今週末の小ネタ:TikTokが脳に悪い?炭水化物とらないと病気に?インスタのナイスボディ写真でメンタルが悪化?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
TikTokがワーキングメモリに悪影響説
「TikTokヤバいかも?」みたいな研究(R)が出ておりました。これは中国で行われた研究でして、なんでも研究チームは「ソーシャルメディアにハマってる人って鬱病や不安症が増えてるよなー」ってのが気になって、あらためてTikTokについて調べてみたらしい。
ざっくりどのような話かと言いますと、
- TikTokを定期的に利用していると中国の高校生3,036人にアンケートを実施
- みんなが普段どれぐらいTikTokを使っていて、TikTokを使えなくなったら禁断症状が起きるかどうかを調べる
- みんなの抑うつ、不安、ストレスの測定もやって、2つのデータを比較する
- さらに、みんなに桁上げテスト(画面に表示された数字の列を思い出し、それを同じ順序または逆の順序で繰り返してもらう)を指示して、ワーキングメモリのレベルをチェックする
みたいになります。要するにこの研究チームは、「TikTokに依存する →メンタルが悪化する → そのせいでワーキングメモリの能力が減退する 」って流れを想定したわけですね。
すると、結果はやはりチームの予想どおりで、
- TikTok依存のスコアが高かった学生は、ワーキングメモリテストの成績が悪かった
- ワーキングメモリテストの成績が悪い学生は、抑鬱、不安、ストレスのスコアも高かった
だそうです。TikTokの乱用が抑鬱と不安を起こし、これがワーキングメモリに影響するのではないか、と。
また、男女に分けて分析したところ、TikTokの問題利用スコアは女子学生の方が高かったものの、鬱、不安、ストレスのスコアは男子学生の方が高く、ワーキングメモリの性能も低かったそうな。ここらへんの理由はわからんですけど、興味深いとこっすね。
ただ、今回の研究はあくまで一時点のスナップショットでしかないので、TikTokが悪影響なのか、不安な人だからTikTokにハマるのかは謎。もうちょい縦断研究が出てこないとなんとも言いづらいっすね。
結局、炭水化物はちゃんと食べたほうが心疾患にならないで済むのでは?説
「私は糖質は重要な栄養素だから減らしすぎないほうがいいよー」派の人間なんですけど、新しいデータ(R)も「適度な糖質の摂取は心血管疾患リスクの減少と関連するよ!」ってな結論になっておりました。糖質はちゃんと摂取しないと、心臓病やら脳卒中のリスクが高まっちゃうのではないか、と。
この研究は、9,899人の女性(平均年齢52歳)を15年間も追跡調査した健康調査データを分析したもので、
- 参加者にみんながどれぐらい炭水化物を摂取しているかを尋ねる
- みんなの炭水化物と飽和脂肪の摂取量に応じて五分位に分ける
- 心血管疾患と脳卒中の発症率と比較する
みたいになってます。かなりの長期にわたって食事量と心疾患リスクについてチェックしたわけですね。
その結果、15年間のあいだに心血管疾患の発症は1,199件、死亡は470件、高血圧症は4,198件、肥満症は3,588件、2型糖尿病は1,218件ほど確認されまして、
- 炭水化物の摂取量が総カロリーの41%~43%の場合、最も少ない摂取量(37.1%未満)に比べて、心血管疾患の発症オッズが44%低下した
- 炭水化物の摂取量は総死亡率とは関連していなかったが、総カロリーに占める炭水化物の割合が増えると、肥満、2型糖尿病、高血圧の発症確率は下がる傾向が見られた
- 飽和脂肪の摂取量は、総死亡率や心血管疾患のリスクとは関連していなかった。さらに、飽和脂肪の摂取量の増加は、高血圧、2型糖尿病、および肥満と逆相関していた(つまり飽和脂肪をよくとる人ほど血圧や肥満のリスクが下がる)
みたいになります。炭水化物も脂肪も適度に摂取しないと体に悪いよ!という、ある意味で当たり前の話ではあるんですけど、糖質制限をやってる方にはちょっと気になる結論でしょうな。
まぁ個人的には、パレオチャンネルでもさんざん書いているとおり、糖質やら脂肪のバランスより食品の質が大事でしょ!って立場なので、もはや「糖質量ガー」とか「脂肪量ガー」って議論への興味を失いつつあるのですが……。
インスタのナイスボディ女性を追いかけるとボディイメージが死ぬ
ヨーク大学が行った研究(R)が、「ネット上のナイスボディな女性の画像は見ないほうがいいっすよ!」って結論づけてておもしろかったです。まずは研究チームの問題意識から申し上げますと、
現在、写真のデジタル加工は日常的になっており、その結果、平均的な女性にとって「痩せた体への理想」がさらに高くなり、現実には達成できなくなっている。
とのこと。ネットには大量の加工写真が出回っているせいで、多くの女性は「これが理想の体型なんだ」と思い込まされ、そのせいで自分のが意見へのストレスが激増しているのではないか、という話ですね。
ってことで、チームはInstagramのヘビーユーザーの女性402人(18歳から25歳)を集めて、「スリムシック」な体型を持つインフルエンサーの写真13枚を見るように指示したんだそうな。スリムシックって初耳だったんですけど、なんでもインスタで流行っている言葉だそうで、
ウエストが小さく、お腹は平らであるが、お尻、胸、太ももが大きいことを特徴とする、曲線的またはより完全なボディタイプ
と定義されておりました。文中ではキム・カーダシアンさんがスリムシックの典型例としてあげられてまして、こちらもよく知らない方だったんですが、めちゃくちゃアメコミ体型っすね。
でもって、こういったスリムシックな画像がどんな反応を引き起こしたかと言いますと、
スリムシックの理想は、女性の外見、体重、体全体の満足度にとって最も有害な影響をおよぼした。これは、スリムシックが女性に脅威を感じさせ、個人的に達成できない美の理想を表しているからかもしれない。
とのことで、スリムシックな体型は、普通の痩せ型なイメージよりも「体重や外見に対する不満」を引き起こす傾向があったそうな。まぁこれは男性でも起こりそうではありますが、女性の方が体型への圧力は強いから、スリムシックの影響はデカそうっすね。
ちなみに研究チームは、カーダシアンさんのような体を手に入れようと、外見の完璧主義にハマってしまい、乱れた食事、不健康な体重管理行動、低い自尊心、社会的不安などを引き起こす可能性を指摘しておられました。そのうえで、もしスリム・シックな体型にあこがれてる人がいたら、フォローを外したほうがいいよーとも指摘してまして、近年よく聞く「ボディイメージの重要性」をかんがみればそれが無難だろうなーとは思いますね(まぁ研究論文で名前を出されてディスられるカーダシアンさんはかわいそうだなー、とも思いますが)。