男性ホルモンがバリバリだと金持ちになれる!は本当なのか?問題
テストステロンは大事だよ!って話は昔から書いてまして、かつては「わたしのテストステロン値が最低だったときに起きた7つのヤバい症状」なんて話も紹介したことがありました。
で、これに関連してよく言われるのが「テストステロンを高めると社会で成功するのでは?」みたいなポイントです。男性ホルモンが高い人ってのは自信満々だったり攻撃性が高かったりするんで、それが厳しいビジネスの世界を駆け上がるのに役立つんじゃないか?って考え方があるわけですね。事実、「男性ホルモンが増えるとモテやすくなるんじゃないか説」なんてのもありまして、あり得なくはない話かなーって気がするんですよ。
それでは実際はどうなのかってことで、「男性ホルモンが多いと成功するのか?問題」を調べた研究(R)が出てました。
この研究はイギリスで行われたもので、30万人以上のデータをベースに「テストステロンが多い人は本当に経済的に豊かなの?」を調べた内容になってます。まずはその結論から申し上げますと、
遺伝による因果推論の手法を使ったところ、男性も女性も、テストステロンが社会経済的な成果に意味のある影響を与えているという証拠はほとんどなかった。
みたいな感じです。いままでの考え方とは異なり、テストステロンが高いからと言ってもお金を儲けられるわけではないのだ、と。
具体的な研究では、306,248人の参加者を対象にした調査で、みんなの遺伝子および人口統計データを分析。それぞれの収入、仕事、教育レベル、肥満度、リスクをどれだけ取るかといった社会的な要因を調整して、テストステロンと経済的な成功の関係を調べたんだそうな。
ちなみに、この分析では「メンデルランダム化」って手法を使ってまして、過去に行われた類似の研究よりは精度が高くなってます。メンデルランダム化については「食後のインスリンが増えやすい人ほど太るの?問題」で軽く説明してますんで、気になる方はそちらをご参照ください。とにかく今回の研究は、過去のものより信頼がおけるってとこだけ押さえておけば十分です。
で、その結果がどうだったかと言いますと、
- テストステロン値が高い人ほど、経済的に成功していることを示す状況証拠はかなりたくさんある
- ただし、それが本当に因果関係であることを示す証拠は得られなかった
みたいになります。確かに「男性ホルモンが多い=金持ち」みたいな傾向はあるんだけど、実際には他の要因が関係している可能性もかなり高いんじゃないの?って結論です。
これがどういうことかは今後の研究を待つしかないものの、
- テストステロンの量で行動や嗜好の違いを説明できるかもしれませんが、経済的な成功ってことになると他の要因が多いから?
- 実際には「テストステロン増大→成功」じゃなくて「成功→テストステロン増大」って方が正しいのかも?
といった感じのような気がしております。テストステロンは男性らしさの一部に影響を与えるんだろうけど、環境も経済や文化のほうが経済的な成功には同じくらい強い影響を与えてるんじゃないかと。
確かに他のデータを見てみると、金銭的な成功につながる要素としては、
みたいな要素もかなり大事になってきますんで、テストステロンよりもそこらへんのほうが大事っぽいのはわかるところです。とりあえず、男性ホルモンが高くても経済的な成功とは関係なさそうですよーってことで。