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歌で英語を学ぶとボキャブラリーの増強がはかどるぞ!というメタ分析の話

 

外国語を学ぶために歌を使うってやり方は昔からあって、私も中学の頃にサイモン&ガーファンクルを聞かされまくった記憶がございます。それ以降は特に歌で学んだことはないものの、英語への抵抗感はなくなったかなーぐらいの印象でありました。

 

 

といったところで、新たに釜山大学校などの先生方がメタ分析(R)をしてくれまして、「歌で外国語を学ぶのって有効なの?」って問題をガッツリと調べてくれてました。ありがたいですねぇ。

 

 

具体的には、「歌で英語のボキャブラリーを学ぶのは役に立つか?」って問題に取り組んだ先行研究をチェッして、1990年から2020年の間に発表された27の研究から1,864人のデータを抽出して分析してくれてます。つまり、歌でボキャブラリーは増えるか?ってとこに特化していて、文法力とか会話力については考慮されてないのでご注意ください。

 

 

その結果、英語の歌による指導を受けた学習者は、他の学習者よりも多くのL2英単語を習得していることがわかり、非常に有望な結果が得られました。興味深いことに、ポップミュージックのジャンルの曲は、教科書の曲よりもL2語彙の促進に効果的であることがわかりました。ポップスの魅力は、音楽の質の高さと聴衆への親しみやすさにあるのかもしれません。

 

 

でもって、まず大きな結論から並べていくと、こんな感じです。

 

  • 英語の歌を使って学習した人たちは、歌を使わなかった人よりも総じてボキャブリーが増えていた

 

そこまで劇的に違いが出るわけではないものの、やはり英語の歌はボキャブラリーの増強に役立つみたいですなぁ。私はひたすら英単語帳をリピートしたタイプなんで、歌もやっておけばよかったな……。

 

 

また、その他にわかったポイントを並べていくと、

 

  • 子どもよりも大人の方が歌の効果は高い。これは、大人の方が歌を理解する能力が高く、全体的な背景知識が豊富だからだと思われる
  • 英語の歌で勉強する総時間数は、長すぎても短すぎてもいけない(この研究だと、199分から600分ぐらいになっている)
  • 英語の曲はポップミュージックのほうが効果が高くなる(おそらく教科書に載ってるような曲よりも親しみがあるからでしょうな)
  • 中国語やチベット語の話者ほど、英語の歌を理解するのに苦労している傾向が会った。これは、中国・チベット語と英語の間にかなりの言語的な違いがあるためだと思われる(それを考えると、日本語も同じような感じだと思われる)

     

みたいになってます。大人ほど洋楽の効果を得やすいってのはうれしいとこかもしんないですな。また、ほかの研究では、歌はボキャブラリーだけでなく、リスニングスキルと発音の練習にもいいよ!って報告が多いみたいなので、リスニングや発音にお困りの方もお試しいただくといいでしょう。

 

 

研究チームいわく、

 

今回の結果により、英語の歌はレッスンの時間を埋めるためのアクティビティというだけでなく、英語の新しいボキャブラリーを強化する方法として役立つことがわかった。第二言語や外国語の学習教室で歌を使うことで、ボキャブラリーをより効果的に学ぶことができるだろう。

 

とのこと。ちなみに、この研究だと具体的にどうやって洋楽でボキャブラリーを増やすかってとこは紹介されてないんですけど、この調査でピックアップされた研究とかを見てると、普通に歌詞カードで内容をチェックしながら、カラオケみたいに何度も口ずさんでればいいらしい。

 

 

ただ、多くの文献で「適切な歌を使うことが非常に重要だ!」ってのは共通してますんで、そこに気を配るのが一番大事そうであります。要するに、自分の英語のレベルと興味に合った曲を選ぼうって話でして、目安としては「もうちょいで聞き取れそうだなー」ぐらいの曲を選ぶと良いかと思われます。そういえば、かつてエミネムの「Without me」をカラオケで完コピしようとがんばってた事があるんですが、あまりにレベルが高すぎてなんにも身にならなかったことを思い出しました(結局いまでも歌えてない)。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。