリア)が小さかった

    • ついでに脳の白質へのダメージも大きかった

 

ということで、非常に恐ろしいことになっておりました。高血糖と認知機能の低下はよく言われてましたが、なかなか高い数字が出てますねー。とりあえず、血糖値が高めな方は早急に減量と野菜の増量を推奨ってことで。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。